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なぜ、多忙なビジネスパーソンに「瞑想」が必須なのか?

目次

瞑想がビジネスパーソンに必須である2つのポイント

「なんか集中力が保たないんだよね。3分ごとにメールチェックしたり違うことしてる感じ」
「最近、疲れやすくなった気がする」
「頭が働かなくて密度の低い仕事をしている気がする」

そんな「頭の衰え」を感じたことはないでしょうか?

私たちは仕事にせよ、学習にせよ認知リソース(意思力や、集中力、注意力など)を消費しながらおこなっています。
ですから、夕方になると認知リソースが枯渇し始め、安易な決断をしてしまったり、不注意なミスが生まれてしまったり、やる気がでなくなったりするのです。
特にスマホの登場により、常に集中力を切り、マルチタスクを強制されながらの生活を送っている方も増えています。
これも認知リソースを枯渇させる一因になっています。

多忙なビジネス環境では、この認知リソースをどれだけ効率的に使えるかが成果を左右します。
戦略的な行動も時間の有効活用も、十分な認知リソースがあって初めて可能になるからです。

そういう多大な認知リソースが求められながら、それを無駄に消費することの多い現代社会にあって、注目されてきたのが「瞑想」です。
特に、注意制御や情報処理能力を必要とするビジネスパーソンにとって、短時間の瞑想が脳の可塑性を活かし、集中力とストレス耐性を高めるツールとなることが、複数の脳科学的研究により支持されています(Slagter et al., 2007;Lutz et al., 2009)。

寺田

脳の可塑性とは、経験や学習、環境の変化などに応じて神経回路の構造や機能が変化する能力のことをいいます。瞑想によって脳機能そのものが変化し、「集中しやすい脳」「ストレスに強い脳」へと徐々に再構築されていくってことですね。

リラックスやストレスマネジメントとして効果があることは、ここ数年のマインドフルネスブームで理解されてきたのではないでしょうか。しかし、「日常のパフォーマンス改善ツール」としての瞑想も侮れない効果として注目したいところです。

この記事では、瞑想の基本、呼吸法による実践、仕事への応用、そして読解力や速読力との関連までを丁寧にご紹介していきたいと思います。

1.1 現代人の集中力は金魚以下?

SNSやデジタル端末の常時接続により、私たちの集中力は8秒前後とされ、金魚より短いと揶揄されることがあります。実際、タスク切り替えや注意の分断が常態化しています。

寺田

ちなみに「金魚以下」という言説は、とある記者が言い始めたブラフであって、何の科学的な根拠もありません。そもそも「金魚の集中力」をどう測るのか想像もつきません…

もし書類仕事やデスクワークが見積もった時間よりも長くかかることが常態化しているなら、「がんばればできる!」「集中!集中!」と気合いを入れるよりも、日常的なトレーニングを採用することが効果的です。
Zanesco et al.(2016)は、瞑想トレーニングにより読書中のマインドワンダリング(心ここにあらず的な意識のさまよい)が減少し、注意の持続時間が伸びたと報告しています。そして、短時間の呼吸瞑想でも認知的な処理能力が向上することが示されています(Clinton et al., 2018)。

1.2 ビジネスパーソンの情報処理力と集中力のアップの鍵

ビジネスシーンでは、膨大なメールやチャット、資料を整理・把握する効率が求められます。
鍵は情報処理力ですが、やはり認知リソースが重要な鍵を握るわけですが、そこで役立つのがマインドフルネスや瞑想のテクニックを使った脳の活性化です。 瞑想は理性的活動の司令塔である前頭前野の活動を整えると同時に、脳の神経資源の活用を効率化してくれる(Slagter et al., 2007)のです。また、トップダウン型とボトムアップ型の認知コントロールバランスを調整し、柔軟かつ戦略的な意思決定を促進することも分かっています(Hommel & Colzato, 2017)。

2. 瞑想とは何か?─ビジネスに役立つ科学的理解

かつて宗教的な印象が強かった瞑想ですが、今や神経科学・心理学・教育学分野における研究対象となっています(Sedlmeier et al., 2012)。集中力やストレス耐性の向上だけでなく、読解力や記憶力への好影響が検証されており、特に認知資源の再配分やストレス軽減を通じて「高パフォーマンス脳」を育てる技法として注目を集めているのです。

ビジネスの場面で積極的に使うためには、専門的なメソッドよりも、生活に定着しやすいシンプルな方法をまず押さえるのが得策です。
瞑想の種類を正しく理解すれば、短時間瞑想でも大きな効果を実感することができます。 ここでは、瞑想の主なタイプとそれぞれの特長を簡単に押さえ、毎日の忙しさの中でも取り組みやすいよう解説します。

2.1 FAMとOMM:2つの科学的瞑想法

一般的に瞑想は大きくFAM(Focused Attention Meditation:特定対象への集中)とOMM(Open Monitoring Meditation:意識の広がりを観察)に分けられます。

  • FAM(Focused Attention Meditation):呼吸や音など1点に集中する技法。初心者向き。
  • OMM(Open Monitoring Meditation):浮かぶ思考や感情を評価せず観察する技法。

FAMは特定の対象、たとえば呼吸や音などに注意を向ける方法です。
これに対してOMMは、自分の考えや感情の流れを客観的に観察する方法を指します。
どちらの瞑想にも共通するのは「現在の瞬間」に意識を向ける点であり、基本の姿勢や呼吸法は同じでも、焦点の当て方が異なります。 ビジネスパーソンがまず始めやすいのはFAMです。自分の呼吸に意識を集中する呼吸法トレーニングから取り組むのが習慣化しやすく、情報を効率的に処理する練習にもなります。


2.2 脳波・行動・読解力:瞑想の科学的効果

瞑想により、注意と集中に関連するアルファ波・シータ波が増加することが示されています(Sato & Kudoh, 2021)。 また連続する情報が流れ込んで来るような場面(読書はその代表例!)では、脳が適切に注意力配分できず、情報を間引くような処理をしてしまうことがあるのですが(アテンショナルブリンク;情報の見逃し)、これを軽減してくれることも分かっています。
速読トレーニングには、瞑想効果を持つものがあり(行フォーカス・トレーニングやページスキャントレーニングなど)、脳の使い方を変えることで速読を実現しているのではないかというのがフォーカス・リーディングの仮説です。

また、ストレス耐性を向上させるホルモンバランスの調整効果も指摘されています。
短時間瞑想を習慣にするだけで、心拍数を整え、血圧を下げる効果が期待できるとの研究結果もあります。

こうした研究結果は瞑想リサーチの蓄積から導かれたもので、ビジネスパーソンにとってはマインドフルネスの実践が高いパフォーマンス向上につながる大きな根拠といえます。

3. 瞑想の具体的な方法とその実践

瞑想の方法にはさまざまな流派がありますが、まずは自分が続けやすいスタイルを見つけることが大切です。どんなに優れた瞑想のテクニックも、実践できなければ意味がありません。特に初心者には、呼吸法を中心とした基本的なアプローチをおすすめします。

ちなみに、瞑想を行う時間帯場所も、効果に大きく関わります。いつ、どこでおこなうと心が静まり、良い状態を実感しやすいかモニタリングしながら、徐々に固定していきましょう。
また、いきなり長時間やるのは難しいので、数分から始めて慣れてきたら時間を延ばすと習慣化しやすくなり、お勧めです。短時間の呼吸瞑想でも十分に効果を得られることを踏まえ、次のパラグラフでその方法を詳しく説明していきます。

姿勢や注意の向け方など、ちょっとしたコツをつかむだけでスムーズに呼吸法トレーニングを取り入れられます。無理なく段階的に取り入れていきましょう。

3.1. 初心者向け瞑想法:呼吸法から始めよう

以下のやり方で瞑想に取り組んでみてください。

  • 背筋を伸ばし、両足を床につけて安定した姿勢をとります。
    下のイラストを参考にしてください。ただし、このイラストは速読トレーニングの姿勢なので、実際には本を持つ必要はありません。
  • 目を軽く閉じる、もしくは一点を見つめるようにします。ゆっくりと鼻からお腹の下部(おへその下あたり)に空気を送り込むつもりでゆっくりと吸います。(約6秒)
  • 鼻(口でもよい)から息をゆっくり吐きます。時間は10-15秒くらいかけるつもりで、、吸うときよりも細く長くコントロールするように吐きましょう。
  • 呼吸に意識を向けるだけでも、外部からの雑念をシャットアウトしやすくなります。呼吸に伴う体の感覚に注意を向け、吸うときと吐くときの違いを感じ取りましょう。
  • それでも雑念が抜けないと感じたら、頭の中でカウントを数えることで呼吸のペースをコントロールするつもりで取り組んでみてください。

単純に「姿勢を正し、コントロールしたペースで呼吸を続け、内面のモニタリングをおこなう」だけというところでしょうか。
ですが、この呼吸瞑想の基本を身につけることで、脳波が落ち着いたシータ波やアルファ波へ移行しやすくなります。これが瞑想の効果を引き出す鍵となり、集中力強化とストレス耐性アップの土台を作ってくれます。

3.2. 日常に取り入れる短時間瞑想

忙しい朝や昼休みなど、短い休憩時間に瞑想入門を試みるのは非常に有効です。

まず1分間だけ取り組んでみてください。椅子に静かに腰掛け、呼吸を整えます。
雑念が浮かんできても、再び呼吸に意識を戻すよう訓練します。 このような“マイクロ瞑想”を1日に数回取り入れるだけでも、情報処理効率が高まり、気持ちがリフレッシュする感覚を得やすくなります。

まさに日常の瞑想と呼べるスタイルで、自然と続けられることがポイントです。 さらに移動時間のちょっとした合間や、会議の前後なども狙い目です。隙間時間を活用してマインドフルネスを深めることで、効率的に自分の心を整えることができます。

フリーデリケ・ファブリティウス氏は著書(ハンス・W・ハーゲマンとの共著)『覚醒脳の作り方』の中で、瞑想を日常の中に採り入れる工夫として、”歩いているとき、シャワーを浴びているとき、ジョギングに行くとき、あるいはデスクで少し休憩をするときも含め、およそどんな場面にもマインドフルネスをおこなうチャンスはある”とした上で、次のように提案しています。

自分の呼吸のリズムや、足裏に感じる床の感触など、ある特定の感覚に意識を集中することだ。そしてそれをできれば毎日、何度も繰り返してほしい。やがて、他の感覚は一切忘れて、そのたった1つの感覚だけに集中するコツがどんどんつかめてくるだろう。

またさらに『マインドフルネス・ストレス低減法ワークブック』という書籍に紹介されているSTOP瞑想という手順も引用しつつ紹介しています。

日々のストレスや不安を解消するのに、気軽に実践できる方法がある。(中略)
S=Stop(止める)
T=Take a breath(呼吸をする)
O=Observe(気付く)
P=Proceed(進める)
…一日の中で定期的に、ほんの少し作業の手を止めて、深呼吸をしてみよう。そのとき自分がやっていたことを観察して、今、自分がどんな気分か、それによって他の人にはどんな影響が及んでいそうかを考えてみる。肩に力は入っていないか? 空腹だったり疲れていたりしないか? 頭の片隅に何か引っかかっていることはないか? 何かかえたいことはあるか 今目の前の状況に対して、少し違ったアプローチはできないだろうか?

何か疲れたり、違和感が生まれたりした時に、ちょっと立ち止まって内面をモニタリングしてみよう、というわけですね。

3.3. 瞑想の時間と頻度:最適なスケジュール設定

はじめは1回あたり3〜5分程度を目標にするとよいでしょう。
少し慣れてきたら朝と就寝前に5〜10分ずつ行うとリラックス効果も高まり、睡眠の質も上がりやすくなります。私は最初の頃は3分ほどからスタートし、一番長くおこなっていた時で20分の時間をとっていました。(その後、使っているアプリの制限時間が10分になったので、10分で終わらせています…)

重要なのは、毎日一定のリズムで続けることです。
1回あたりの時間が短くても、習慣化できれば効果は持続的に蓄積されます。ビジネスの忙しさの中でしっかり瞑想のテクニックを生かすためには、無理のないスケジュールを組んで取り組み、日常の中でも、気がついた時にSTOP瞑想をしてみる…という姿勢が鍵です。
その際、自分のライフスタイルに合わせて調整する柔軟性も大切です。週末はやや長めに取り組むなど、メリハリあるアプローチで瞑想の効果を最大限に引き出しましょう。

4. 瞑想が情報処理力とどう関連しているか

瞑想はただリラックスするだけでなく、脳の働きを高める手段としても大きな注目を集めています。
これは単純に集中力を高めるだけでなく、脳波トレーニングによる認知機能改善や読解力向上につながる可能性があるからです。

フォーカス・リーディングは速読トレーニングの重要な一要素として、瞑想トレーニングを採用していますが、集中力や注意力の安定性が高まる(Lutz et al, 2009),認知能力が高まる(Slagter et al, 2009)などの効果を期待してのことなのです。

このような背景から、瞑想と読書の関係性を脳科学の視点で分析する研究も進んでいます。次のパラグラフでは、瞑想がいかに脳を整え、情報を捉える力を強化しているのかについて掘り下げます。

4.1. 瞑想による脳波の変化とその効果

瞑想による代表的な脳波変化の一つにアルファ波の増加があります。アルファ波はリラックスしながらも意識がはっきりしている状態を示し、注意力向上の基盤となるものです。さらにシータ波はより深いリラックス状態や想像力が高まった状態で出現しやすく、創造的なアイデアを生み出すきっかけになるともいわれています。
Sato & Kudoh(2021)は、瞑想時に6〜7Hz帯域シータ波が出現し、持続的注意力と関連することを示しました。

さらに、こうした脳波のバランスは、ビジネスにおいても企画力や問題解決能力を高めることに直結すると考えられています。事実、 脳波の測定を伴う瞑想リサーチや実践的レポートでは、定期的に瞑想を行う人ほど脳波トレーニングの効果が明確に表れ、生産性向上に寄与することが報告されています。

4.2. 瞑想がもたらす読解力アップ

読解力向上に必要なのは、集中を維持しながら文章の要点を素早くつかむ力です。

瞑想によるマインドフルネス状態が、文章全体を効率よく理解する助けになると指摘されています。 実際に文章を読む際、意識が散漫だと内容を何度も読み返すため効率が下がりますが、瞑想で集中力強化をはかると、一度でポイントをつかみやすくなるのです。

事実、Clinton et al.(2018)は、呼吸瞑想が読解成績を有意に改善したと報告しています。
Zanesco et al.(2016)は、瞑想経験者がマインドレスリーディングを減らし、理解度を高めることを確認しています。

その結果、読解速度だけでなく、読んだ内容を長期間記憶に保持できるメリットも得られます。 特にビジネス文書や専門書の大量読破が求められる場面では、瞑想の技術が情報処理効率を左右するといっても過言ではありません。

4.3. 速読への応用:瞑想が情報処理力と広い視野を生む

上述の通り、フォーカス・リーディングでは速読トレーニングの1要素として瞑想トレーニングを採用しています。
速読に要求される、不要な雑念を排除し集中力を保つ前提を作るわけです。

脳科学の観点では、瞑想が脳の処理スピードと柔軟性を高める作用を持つとの考察があります(Slagter et al., 2007によれば、瞑想により注意資源の配分が柔軟化される、とされています)。もちろん、他のトレーニングも必要になるわけですが、それらの結果として文章全体を俯瞰し、要点を素早く抽出できるようになるため、業務上の資料やメール対応が快適に進むのです。

視野を広げつつ細部も見逃さない意識づけは、ビジネス上の判断力を高めるうえでも重要です。流れるように情報をつかみ、決断が早まるメリットは計りしれません。

5. 瞑想によるビジネスパフォーマンスの向上

実際に瞑想を取り入れたビジネスパーソンからは、「集中力が増してミスが減り、仕事の成果が上がった」「自分のメンタルヘルスが安定して人間関係のトラブルが減少した」という声が聞かれます。これについて、Sedlmeier et al.(2012)は、瞑想が注意制御や情動安定性に効果があることを指摘しています。継続に実践することにより認知機能の長期的改善が可能です。
瞑想の効果は目に見えて表れるわけではありませんが、結果として生産性向上に寄与する点で非常に有益であることは疑いの余地がありません。

瞑想は金銭的なコストや特別な設備を要せず、誰でも実行可能な点も魅力です。
時間さえ確保できれば、自分のペースで自己改善を続けられます。

以下では、瞑想が具体的にビジネス成果に結びつく3つのポイントを説明します。
仕事に真摯に向き合うためには、心身ともに健康であることが前提。日々の短時間瞑想を通じて、パフォーマンス向上の土台を確実に築いていきましょう。

5.1. 集中力と注意力の向上

瞑想で養われる「いまこの瞬間」に対する意識は、集中力強化に大きく寄与します。Hommel & Colzato(2017)では、瞑想によるメタコントロール機能(メタな視点から自分の行動をコントロールし、目標達成に向けてより効果的に行動するための機能)が強化されるとされています。
頭の中にある余計な思考や外部からのノイズをいったん手放すことで、資料作成や企画立案などに没頭しやすくなるのです。注意力が磨かれると、作業ミスや確認漏れが減り、チームに対して高い信頼感をもたらします。結果として仕事のクオリティが向上し、評価や昇進にもプラスに働きます。

ビジネスパーソンが日常的な瞑想トレーニングを繰り返すうちに、集中できる時間帯や自分なりの入りやすいリズムを見つけられるのもメリットです。これも日常の業務効率アップにつながっていくはずです。

5.2. ストレス管理と心の安定

心の安定が欠けると、どんなに優秀な人でも思うように力を発揮できません。
瞑想目的の一つはストレスマネジメントであり、定期的に実践することで精神的な負荷を軽減できます。Schuman(1980)やSato & Kudoh(2021)は、シータ波の増加と感情安定性の関連を示しました。ストレス対処力と睡眠の質の改善も期待できるそうです。

ストレスを感じやすい場面でも、呼吸法トレーニングで体の緊張を緩めると、自分を客観的に見つめ直す余裕が生まれます。こうしたメンタルヘルスの安定は、問題解決能力や対人コミュニケーションを円滑にし、仕事上のトラブルを回避するためにも重要です。 さらに、ストレスが減少すれば睡眠の質が上がり、翌日の業務効率もさらに高まります。忙しい現代社会を乗り切るうえで、瞑想は極めて実践的な自己改善アプローチといえます。

5.3. 仕事の効率化と生産性の向上

Lutz et al.(2009)は、瞑想が「メンタルノイズ」を抑制し、意思決定スピードと精度を高めることを示しました。
瞑想を習慣とすることで、余計な思考や感情に引きずられなくなるため、タスクの優先順位を冷静に判断しやすくなります。これはレジリエンス向上やポジティブ心理学の視点からも評価されており、計画の実行に迷いが生じにくくなるというメリットがあります。
また、瞑想で脳の処理能力が向上することで、短時間でタスクを処理できるとか、自分にとって快適なペースを確保できるため、行き詰まりにくいとか、そういう副次効果も期待できます。

ビジネスにおけるアウトプットが量・質の両面が増え、周囲からの評価や信頼が高まることに、間違いなくつながりますよね。この効果は長期的に見ても大きな資産となるはずです。

6. 瞑想を習慣化しよう!

瞑想は多くのメリットがある一方、忙しさに流されてしまうと継続が難しく感じるかもしれません。
かくいう私も、しばらくは朝の時間を10分割くことにストレスを感じていました。速読トレーニングとセットでおこない、瞑想として取り組む時間はせいぜい3分でした。
しかし、朝、十分に瞑想状態を作ることで一日のパフォーマンスが変わることを実感できてから、毎日20分を確保できるようになったのです。

しかし、瞑想の効果は習慣化により安定し、蓄積されていく(Lutz et al., 2009)と考えられます。毎日継続的に実践することが神経可塑性に作用し、瞑想状態が自分のものになるのです。

瞑想は、要点を押さえれば誰でも無理なく習慣化できます。
以下、瞑想を習慣として定着させるための2つのヒントをご紹介します。
時間を確保するコツやモチベーションの保ち方を押さえれば、毎日続けやすくなるでしょう。 この習慣化こそが自己改善の大きな鍵となり、将来的なパフォーマンス向上の基盤を築きます。

ぜひ自分に合う方法を見つけ、実行に移してみてください。

6.1. 瞑想習慣の確立

瞑想を続けるために最も重要なのは、毎日決まったタイミングを設定することです。同時に、日常動線に組み込んだ「同じ時間」「同じ場所」「同じ動作」が脳の条件反射を作ります。いわゆる「トリガーを用意する」という方法です。

たとえば起床後や就寝前、あるいは昼食後など、生活リズムに組み込みやすい時間帯を探します。
次に、いろいろな場所を試す中で、自分にとっての最高の瞑想スペースを確定(固定)することも大事です。
狭くても構いませんが、できるだけ静かで落ち着ける場所がおすすめです。心地よいクッションや椅子などを用意すしてもいいかも知れません。

このように環境を整えるひと手間が、習慣化をスムーズにしてくれます。

6.2. 瞑想のモチベーションを保つ

モチベーションを保つためには、瞑想によって得られる具体的な利益を実感することが欠かせません。
たとえば瞑想の効果で業務上のアイデアが湧きやすくなった、ストレス耐性が上がってトラブルに冷静に対処できたなど、小さな変化でも良いので書き留めてみましょう。
この時、「今日の瞑想充実度(10点満点)」と「今日の集中度」「アイディア発想」などをモニタリングし、数値として記録してみてください。

また、瞑想トレーニングと速読トレーニングを兼ねた形で実施すると一石二鳥になります。ついでに読みやすい本でいいので読書までやりましょう。目標がはっきりしていて、数値で記録できるものになる(可視化される)と、俄然やる気がわいてくるはずです!

ビジネス仲間や同僚とコミュニティを作って習慣化をサポートし合う仕組みを取り入れるのも一案です。お互いに成果を共有し、学び合うことで、瞑想リサーチの情報を交換して視野を広げることもできるでしょう。

結論:瞑想は現代ビジネスパーソンにとって不可欠なスキル

ここまでに書いてきたとおり、多忙な中でも短時間瞑想を習慣化することで、認知機能改善やポジティブな心理状態といった恩恵を受け取りやすくなります。

瞑想は「集中・柔軟性・感情調整」など、脳機能的にも、メンタル面でもビジネスパーソンを支えるとても価値のあるものといっていいでしょう。しかも、書類処理能力が高まると来れば、取り組まない手はありません。

仕事の効率アップと心の安定を両立させる学生や主婦、もちろんビジネスパーソンにとっても、強い味方となる瞑想のテクニックを、ぜひ日々の生活に活かしてみてください。効果が少しずつ蓄積していく過程を楽しみながら、キャリアや私生活をより豊かなものにしていきましょう。

追伸:瞑想の効果を実感したいならガジェットは必須!

私が瞑想を習慣化できた理由の1つに、「自分の瞑想状態をリアルタイムで把握できた」ということがあります。
いわゆるバイオフィードバック装置と呼ばれるものを利用して、自分の脳波をライブでは「音」として把握し、終わった段階では脳波のグラフをチェックすることで「フィードバック」を手に入れられたのです。
このガジェットはこれまでたくさんの方にお勧めしてきましたが、みなさん、大絶賛してくださっています。
本気で瞑想に取り組みたい人は、ぜひ手に入れてください。

Museで記録された脳波のサンプル

こういうフィードバックが得られると、呼吸や姿勢をどうコントロールすると瞑想状態に入りやすいかが分かるので励みになります。
※私が初めて購入した時は35000円くらいでしたが、今はその進化バージョンが70000円を超えています…
 ⇒MeseS

おまけ:瞑想の効果などまとめ音声

寺田

NoteboolKMが瞑想についてのポッドキャスト番組的な要約音声を作ってくれているので、こちらもどうぞ!

今回の参考・引用文献リスト

寺田

以下の参考文献の要約はNotebookLMにお任せしています。(一応、論文は私も読んでいますが…)

Clinton, V., Carlson, S. E., & Swenseth, M. (2018). Do mindful breathing exercises benefit reading comprehension? Educational Foundations and Research Faculty Publications*, (4). https://commons.und.edu/efr-fac/4

短いマインドフルな呼吸法読解力に良い影響を与えるかを調査した論文。大学生104名を対象に、マインドフルな呼吸法を行ったグループと対照グループを比較した結果、呼吸法を行ったグループは読解テストの成績が向上しています。興味深いことに、この効果は心のさまよい(マインドワンダリング)の減少ストレスの軽減という当初考えられた要因によるものではないことが分かり、その具体的なメカニズムは今後の研究課題としています。

Hommel, B., & Colzato, L. S. (2017). Meditation and metacontrol. *Journal of Cognitive Enhancement*, 1(2), 115–121. https://doi.org/10.1007/s41465-017-0017-1

瞑想が認知制御にどのように影響するかという問い(リサーチ・クエスチョン)の探究。特に、特定の対象に集中する瞑想(FAM)と、意識に浮かぶあらゆるものを観察する瞑想(OMM)は、認知プロセスに対して、異なる、あるいは逆の効果をもたらす可能性があると主張しています。研究結果は、短時間でもこれらの瞑想を行うことで、認知制御のスタイルが「持続性」または「柔軟性」に偏ることを示唆しており、どの瞑想テクニックを選ぶかは目的に合わせて理論的に考える必要があると結論付けています。

Lutz, A., Slagter, H. A., Dunne, J. D., & Davidson, R. J. (2009). Attention regulation and monitoring in meditation. *Trends in Cognitive Sciences*, 12(4), 163–169. https://doi.org/10.1016/j.tics.2008.01.005

瞑想を、幸福と感情のバランスを育むための複雑な感情的・注意的制御訓練と定義しています。特に、注意を特定の対象に意図的に集中させるFA瞑想と、経験の内容を瞬間ごとに受動的に観察するOM瞑想という2つのスタイルに焦点を当て、それぞれの注意と感情への潜在的な影響および長期的な脳と行動の変化について、神経科学的な知見を交えて論じています。このフレームワークは、瞑想訓練の効果に関する科学的研究のための操作的定義を提供することを目的としています。

Sato, K., & Kudoh, S. N. (2021). 瞑想時脳波の特徴抽出と集中との関係性 [EEG feature extraction during meditation and its relation to concentration]. *関西学院大学理工学研究科紀要*, 118, 1–10.

古くから心の制御に用いられてきた瞑想と、集中力の関係を脳波から直接的に調べています。特に、瞑想中の脳波の特徴課題遂行中の脳波、そして課題の成績との関連性を検証しました。実験の結果、瞑想中の特定の脳波(シータ波)の強さと、瞑想後の課題中のシータ波の強さには正の相関があることが示唆されました。しかし、瞑想中の脳波の変化と課題の成績向上との間に明確な相関は認められず初心者にとって短時間の瞑想で深い状態に入ることは難しい可能性も示唆されています。

Schuman, M. (1980). The psychophysiological model of meditation and altered states of consciousness: A critical review. In J. M. Davidson, R. J. Davidson, & J. W. Schwartz (Eds.), *The psychobiology of consciousness* (pp. 333–361). Plenum Press.

瞑想と変性意識状態(ASC=Altered State of Conciousness)の精神生理学的基盤に関する研究を批判的に検討しています。特に、瞑想中に観察される脳波(EEG)の変化や低覚醒状態が、瞑想という心理的体験とどのように関連しているのかを掘り下げています。しかし、この研究は、これらの生理学的変化だけで瞑想のASCを完全に説明できるわけではなく、むしろ特定の瞑想技法に伴う行動や認知的プロセスを反映している可能性が高いと主張しています。つまり、瞑想の本質は特定の生理状態ではなく、体験が起こる「文脈」や意識の質の変化にあるという視点を提供しています。

Sedlmeier, P., Eberth, J., Schwarz, M., Zimmermann, D., Haarig, F., Jaeger, S., & Kunze, S. (2012). The psychological effects of meditation: A meta-analysis. Psychological Bulletin, 138(6), 1139–1171. https://doi.org/10.1037/a0028168

瞑想が心理的な側面にどのような影響を与えるかを、主に健康な(非臨床の)成人を対象とした過去の研究をまとめたメタ分析です。著者は、瞑想の目的自己調整意識の変容の二つに分け、特に西洋心理学が治療的な側面を重視してきたことに言及しています。研究デザインや測定方法の多様性、そして瞑想の効果に関する精緻な理論の不足が、これまでの研究の課題として指摘されており、より厳密な調査手法と理論に基づいた研究の必要性を強調しています。

Slagter, H. A., Lutz, A., Greischar, L. L., Nieuwenhuis, S., & Davidson, R. J. (2007). Mental training affects distribution of limited brain resources. PLoS Biology, 5(6), e138. https://doi.org/10.1371/journal.pbio.0050138

集中的な瞑想が脳の情報処理能力に与える影響を調査したもの。特に、注意の瞬き(Attention Blink)と呼ばれる、素早い連続した刺激の中で二つ目のターゲットを見逃してしまう現象が、限られた注意資源の分配に関係していることに着目しました。3ヶ月間の瞑想トレーニングにより、注意の瞬きが減少し、脳が最初のターゲットに割り当てる資源が減少することが、脳波測定(P3b波形の減少)で示されました。最初のターゲットへの脳資源の割り当てが少ないほど、二つ目のターゲットを見つけやすくなることが明らかになり、瞑想が脳の資源分配に対する制御を高め、脳と精神機能の可塑性を示す証拠となりました。

Slagter, H. A., Davidson, R. J., & Lutz, A. (2011). Mental training as a tool in the neuroscientific study of brain and cognitive plasticity. Frontiers in Human Neuroscience, 5, 17. https://doi.org/10.3389/fnhum.2011.00017

瞑想による精神訓練が脳と認知の可塑性に与える影響について掘り下げています。学習は通常、特定の課題に特化しており、他の類似した課題には効果が及びにくい特定学習が一般的であると指摘されています。しかし、著者らは、瞑想のような体系的な精神訓練が、新しい刺激や状況にも応用可能なプロセス特異的学習を誘発する可能性を提案しています。特に、注意を向けたり、メタ認知的な監視を行ったりといった認知的制御プロセスの訓練に重点が置かれ、これらが幅広い認知課題のパフォーマンス向上に貢献することが示唆されています。

Zanesco, A. P., King, B. G., MacLean, K. A., & Saron, C. D. (2016). Meditation training influences mind wandering and mindless reading. Psychology of Consciousness: Theory, Research, and Practice, 3(1), 12–33. https://doi.org/10.1037/cns0000080

瞑想訓練が注意散漫や漫然とした読書を減らすことに関連しているという証拠を提供しています。2つの長期的な研究では、集中的な瞑想訓練を受けた参加者が、読書課題中の注意の逸脱が少なく、無意味な文章に気づくのが速いことが示されました。これらの結果は、瞑想が注意を維持する能力を高め心の迷い(マインドワンダリング)を軽減する可能性を示唆しています。

寺田

基本的に私が速読研究の論文を書くときに参考にしたものなので、「最新」とはなっていません。ご了承ください!

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