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自己投資に必要なのは精読か速読か?─ 情報過多時代の読書戦略

こんなことを言うのも今さら感があるが、とにかく現代は情報過多の時代だ。

多忙なビジネスパーソン、起業家・経営者にとっては、日々の業務や会議をこなしながら新しい情報を素早く取り入れる必要がある。
その一方で、急ぐあまり資料や書籍をざっと流し読みしてしまって、大切なポイントを拾い損なって慌てる…ようなことも起こりがちだ。

時間がない中、効率よく──そう「タイパ」だ!── 情報を吸収するには速読しかない!とも思えるし、いやいやポイントをつかむだけならAIに手伝ってもらえるから、質の高さを重視した精読こそが21世紀の読書法だ!と言われれば、そうかも知れないと思ってしまう。

自己投資としての読書は、速読と精読のどちらが価値を持つのか?
実は一昔前、ビジネス誌などで扱われてきたテーマではある。

ただ、考えれば分かることなのだが、「速さ」なくして、この情報があふれる時代にどうやって幅の広い知見に触れることができるのか? 逆にどうして「精緻さ」なくして情報を的確に吸収できるというのか?
結局のところ、どちらも読書技術の1パート(戦術/技術)に過ぎず、有効なオプションに過ぎない。

そして、実はエグゼクティブと呼ばれる人たち、読書を武器とする読書家たちは、この両方を巧みに組み合わせながら使いこなしていることが知られている。いわゆる戦略的な読書(strategic reading)であり、読書の柔軟性スキル(reading flexibility)である。

あなたが、もし仕事で求められるインサイトを的確に得ながら、AIを価値あるパートナーとして活躍しようと思うなら、速読と精読を巧みに使いこなす技術をマスターする必要がある。

この記事では、多忙なビジネスパーソンや経営者のために、速読と精読の具体的な使い方と、それをうまく使いこなすための戦略的な読書法を提案したいと思う。自動車の快適な運転と同じように、全体として快適な走りを楽しみながら、必要に応じてギアをシフトダウンし重要な情報を確実に手に入れる…そんな戦略を身につけて欲しい。

目次

そもそも「速読」・「精読」とはどんな読み方か?

速読」とは主に文章を大まかに把握し、限られた時間の中で必要な情報を素早くつかむ読書法として知られている。読み方は人それぞれだとして、何らか目的があって、その達成のための効率を重視した読み方と考えていい。なお、右脳活性化でスピードだけ何倍もアップして一字一句を理解・記憶する…なんていう話は、詐欺師の妄想話なので、この際忘れて欲しい。

いっぽう「精読」は時間を割いて文章を隅々まで読みこなし、深い知識や判断材料を獲得する目的で用いられる。
基本的に高校までの国語の授業で学ぶ読み方が、この精読だと考えて間違いない。基本的には、言葉と言葉のつながりを丁寧に処理しながら意味を汲み取っていくような読み方になる。

多忙な人ほど「速読できたらいいなぁ」と考えがちだが、速読だけで本を読めばそれは「読んだ気分」だけを味わう単なる暇つぶしになる。重要な概念を丁寧に処理するためには必ず精読が必要になるのであって、それ抜きでは理解も記憶も不十分なものになってしまう。

速読:質より効率を狙う読み方

速読とは、文字を高速で追い、処理する読書技術だ。
そのねらいはおよそ2つあり、まず文章全体の大枠を素早く把握すること、次に自分が欲しい情報やポイントだけを見つけ出して拾い取っていくことだ。

例えば、新聞やビジネス書など情報量の多い文章を短時間でチェックしたい場合、速読は大いに役立つ。
ただし、どれくらいのスピードで処理できるかは、文章の難易度や前提となる知識の多寡と目的によって決まる。また、速読トレーニングによっても、そのスピードを大幅に引き上げることは可能ではあるが、スピードが上がれば、受け止められる理解の質が下がるトレードオフは生じるものだ。

そして当たり前だが「味わう」とか「楽しむ」ことが目的になるような小説やエッセイなどは、普通、速読を使う必要はない。

精読:理解重視の丁寧な読み方

精読とは、文章を細部まで読み解き、深いレベルで読書理解を得るための読書法だ。ただし、ただ丁寧に読めばいいというわけではなく、接続詞や指示語に注意を払うことはもちろん、文と文がどのような関係(因果関係、主張と論理・データなど)で結びついているかなど、意識的に読むような技術が必要になる。

場合によっては、線を引きながら構造を明らかにしたり、ノートに主張と論理を整理したりといったアノテーションの作業を伴うこともある。逆にそのような能動的な作業を一切しなければ、あなたがよほどの天才か読書家でない限り、その読書は自己満足の、その場限りの消費行動で終わってしまうだろう。
このアノテーションのやり方と効用については、こちらの記事で紹介しているので、後ほど参照して欲しい。

「速読 or 精読」か「速読 and 精読」か?

私たちの読書の目的が「書かれていることを理解する」ことであれば、精読だけで十分だろう。
しかし、そんなはずはない。

読み取った情報や知見が、あなたの中にすでにあった知識や体験と出会い…

  • 両者のズレ、対比・照合から新たな知見と発見につながる
  • 両者が意表を突く形で結びつき合って新たなインサイトを得る

こういう新たな発想、創造的思考として結晶化し、それが誰かに伝えられたとき、あるいは行動に移されたときに始めて価値が生まれる。ということは、1つの文章を丁寧に読むだけではダメで、対立する視点やズレた論点で語られた文章を読んでいかなければならない。
さらに、「中心的テーマについて語られたこと」だけを読んでいても発想に広がりが得られず、まったく無関係に思える本の中に大きなヒントをもらうような体験は、あなたもきっと持っているはずだ。

結局、速読と精読は「どちらが優れているか」ではなく「優れた価値をうむために、どう組み合わせるか」という関係なのだ。
速読のねらいに即して言えば、

  • 速読で書籍・テキストの全体像、展開のパターンをつかんだ上で、必要と思われる箇所を中心に精読する。
  • 目的意識を明確にして速読で流しながら「!」とアンテナが反応したら即座にスピードを落として精読する。
  • 複数の類書に速読でざっと目を通した上で、本当に必要な本の必要な箇所だけを精読する。

いずれにせよ、自分の理解と目的を常にメタな意識でモニタリングし続けることが重要ということになる。

速読の効果的な使い方

新聞や雑誌をざっと拾い読みするだけなら、恐らく誰でもできる。
だが、ビジネスシーンや学びのシーンで用いられる速読は、ただ速く意味を拾っていけばいいわけではない。

目的や文章構造、レトリックをに応じて適切に速度を調整する工夫が求められる。では具体的に、どのような目的があって、どのように調整していくと価値ある情報を受け止め、自分の中に価値あるインサイトを生み出せるのか説明しよう。

A)インサイトを生む情報と「出会う」技術としての速読

ビジネスの第一線で活躍しようと思ったら、未知・新奇の情報を逃さず、素早く摂取することは非常に重要だ。
書籍や資料を流し読みすることで、思わぬヒントを得られることがある。
例えば、新しいマーケティング手法を調べたいとする。そういう時は、まずは自分が知りたいこと、すでに知っていること、問題意識などを紙に書き出しておく。これは「既有知識の活性化」と呼ばれる作業であり、後に続く読書のスピードと理解を引き上げる効果がある。

その後に「ざっと目を通す」ような意識で書籍を読んでいくわけだが、「読みとるぞ!」という意識が強すぎると視野が狭くなり「たまたま目に付いた情報を拾うだけ」になってしまうので要注意。
鋭いアンテナ、つまり強い問題意識と活性化された知識があれば、リラックスして視野を緩めて「全体をざっとスキャンする」ようなイメージで文章を眺めるだけでも、必要な情報には反応できるものだ。そしてアンテナが反応したらすかさずギアを落として精読モードに移行する。

このギアを変えながら読む作業は一種の速読練習にもなるし、モニタリングの感覚を養うことにもつながる。ビジネスチャンスを見逃さないアンテナを鍛える効果も期待できる。

B)テキストの全体像をつかむ技術としての速読

書籍や膨大な資料のような長い文章を読む場合、事前に全体の見取り図を把握することは、戦略として非常に効果的だ。アメリカを中心に利用されているPQRS(Preview-Question-Read-Summarize)やSQ3R(Survey-Question-Read-Recite-Review)といったアルゴリズム戦略でも、最初に「Preview(下見・下読み)」「Survey(調査)」が入るのは同じ理屈だ。
下読みをした上で全体の戦略を立てる、その「下読み」には速読が必須スキルと言っていい。
ただし、ここでの速読は「フォーカスをマクロ構造の把握に設定する」ことに意味があり、速ければいいというわけではない。

読んでいる最中は、章のタイトル章の冒頭の数行を丁寧に処理することで「この章の意図と位置づけ」を確認し、その後は見出しを軽くチェックして、全体の流れを追うような意識で読み流すと効果的だ。
また、読んでいる最中に「この章のキーワードは?」とアンテナを立てておいて、章を読み終わる毎にキーワードを3-5個ずつノートにメモしていけば、一冊読み終わる頃には全体の構造が把握出来た状態になっているはずだ。

ちなみに、このような読み方が「スキミング」と呼ばれており、非常に効果的な速読技法とされている。

C)視野を広げるための速読

これは完全に「多読」を意図したものだ。
あらかじめAIに自分がリサーチする目的や重視したい観点、これまでに読んだ本の情報と、それに対するコメントを添えて「このジャンルで多角的な視点、広い分析的な視野を手に入れるための書籍リストを30冊分用意して。1冊ずつ著者・タイトル・ユニークなポイントを簡潔に表にまとめて出力して」とリクエストすると、かなり有益な書籍リストが手に入る。
そして、そこからはAIの提案を確認するつもりで、全ての本を読んでいくことになる。1冊を10-30分(250-300pの単行本あるいは新書レベルの書籍を想定)のつもりで「全体像とおよその主張のポイント、ユニークな点がつかめた」という理解を目指す。

実践しながら速読の練習をしてみよう!

ここで紹介した速読は技術であり、実践の中で何度も意識しながら使っていくことでレベルアップしていくものだ。
そして、速く読むだけでは意味はなく、そこで何にフォーカスして、どのように処理し、出力するかを計算して取り組まなければならない。
その後に丁寧な処理をどう組み合わせるか、こちらの記事も参考にして考えてみて欲しい。

精読の効果的な使い方

速読が書籍の構造をとらえ、世界を広げていく技術だとすれば、精読は書籍の本質を深く掘り下げるための技術といっていい。
書籍からロジックエピソードエビデンスを的確に抽出し、それらを検証・考察する精読は、ビジネスの意志決定のための材料を提供したり、自分の知見と化学反応を起こさせてインサイトを得たりといった、能動的な作業の中核に位置づけられるものだ。

ただし、精読には相応の集中力時間が必要である。特に分量の多い専門書などの場合、精読に時間をかける意義は大きいが、負荷も大きいため、目的と状況、投下できる時間に応じて使いどころを見極めなければならない。
つまり、精読といってもいつも同じ意識の強さや読書スピードを保つ必要はなく、目的との距離や流れの中での位置づけによって、それなりのスピード調整は必要になる。これも柔軟性の一つだ。

ここでは、精読のコツや精読の方法について、具体的な手段や心構えを紹介しようと思う。
たくさんの書籍を読み、世界を広げることを重視し過ぎるあまり忘れられがちな時間をかけて深く読む行為にスポットライトを当ててみたい。

A)深く理解するための精読

文章のミクロな要素に注意を払い、意味とロジックを積み上げていくのが精読の最大の狙いだ。
具体的な精読練習としては、ただ読むだけで終わらせず、簡単な要約を作ったり、筆者の論点や事例に対して自分の考えを書き足す方法が挙げられる。
さらに、形式段落どうしの関係を整理したり、そこで述べられている主張と事実の整理、下敷きにされている社会の意識との関連について考察することも効果的だ。

こうした一手間を加えることで、文章に対する理解が深まるだけでなく、そこで得た知見を応用しやすくなる。
時間がかかるためタイパが悪いと感じるかもしれないが、精読ができると読書の効果が劇的に上がり、最終的に大きなリターンを生んでくれることは間違いない。

B)精読の技術と重ね読み戦略

断片的な理解に終わらせず、少なくともそのセクション、章の論理展開と文章の構造をつかむのがポイント。
文章中で繰り返し使われている言葉(キーワード)や、主従関係・因果関係などに線を引き、矢印などで結びつけていくことで、著者のロジックを視覚化できる。主張に赤線、データと論理付けに青線などと線を引くルールを自分で作り、それらの要素をページの平面上で線を引いて結びつけるのも効果的。

また、専門用語、知らない言葉と遭遇した場合、ネット検索や参考文献を参照して、確実に理解を積み上げていくことも重要。内容的に難しいとか、ロジックがこみ入っているような書籍は、1回読んで満足するのではなく、数回にわたり精読することをお勧めしたい。これは「重ね読み戦略」と呼ぶべきものだが、一度で完全に理解しようとし過ぎると疲れてしまう。そこで、1度目は70%くらいの理解。2度目は1度目でよく分からなかったところを中心に精読。3度目はすでに十分に理解できている前提で、全体の構造と詳細な理解をリンクさせるような読み方がお勧め。

重要な場面での「りきまない精読」の重要性

重大な方針転換や投資判断などを行う際、ソースとなるドキュメントを細部までチェックし、精読することが欠かせない。ここで雑な速読で得た不確かな理解、表面的な理解の状態で意思決定を下すと、手痛い失敗につながりかねない。
しかし、眉間にしわを寄せて、じっくり読んでしまうと、力みとストレスのために視野が狭まり、かえって読み落としを誘発しかねない。

落とせない要素がはっきりしているなら、それらをペンでチェックしながら読む必要があるかも知れないが、力みとストレスは精読の大敵。鎮まった心を維持して、快適に処理できるペースを自分のものにしよう。
なお、この「りきまない精読」は呼吸法トレーニングを採用することで実現しやすくなる。詳しくはこちらの記事を参考にして欲しい。

TPOに応じた読み方の選択

ここまでに見てきたとおり、速読と精読をうまく使い分けることは、情報過多時代、AIとの協働時代を生き抜くためには不可欠だと言っていいだろう。広く取る力と深く読む力、両方が求められるわけだ。いかにして、効率と精度を兼ね備えた読書を自分のものにできるかが鍵だ。

そういうわけで、ここでは具体的に「速読と精読の使い分け方法」や「状況に応じた調整のコツ」を紹介したいと思う。自身の読書力を客観的に把握し、必要に応じて読書の最適化(チューニング)に挑んで欲しい。

A)速読と精読の使い分け

「使い分ける」には判断の基準がいる。それが「読書の目的Purpose)」だ。何が読み取れたら満足か、それは情報や知識といった「点」のレベルのものでいいのか。あるいは著者の主張の構造といった文脈とロジックといった「線」のレベルが必要なのか。そこまで考えられると、割り切ってスピードを上げることも、逆に割り切って著者とじっくり対話をすることも可能になる。

B)目的と状況に応じた読み方の調整

スピードをコントロールする際に重要なのは「目的」だが、それ以外にも考慮すべき要素がいくつかある。
時間Time)リソース」であり、「読みの状況Occasion)とシチュエーション」だ。時間がたっぷりあれば、急ぐ必要はない。下読みなのか、ケリを付けるための読みなのか、大量に文書を処理する作業なのかといった状況によっても読み方が変わる。

その他にも、書籍の難易度、自分の前提知識によってもスピードや読み方を変えざるを得ない。
すでにある程度の専門知識を持っていれば、高度な資料でも速読でも問題ないだろう。一方、初心者にとっては初見の専門用語が頻出する文章は「ざっくりとした理解」自体が無理難題であり、速読など不可能に近い。そういう文章に対しては精読で何度も読み重ねながら、読解力そのものを鍛えていくのがお勧めだ。
こうした個人差やビジネス上の求められる役割を踏まえたうえで、目的と状況にふさわしい読み方を選ぶことが、最終的な成果につながっていく。

まとめ!

情報過多の一方で注意力をはじめとする認知リソースが枯渇している現代社会において、多忙なビジネスパーソンが必要とするのは、必要な情報を素早くつかむ速読と、重要な部分を深く理解する精読を巧みに組み合わせる読書戦略である。

速読とは何かを理解し、速読のコツを習得することで、日常的な業務にかかる時間を節減できる。
さらに、精読とは何かを知り、精読の技術を学ぶことで、本当に価値のある情報をしっかりと自分のものにすることが可能だ。

このシンプルな定義をまず理解しよう。あなたが天才でない限り、この両者を同時におこなうことは不可能だ。
そして、その両者の役割を理解し、状況に応じて使い分ける戦略的な読書テクニックこそが、ビジネスの成果を高めるカギを握ると考えて間違いない。

読書法の選び方を誤らず、TPO(時間・目的・状況)に応じて、それに相応しい形で速読と精読を織り交ぜながら、読書の価値を最大化していこう。

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