フォーカス・リーディングは読書スピードをコントロールする「読書の柔軟性スキル(reading flexibility)」と、それを有効活用し学習効果を高めるための「戦略的読書アルゴリズム(strategic reading algorythm)」を活用します。
この2つの要素で、読書を快適かつ質高いものにしようというわけです。
基本的には心身のコントロール技術としてマスターしていただくわけですが、以下の3つの要素を下から順に積み上げていくイメージです。

図を見ていただくと分かると思うのですが、瞑想状態を作ることをとても大切にしているのですよ。
トレーニングの中では、心静かで、それでいて集中力を高く保てている状態を「鎮まり」と呼んでいます。もう少しお堅い言葉でいうと「弛緩集中状態」ですし、そういう心身の状態を「速読モード」と呼んでいます。
この時、脳波はシータ波およびアルファ波が強く出ている状態になっていると考えられます。
この状態こそ、速読を可能にする鍵だと考えています。
ちなみに、こちらの画像は私の瞑想状態の脳波を測定したものです。左(上)の画像の☆は脳波が乱れた状態から回復したサイン、水色の鳥は瞑想状態が深くなっているサインです。右(下)の画像は実際の脳波ですが、水色のシータ波、青色のアルファ波が強くでていることが分かります。

一番高い値を示しているのはデルタ波(緑)ですが、これは脳が休息状態にあることを示しており、体の回復や細胞修復、免疫機能の強化に寄与すると考えられています。瞑想を通してデルタ波が出現することで、心身のリラックス効果や、精神的な安定が得られると考えられます。




この記事のねらい
この記事では、この瞑想状態を作るためにおこなう丹田呼吸の効果を学術的な観点からリサーチして分かったことを整理してお伝えしています。
特に、レッスンで強調する「吐く息(呼気)を長くコントロールする」ことと「鼻で呼吸する」ことの生理学的効果に関して説明しています。
意識的に息を長くコントロールして吐くことは副交感神経優位の状態を作り、鎮まりの状態に導くことが、複数の学術論文で一貫して示されています。この呼気のコントロールにより、心拍変動の改善、ストレスや不安の軽減、血圧の低下、気分の向上、睡眠の質の改善といった効果がもたらされます。
またレッスンでは「吸気:呼気=1:2=6秒:12秒」を推奨していますが、その効果はやはり「呼気を長く保つこと」自体にありそうです。
また、同時に鼻での呼吸を推奨しているのですが、これは一般的に語られる空気のろ過、加湿、加温といった空気調整的な機能に加え、一酸化窒素(NO)の生成という決定的な利点を持つことが分かりました。(今まで知りませんでした。)
NOは酸素摂取を促進し、肺血流を最適化し、抗菌作用を持つのだそうですよ…。



鼻呼吸は自律神経のバランス改善、睡眠の質の向上、認知機能の強化と関連しており、特に安静時や軽度から中程度の運動時にその優位性が顕著です。一方、口呼吸は、いくつかの健康上のデメリットがあるとされています。
1. 丹田呼吸について
丹田呼吸は東洋発の伝統的な呼吸法ですが、その生理学的基盤が現代科学によっても解明されつつあります。
伝統的な「丹田」の概念
丹田は、中国伝統医学や気功、太極拳、ヨガといった東アジアの武術・瞑想の実践において、「気の海」や「エネルギーの中心」と表現される概念です。おへその下10cmくらいの領域を「下丹田」と呼びますが、この領域は、生命エネルギーである「気」の集積点とされ、地に足の着いた姿勢(グラウンディング)、呼吸、身体意識の基盤として重要視されてきました。道教や仏教の教えでは、意識をこの下丹田に集中させることで、思考や感情の制御に役立つとされています。
ちなみに丹田呼吸は下丹田を中心に空気を出し入れするようなイメージでおこなう呼吸法ですが、しばしば横隔膜呼吸や腹式呼吸と同義として扱われているようです。
現代生理学における解釈
実際に体験してみると分かることではあるのですが、実験(研究)によっても丹田呼吸は明確な生理学的効果をもたらすことが確認されています。現代の解釈では、丹田は横隔膜と腹部を意識した深い呼吸と関連付けられることが多く、横隔膜は(中学の理科で学んだとおり)深呼吸の主要な筋肉として機能します。
意識的な呼吸制御、特に横隔膜を用いた呼吸は、自律神経系(ANS)の強力な調節因子として認識されています。
自律神経系(ANS)と呼吸
自律神経系は、交感神経系(「闘争・逃走」反応を司る)と副交感神経系(「休息と消化」反応を司る)の二つの主要な部分から構成されます 3。呼吸パターンはこれらの神経系の活動に直接影響を与えます。
例えば、速く浅い呼吸は交感神経系を活性化させる傾向があるのに対し、ゆっくりと深い呼吸は副交感神経系を活性化させることが示されています 3。横隔膜は吸気の主要な筋肉として、自律神経系調節の中心的な役割を担っており、その動きは交感神経と副交感神経の機能をそれぞれ選択的に刺激することができます 3。
「丹田呼吸」に関して、現代の呼吸生理学の観点から、特に横隔膜呼吸や腹式呼吸の実践として捉えることで、科学的に深く掘り下げることができます。
伝統的な丹田の概念が「エネルギーの中心」として下腹部に焦点を当てるのは、横隔膜の動きが自律神経系を介して全身の生理機能に影響を与えるという生理学的役割と一致しています。これが中国3000年の歴史のすごさですね!
実際、伝統的な知恵が現代科学によって裏付けられ、単なる民間療法的なものではなく、具体的な生理学的基盤を持つ実践だというわけです。
横隔膜呼吸が自律神経系に影響を与えることで、身体的な状態(心拍数、血圧など)だけでなく、精神的・感情的な健康(ストレス、不安、気分など)にも包括的な影響を及ぼすことが明らかになっています。例えば、横隔膜呼吸は副交感神経系を活性化させ、心拍数や血圧を低下させ、ストレスホルモンであるコルチゾールのレベルを減少させることが報告されています 3。
同時に、丹田に意識を集中させることは、思考や感情の制御を助けることが示されており 1、これは身体的な呼吸の変化が精神的な落ち着きをもたらし、精神的な集中が生理学的調節を強化するという相互関係を示唆しています。このように、呼吸は身体と精神の間の橋渡し役となり、呼吸をコントロールするだけで身体的および心理的両方の成果を達成する包括的なアプローチを提供しているわけです!
さらに、意識的な呼吸のコントロール(特に横隔膜呼吸)は、個人が自身の内的な生理学的状態やストレス反応を積極的に管理するための、アクセスしやすく、薬など現代科学に頼らない手軽な方法であるという点でも重要な意味を持っています。
多くの研究が、呼吸法が「シンプルで」「どこでもでき」「費用がかからない」ことを強調しています 6。このアクセスの容易さと副作用の欠如は、その深い生理学的効果と相まって、呼吸法が個人にとって、一般的なストレス関連の問題に対して外部の介入に頼ることなく、自己主導で健康を管理できる強力なツールとなることを意味します。これは、ユーザーが「無理のない範囲で」呼吸をコントロールすることで「十分」であると考える直感を裏付けるものです。
2. 呼気延長の科学:副交感神経系の活性化
丹田呼吸やヨガの呼吸などを体験した方は、必ず「吐く息を長くコントロールする」という指導を受けていると思います。この考えは、学術研究によっても強く支持されています。
呼気を意識的に長くすることは、副交感神経系を活性化させ、リラックス状態を誘発する主要なメカニズムなのです。
主要なメカニズム:迷走神経の活性化
吐く息を長くコントロールして吐くことは、副交感神経系(PNS)を活性化し、リラックス状態を誘発する主要なメカニズムです 3。この効果は、呼気中の横隔膜の動きが迷走神経(副交感神経系の主要な構成要素)への直接的な刺激として機能することによって生じます 3。迷走神経の活性化は、アセチルコリンなどの神経伝達物質の放出を引き起こし、心拍変動(HRV)の増加や全身の鎮静効果といった生理学的反応を促進します 3。
心拍変動HRVは、心拍の変動性を測定する指標であり、迷走神経活動の信頼性の高い指標とされています。HRVが高いほど、迷走神経の緊張度が高く、ストレスへの適応能力が高いことを示します 3。呼気を長くする呼吸法は、HRVの高周波(HF)成分を著しく増加させ、これは副交感神経活動の強化を反映しています 8。
生理学的影響
- 二酸化炭素(CO2)の調整: 呼気を長くする呼吸法は、特に生理学的溜息のような呼吸法において、過剰な二酸化炭素を速やかに排出するのに役立ち、CO2レベルの調整と気分の改善につながります 7。ストレスによる速く浅い呼吸(過換気)は、CO2とO2のバランスを崩し、不安やパニックを引き起こす可能性があります 12。
- 圧受容体反射の感度向上: ゆっくりとした深い呼吸は、大動脈弓や頸動脈洞の伸展受容体を刺激し、圧受容体反射を活性化させます。この反射は血圧と心拍数を調節し、交感神経活動を抑制する効果があります 3。
呼気を長くコントロールすることがもたらす効果
吐く息を長くコントロールする呼吸法は、以下のような多岐にわたる効果が学術的に示されています。
- ストレスと不安の軽減: 意識的な呼吸法、特に呼気を長くするサイクリック・サイイングや4-7-8呼吸法などは、自己申告によるストレス、不安、ネガティブな気分を著しく減少させることが示されています 6。一部の研究では、マインドフルネス瞑想よりも大きな改善が見られたと報告されています 10。
- 血圧の低下: ゆっくりと深い呼吸、特に呼気延長を伴うものは、高血圧の非薬理学的介入として有効です。収縮期血圧と拡張期血圧の両方を顕著に低下させることが示されています 4。
- 睡眠の質の改善: 深くゆっくりとした呼吸法は、身体のリラックス反応を誘発し、入眠を助け、睡眠の質を向上させます 6。
- 気分と認知機能の向上: 呼気延長は、ポジティブな感情の増加、集中力の向上、ネガティブな感情の減少につながることが研究で示されています 6。
- 痛みの軽減: ゆっくりとした深い呼吸は、急性疼痛の患者に役立つ可能性があります(※さらなる研究が必要であるとされています) 28。
特定の吸気:呼気比率とテクニック
「吐く息を長くコントロールする」効果は上記の通り科学的に裏付けられていますが、いくつかの研究や実践では、最適な効果を得るための特定の比率が提案されています。
- 1:2比率: 吸気4秒、呼気8秒のように、呼気を吸気の2倍長くする比率が頻繁に推奨されます 13。ある研究では、吸気と呼気の比率が1:1と1:3の条件で呼吸困難に及ぼす影響に相違がないことが示されましたが、呼気:吸気比率が2:1の意識的な腹式呼吸が副交感神経を優位に導くことが実証されています 13。
- 4-7-8呼吸法: 鼻から4秒吸い込み、7秒息を止め、口から8秒かけて「フーッ」と音を立てながら吐き出す方法です 6。このテクニックは「神経系のための天然の鎮静剤」と称されています 6。
- サイクリック・サイイング(生理学的溜息): 2回の短い吸気の後に、1回の長い呼気を行います 7。このテクニックは、ストレス軽減と気分改善に非常に効果的であり、安静時の呼吸数を著しく低下させることが報告されています 10。
- 一般的な推奨: 「吸った息よりも長く吐き出す」というシンプルなガイドラインも有効です 9。重要なのは、厳密な秒数に固執することではなく、呼気を長くすること自体であり、個人の快適さと適応性を考慮することが推奨されます 30。
表1:吸気:呼気比率と関連する生理学的効果
呼吸テクニック/比率 | 吸気時間(例) | 呼気時間(例) | 主要な生理学的効果 |
1:2比率 (呼気:吸気) | 4秒 | 8秒 | 副交感神経活性化、HRV増加、ストレス/不安軽減、血圧低下 3 |
4-7-8呼吸法 | 4秒 (鼻) | 8秒 (口) | 副交感神経活性化、不安軽減、睡眠改善、血圧低下 6 |
サイクリック・サイイング | 2回の短い吸気 | 1回の長い呼気 | ストレス/不安の即時軽減、気分改善、安静時呼吸数低下 7 |
一般的な呼気延長 | 通常の吸気 | 吸気より長く | 副交感神経活性化、リラックス効果 4 |
様々な研究で一貫して示されているのは、呼気を長くすることが迷走神経を刺激し、副交感神経系を活性化させるという事実です。
フォーカス・リーディングでは「6秒吸って12秒かけてゆっくりと吐く」というペースを指導しているのですが、学術的に裏付けが取れたものだということがお分かりいただけるでしょうか。
ただし、重要なのは、呼気の「時間」と「意識的な制御」であり、厳密に秒数を守る必要がないこともご理解いただけるかと!
実際、例えば8秒の呼気が難しい場合でも、6秒や4秒から始めることが推奨されており 30、また単に「吸った息よりも長く吐き出す」という指示も有効とされています 9。
呼気を長くコントロールする呼吸法の継続的な実践は、急性ストレスの軽減だけでなく、身体全体の自律神経の柔軟性と将来のストレスに対する回復力を高める効果があります。これは、単なる一時的な症状緩和を超えた、長期的な生理学的適応を意味します。
研究では、サイクリック・サイイングの継続的な実践が、参加者の安静時呼吸数を一日を通して著しく低下させ、生理機能に持続的な影響を与えることが報告されています 10。また、HRVの向上は、自律神経系が内部および外部のストレス要因に適応する動的な能力、すなわち交感神経優位と副交感神経優位の間でシフトする能力の指標とされています 20。これにより、呼吸法は単なる応急処置ではなく、自律神経系を訓練し、ストレスに直面した際に身体がより頑健で適応的になるための「生理学的コンディショニング」の一形態として機能します。
- 4 https://www.physio-pedia.com/Diaphragmatic_Breathing_Exercises
- 7 https://mindstreamintegrative.com/integrative-medicine/sighing-benefits/
- 9 https://www.lung.org/blog/stress-breathing-exercises
- 8 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC6037091/
- 10 https://med.stanford.edu/news/insights/2023/02/cyclic-sighing-can-help-breathe-away-anxiety.html
- 12 https://ouraring.com/blog/what-is-the-physiological-sigh-how-to-do-it/
- 20 https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40252198/
- 30 http://sanyo-kisou.com/%E5%81%A5%E5%BA%B7%E3%81%A8%E7%BE%8E%E5%AE%B9%E3%81%AE%E7%A0%94%E7%A9%B6/tanden/tanden-breath-training/
3. 鼻呼吸と口呼吸:異なる生理学的影響と健康上の利点
フォーカス・リーディングでは「鼻から吸って、鼻から吐く」と指導するのですが、ヨガや武道などでは「鼻から吸って、口から吐く」という指導を受けるようです。
実は、鼻か口かは単なる好みを超えた、身体に異なる重要な生理学的影響を及ぼしていることが分かっています。



また、指導者によっては「左の鼻の穴から吸って、右の鼻の穴から吐く」と説明されるそうですが、これは「太陽が東から昇り、西に沈む」ことと呼応したものだそうで、科学的には根拠がありません。というか、南半球の皆さんはどうなるんだって話でもありますわね。
空気調整の根本的な違い
鼻は呼吸のための主要な器官であり、吸気を肺に到達する前にろ過、加湿、加温するという重要な機能を果たします 5。この機能は、病原体や刺激物から呼吸器系を保護する上で不可欠です 35。一方、口呼吸はこれらの重要な空気調整機能を迂回するため、ろ過されず、十分に加湿されず、温度調節もされていない空気が直接肺に送られ、呼吸器系に悪影響を及ぼす可能性があります 35。
ここはまぁ健康面のお話ってことですね。
鼻腔内一酸化窒素(nNO)の重要な役割
実は、ここは「丹田呼吸のパワー」を語る上で重要なポイントかも?
鼻呼吸の最も顕著な利点の一つは、鼻腔内で一酸化窒素(NO)が生成されることです 5。
- NOの作用機序: 鼻から吸い込まれたNOは肺に運ばれ、強力な気管支拡張作用と血管拡張作用を発揮します。これは、気道と血管を広げることを意味します 5。
- 酸素摂取と循環の向上: NOは、ガス交換が行われる肺胞の血管を拡張させ、空気中の酸素が血流により効率的に移行することを可能にします 38。研究によると、鼻呼吸は口呼吸と比較して酸素摂取量を約10~20%増加させることが示されています 35。
- 肺血流の最適化: NOは肺内の血流を最適化する上で重要な役割を果たします。最も効率的に換気されている肺の領域に血流を再分配することで、ガス交換の効率を最大化します 38。
- 抗菌・抗ウイルス作用: NOは強力な抗菌・抗ウイルス作用を持ち、空気中の病原体に対する第一線の防御として機能します 5。SARS-CoV流行時の研究では、NOがウイルス複製を阻害することが示されました 36。
二酸化炭素レベルとガス交換効率への影響
息が切れるほどではなく、比較的長い時間続けられる程度の運動においては、鼻呼吸は呼吸数の低下、換気量の低下、そして呼気中のCO2レベルの「増加」という結果をもたらします 35。これは一見すると非効率的に思えるかもしれませんが、換気効率の向上とCO2保持の改善を示しており、ボーア効果(組織への最適な酸素放出)にとって重要だとされています。
一方、口呼吸は身体活動中に水とCO2の損失を増加させ、健康とパフォーマンスに悪影響を及ぼす可能性があります 35。
自律神経系活動への影響
鼻呼吸は、特に安静時に神経系をより副交感神経優位の「休息と消化」の状態に移行させるのに役立ちます。これは、拡張期血圧の低下と心拍変動(HRV)によって測定される副交感神経活動の強化によって裏付けられています。口呼吸は、特にストレス時に、交感神経の活性化を強化し、浅く速い呼吸につながる可能性があります 5。
全体的な健康とパフォーマンスへの影響
- 睡眠の質: 睡眠中の口呼吸は、いびき、睡眠時無呼吸、睡眠サイクルの乱れと関連しています 5。鼻呼吸はより良い睡眠を促進します 5。
- 認知機能と気分: 鼻呼吸(NOを介して)による脳への酸素供給の改善は、認知機能と気分を向上させる可能性があります 5。鼻呼吸は集中力とバランス機能の向上とも関連しています 44。
- 身体パフォーマンス: 非適応者において、高強度運動中の鼻呼吸のみは換気制限によりピーク運動能力を制限する可能性がありますが 34、適応者ではVO2maxやパフォーマンスに有意な障害は見られません 35。鼻呼吸は安静時や軽度から中程度の運動には十分です 35。
- 歯と顔の健康: 慢性的な口呼吸は、骨構造、顔貌、歯列に悪影響を及ぼす可能性があります 35。鼻呼吸は自然な歯列と健康な歯をサポートします 35。
- 免疫防御: 鼻のろ過機能とNO生成は、空気中の病原体に対する第一線の防御として機能します 35。
表2:鼻呼吸と口呼吸の主要な生理学的差異と利点
特徴/生理学的側面 | 鼻呼吸の利点 | 口呼吸の欠点 | 参照元 |
空気ろ過、加湿、加温 | 病原体をろ過し、空気を調整する | ろ過・調整機能がない | 5 |
一酸化窒素(NO)生成 | NOを生成し、血管拡張、酸素摂取、血流最適化、抗菌作用をもたらす | NO生成がない | 5 |
酸素摂取量 | 口呼吸より10-20%高い酸素摂取量 | 酸素摂取量が低い | 35 |
CO2レベル/ガス交換 | 呼気中のCO2レベルが高く、換気効率が良い(ボーア効果に寄与) | CO2損失が多く、ガス交換が非効率 | 35 |
自律神経系 | 副交感神経系を活性化し、リラックスを促進 | 交感神経系を強化し、ストレスを助長 | 5 |
睡眠の質 | いびきや睡眠時無呼吸を軽減し、睡眠を改善 | いびき、睡眠時無呼吸、睡眠障害と関連 | 5 |
顔/歯の健康 | 自然な歯列と健康な歯をサポート | 顔貌や歯列に悪影響を及ぼす可能性 | 35 |
免疫防御 | 病原体に対する第一線の防御として機能 | 免疫防御が劣る | 35 |
運動パフォーマンス | 準最大運動には十分、適応者は高強度でも支障なし | 非適応者ではピーク運動能力を制限する可能性、高強度運動時に必要 | 34 |
鼻呼吸と口呼吸の最も重要な生理学的差異は、鼻腔内一酸化窒素(NO)の生成と役割にあります。NOは、血管拡張、酸素輸送の促進、免疫防御といった多岐にわたる生理学的役割を担っており、鼻呼吸が優位だよねっていうことになるわけです。
実際、このNOの有無こそが、口呼吸と鼻呼吸の決定的な違いにつながっていると考えられるわけです。



実は今回の調査では見つけきれなかったのですが、ヨガの先生の話として「インナーマッスルの使い方が変わる」という違いがあり、学習や読書とスポーツとでは、息を吐く経路が変わる可能性があるのかも、ということでした。これはさらに調査したいと思います。
- 5 https://www.nashvillepsych.com/can-nasal-breathing-help-us-feel-calmer/
- 34 https://academic.oup.com/eurjpc/article/32/Supplement_1/zwaf236.175/8136687
- 35 https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10858538/
- 36 https://rosalbacourtney.com/professional-and-practitioner-resources/immune-protective-effects-of-nasal-breathing-and-nitric-oxide-in-the-time-of-covid-19/
- 38 https://stsmiles.com/blog/the-vital-role-of-nasal-nitric-oxide/
4. 丹田呼吸の実践的応用とエビデンスに基づく推奨事項
最後に、ちょっと実践的なお話です。
丹田呼吸の原則、特に「吐く息を長くコントロールする」ことと「鼻で呼吸する」という2点は、健康とウェルビーイングを向上させるための実践的な応用が可能です。
呼気延長を伴う鼻呼吸の実践への統合
- 意識的な気づき: まず、一日を通して自分の呼吸に意識を向け、鼻呼吸か口呼吸か、そのペースはどうかを観察することから始めます 5。これは一種の瞑想ですね。
- 鼻呼吸の優先: 安静時や軽度から中程度の活動中は、主に鼻から呼吸することを目指します 5。優しく唇を閉じ、数分間鼻呼吸を試みることから始めましょう 5。
- 呼気の強調: 意識的に呼気を吸気よりも長くします。これは、数を数えること(例:4秒吸って、6秒または8秒吐く)によって達成できます 5。
- 特定のテクニック:
- 生理学的溜息: 1回深く吸い込み、その後にもう一度短く吸い込んで肺を最大限に膨らませ、続いてゆっくりと長く息を吐き出します 7。これは、即時のストレス軽減に非常に効果的です。
- 4-7-8呼吸法: 鼻から4カウントで吸い込み、7カウント息を止め、口から「フーッ」と音を立てながら8カウントで吐き出します 6。
- 丹田呼吸: 下腹部に意識を集中し、吸う時におへその下の方に空気が送り込まれるイメージを作り、吐く時に肩の力が抜け、重心が下がる(あるいは横隔膜が下がる)イメージを作ります。呼気を意識的に長くします 4。
- 継続と段階的な進歩: 毎日、たとえ短時間(例:5分間)でも定期的に練習します 6。快適さを感じながら、練習時間と呼気の長さを徐々に増やしていきます 30。
個人の差異と快適さへの配慮
ちなみに、レッスンでもお伝えしているように「無理のない範囲で」という点は非常に重要です 9。
学術的な見解としても、もし特定のテクニックがストレスを増加させるようであれば、別の方法に切り替えるべきだとされています 9。実際、呼吸パターンに対する個人の反応には差があることが指摘されており 19、自身の身体の感覚に耳を傾け、無理なく続けられる方法を見つけることが大切です。
継続的な実践の恩恵
呼吸法の利点は、一時的なものではなく、継続的な実践によって時間とともに蓄積され、生理機能に持続的な変化をもたらし、回復力を高めてくれることです。
これは、長期的な実践に対する強力な根拠となります。例えば、サイクリック・サイイングは、運動中だけでなく、一日を通して安静時の呼吸数を著しく低下させ、生理機能に持続的な影響を与えることが示されています 10。また、4-7-8呼吸法は「使えば使うほど強力になる」とされています 6。これは、身体が定期的なトレーニングによってそのベースラインの生理学的状態を適応させ、再調整することを示しており、実践が一種の「生理学的コンディショニング」として機能することを意味します。
丹田呼吸、特に「吐く息を長くコントロール」し、「鼻から呼吸する」ことは、ストレスや高血圧の症状を管理するだけでなく、生理学的回復力を積極的に構築し、全体的な健康と長寿を促進するものです。心拍変動の改善、自律神経の柔軟性、血圧の低下、睡眠の質の向上、気分の改善、免疫防御の強化、酸素化の向上といった恩恵は、急性的な不快感を和らげるだけでなく、基本的な身体システムを最適化することに繋がります。HRVの低下が慢性疾患と関連しているという報告は 23、呼吸を通じて迷走神経の緊張度を高めることが予防的措置となり得ることを示唆しています。
また、ゆっくりとした呼吸が高血圧に対する「非薬理学的療法」として位置付けられていること 21 は、その視点を反応的な治療から、健康の積極的な最適化と疾患予防へとシフトさせ、ウェルビーイングの包括的な見方と一致します。
5. 結論
丹田呼吸の根底にある原則、特に「吐く息を長くコントロール」し、「鼻から呼吸する」ことは、学術研究の増加によって強力に支持されていることが分かりました!
フォーカス・リーディングのベースを作る丹田呼吸は、日々の生活の中で実践し続けることで、集中力を高めてくれるだけでなく、健康増進にも役に立つことが分かりました。
ぜひ、毎日の習慣として朝10分の瞑想タイムを確保して、読書とセットで実践してください!