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読書の集中力が上がらない?─だったら「運動」だ!

仕事に追われる日々の中で、どうやって読書や勉強のための時間とエネルギーを確保したらいい?
そういう悩みをよくお聞きします。

「がんばって、集中してやるしかないんですよね」─ そんなセリフもよく耳にします。
でも、問題はその「がんばる気力」と「集中力」をどう生み出せばいいのかってことなんですよね。

こんな私たちの悩みに対して「脳科学で知的生産性を10倍高める」ことが可能だと説く本があります。ファブリティウス&ハーゲマン著『覚醒脳の作り方』です。


その中で、著者は、私たちの集中力その他のパフォーマンスを高めるためには「DNA」を意識すべし── そう語ります。そのDNAとは、決して「デオキシリボ核酸」のことではありません…

  • D:ドーパミン
  • N:ノルアドレナリン
  • A:アセチルコリン

この3種類の神経伝達物質のことなのです。

そして、このうち「アセチルコリン」は集中力を研ぎ澄ませ、観察力を高め、なにより脳の可塑性を生み出し、学習したものをどんどん吸収していく状態を作ってくれる、最高の化学物質なのです。
この物質は赤ちゃんの脳に特に豊富に存在することが分かっています。そりゃそうだ!とも思えますよね。

そして、大人がアセチルコリンを放出しようと思ったら、その条件として2つあると著者は語ります。

1つは、何か重要なことだったり、驚くようなこと、目新しいことだったりに自分をさらすこと。これはドーパミン(D)が放出されやすい状態を作る、ということもできます。

そしてもう1つが、ここでご紹介したい「運動」なのです。

目次

運動は2つの化学物質で「学習」を強化する

ここからは『覚醒脳の作り方』の内容から離れて、単純に「運動と集中力」のお話。

“学習ホルモン”を筋肉が分泌する?!

私たちは筋肉が「身体を動かすための存在」と思っているワケですが、近年の研究で、筋肉は「マイオカインmyokine)」と呼ばれる生理活性物質を分泌する「内分泌器官」としても機能していることが分かっているそうです。

マイオカインは筋収縮によって血流に放出され、全身の臓器や脳に作用するとのこと。特に学習・記憶に関わる因子として3種類の物質(IL-6:集中力や精神的安定を助ける、イリシン:有酸素運動で分泌が高まり、脳由来神経栄養因子(BDNF)の生成を後押しする、カテプシンB:記憶課題の成績向上と関連し、海馬の神経新生に寄与する)が重要だとされています。

『脳を鍛えるには運動しかない!』で朝にジョギングの話が紹介されていますが、ジョギングすると、新しい情報が頭に残りやすくなるのは、これらのマイオカインが脳を「学習モード」に切り替えているからだとか!

運動で注意と覚醒がレベルアップ!

学習効率を左右するもう一つの鍵が、先ほど紹介したDNAの1つ「アセチルコリン」です。大脳皮質で注意や覚醒をコントロールし、不要な情報をカットして集中を可能にする重要な役目を持っています。

人間を対象としたものではなく、あくまでラット実験ですが、わずか5分の歩行で大脳皮質におけるアセチルコリン放出が急増したとのこと。人間を対象にした研究でも、この実験結果を支えるような発見がされており、朝に5分程度の散歩をするだけで「集中の点火スイッチ」が入ると考えられているです!

机に直行するより、まず体を動かしてから勉強を始めた方が、集中しやすくなるわけです。

ここでの参考文献

  • Kurosawa, M., Sato, A., & Sato, Y. (1993). Stimulation of afferent fibers in the sciatic nerve increases acetylcholine release in the cerebral cortex in anesthetized rats. Neuroscience Letters, 160(2), 139–142.
  • Seifert, T., Brassard, P., Wissenberg, M., Rasmussen, P., Nordby, P., Stallknecht, B., … & Secher, N. H. (2010). Endurance training enhances BDNF release from the human brain. American Journal of Physiology-Regulatory, Integrative and Comparative Physiology, 298(2), R372–R377.
  • Pedersen, B. K., & Febbraio, M. A. (2012). Muscles, exercise and obesity: Skeletal muscle as a secretory organ. Nature Reviews Endocrinology, 8(8), 457–465.
  • Moon, H. Y., Becke, A., Berron, D., Becker, B., Sah, N., Benoni, G., … & van Praag, H. (2016). Running-induced systemic cathepsin B secretion is associated with memory function. Cell Metabolism, 24(2), 332–340.

効果的な「朝の運動」はどんなものか?

上に「軽いジョギング」の話が出ましたが、実は『脳を鍛えるには運動しかない』では、かなりハードなランニングをさせることで、高校生の学力をメキメキと向上させたという話が紹介されています。

私たちの集中力や学習・仕事のパフォーマンスを上げるのは、どのような運動なのでしょう?

有酸素運動とレジスタンス運動

実は、学習効率を最大化するためには、有酸素運動とレジスタンス運動(いわゆる筋トレ)の組み合わせが効果的だとされているそうです。

  • 有酸素運動(ジョギング・サイクリングなど):心拍数を上げ、血流を増やし、BDNF分泌を促す。喩えて言うなら、脳の「畑を耕す」役割。
  • レジスタンス運動(スクワット・腕立て伏せなど):筋肉の強い収縮がカテプシンBやイリシンを増やし、記憶強化を後押しする。

実験では、有酸素運動のみを行った群より、有酸素+レジスタンスを組み合わせた群の方が語学学習の定着が良いことが報告されています。

強度と時間:どこまでやれば効果がある?

運動の種類に続いて、今度は強度と頻度。
理想は中強度で15〜20分の有酸素運動をすること。最大心拍数の65〜75%程度で、会話はできるが歌うのは難しいレベルが目安です。

寺田

このことを知ってから、朝のジョギングを脂肪燃焼のためのゆるい走りから、ちょっと速めを意識するようになりました…!

さらに、時間がない人に有効なのがいわゆるHIIT(ヒート、高強度インターバルトレーニング)です。1分間の全力運動と1分間の休息を繰り返す形式で、10分程度で効果を得られます。HIITは通常の有酸素運動以上に脳由来神経栄養因子やイリシンの増加を引き起こすことが示されています。

ただし、毎日高強度運動を行うと疲労が蓄積しますよね…。それは本末転倒です。
基本は中強度をベースにし、週2〜3回だけHIITを差し込むとバランス良く続けられそうです!

ここでの参考文献

  • Szuhany, K. L., Bugatti, M., & Otto, M. W. (2015). A meta-analytic review of the effects of exercise on brain-derived neurotrophic factor. Journal of Psychiatric Research, 60, 56–64.
  • Ferreira, F. S., Alves, C. R. R., Trombetta, I. C., Alves, G. B., de Sá Pinto, A. L., Gualano, B., & Pereira, R. M. R. (2011). The influence of strength training on muscle mass in patients with rheumatoid arthritis: A randomized controlled trial. Arthritis Care & Research, 63(8), 1151–1158.
  • Hecksteden, A., Wegmann, M., Steffen, A., Kraushaar, J., Morsch, A., Ruppenthal, S., … & Meyer, T. (2016). Effects of different exercise intensities on BDNF response to acute exercise. Medicine & Science in Sports & Exercise, 48(10), 1859–1866.

運動と学習をどう組み合わせる?

快適でパフォーマンス高く学習ができるような生活リズムをどう作ればいいのか? 『脳を鍛えるには運動しかない』のようなハードなランニングを毎日できるのは若さのお陰と思ってしまいます…。

20〜30分でできる朝の運動プログラム

誰でも取り入れられる具体的なプログラムは以下の通りです。

  1. 5分程度:軽いウォーキングやストレッチ(アセチルコリンを活性化)。
  2. 15分程度:中強度の有酸素運動(BDNFやIL-6、イリシンを増やす)
  3. 10分程度:自重レジスタンス運動(スクワットや腕立て伏せでカテプシンB分泌)
  4. 3分程度:クールダウン(呼吸と心拍を落ち着かせる)

この流れなら30分程度で「学習に最適な脳の状態」が整います。

運動後の「学習ゴールデンタイム」はいつだ?

研究によれば、運動直後から60分ほどが記憶定着に最も有利な時間帯とのこと。この時間を「学習ゴールデンタイム」と位置づけましょう。

  • 読書の要約やノート:前日に読んだ本を取り出してノートに整理
  • 想起練習:資格試験などがあるなら、前日までの学習を軽くテストしたり、ノートに書き出したりなど
  • 新しい知識の暗記:『脳を鍛えるには…』の中でもランニング後の1時間目の授業の成績が抜群に伸びたと書かれていますので、真似するしかありません!

ということは、前日にちゃんと読書や学習をしておくことが理想。
そうでないなら、前日のうちに書籍や参考書、ノートを開いておいて、運動後、シャワーを浴びたら軽く勉強!とスムーズにつないでいけそうですね。

ここでの参考文献

  • Winter, B., Breitenstein, C., Mooren, F. C., Voelker, K., Fobker, M., Lechtermann, A., … & Knecht, S. (2007). High impact running improves learning. Neurobiology of Learning and Memory, 87(4), 597–609.
  • Roig, M., Nordbrandt, S., Geertsen, S. S., & Nielsen, J. B. (2013). The effects of cardiovascular exercise on human memory: A review with meta-analysis. Neuroscience & Biobehavioral Reviews, 37(8), 1645–1666.
  • Loprinzi, P. D., Edwards, M. K., Frith, E., & Heffernan, K. S. (2017). The effects of exercise on memory function among young to middle-aged adults: systematic review and recommendations for future research. Preventive Medicine, 100, 35–44.

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