これまで散々「AI時代をサバイバルできる能力を読書で養おう」って書いてきたわけなんだけど、それってどういう力なんだ? どういう読み方や後処理の仕方をしたら、その能力が身につくんだ?っていう話を整理しながら、あらためて書いてみたいと思う。
AI時代をサバイバルする能力って何だ?
これは色々な人が、それぞれの立場から様々に語っているわけだけど、共通していえるのはこういう項目だろう。
- 粘り強い論理的思考力
- 現場でしか得られない体験的知性・暗黙知
- 人間的な情緒(感情)を汲み取れる、あるいは表現できる力
- 倫理的観点から仕事のあり方を批評する力
あるいは、日本の企業に対してDXを通じたビジネス改革を推し進めるコンサルタント、安部慶喜氏はその著書の中で、AIエージェント時代に、組織のDXを進めていく上で鍵を握るのは「人財改革」であるとした上で、価値ある人財たるには3つの能力(3つのシンカ)が必要であると説いている。(同書p.178)
- 深化:世の中の動きや技術動向を捉え、影響の連鎖を深掘りし想像する力
- 新化:自身の業務をいかに刷新できるかを考え抜く力
- 進化:将来に向けて試行錯誤しながら、確実に前に進める力

この安部氏の語るものは、恐らくあらゆるホワイトカラー職に言えることだろう。
今後、あらゆる職務が自動化され、クリエイティビティが発動しないオペレーション的な業務を一切合切AI(エージェント)に任せられるようになるだろう。だとすると、人間はそのクリエイティビティの部分と、プロデューサーとしての決断(とその責任)を背負うことになるわけだから。
どんな読書をしたらいいんだろう?
前に、「こんな読書は要らない」という話を書いたことがある。
- 雑な「スキミング」なら必要ない
- 情報の理解と消費のための読書は必要ない
- ノウハウ中心の読書は必要ない
- 国語の授業の延長のような読書は必要ない
- 一冊だけ読んで満足する読書は必要ない
ヒトコトでいうなら、「AIに聞けば解決するような話しか得られない読書に価値はない」という話。
もちろん、個人的な問題を解決したいとか、何か新しい情報を知りたいとか、そういう読書はあっていい。
いや、AIに質問して解決した気になるよりも、著者の文脈を知り、書籍から得られる情報の意味とか背景までまるごと理解した方が断然いい。
ただ、それは個人的な問題や知的好奇心を満足させることができたとしても、AIエージェントを使いこなし、AI時代に求められる人財になることは難しいだろう、という話だ。
その対極にある読書はどういう読書か?
ヒトコトでいうなら「インサイトを生み出すような読書」だ。それをシンプルに「インサイト読書術」と呼んでいる。
簡単にいうと、こんな読書だ。
- 自分の中の問いや問題意識から生まれた読書
- 著者の個別の主張を、書籍全体の論理構造と主張とセットで理解する読書
- 自分の文脈、あるいは現場から得た知見と比較、検討しながら理解する読書
- 著者の主張を自分の文脈に置き換えて、どのようなストーリーや新しい主張が生まれるか検討する読書
- 著者の論理と自分の現場の知恵のかけ算で、今の現場に活かせるアイデア、行動のための具体的方針・方策が生まれる読書
この観点でインサイトを定義するなら、こういう風に説明可能だ。
「現場のデータ分析」・「書物から得られた法則」と「経験値から生まれる直感」のかけ算で得られた発想を、人に説明しうる言語として落とし込まれたアイデア
ビジネスの現場で活きるインサイトを生み出せるような読書こそ、AI時代をサバイバルするために必須の本の読み方だと言っていい。
具体的にどんな風に取り組めばいい?
基本的にチームでおこなう前提の流れを解説してみたい。
次の7フェーズで取り組んでみて欲しい。あまり難しく考えすぎず、「どういう手順で進めるのが効果的か」を体験するつもりでどうぞ。
フェーズ①:目的設定 Why to Read
何が「できる状態」になったら満足か決める。
例「今、停滞中のプロジェクトの打開策のヒントを見いだし、それを整理して仲間に説明・提案できる」
何が出来上がったら満足かを決める。
例「15分程度でプレゼンできるシナリオとスライド」
フェーズ②:論点設計 What to Read
RQ=Research Question;調査のための問い、つまり、知りたいこと、決めたいこと、解きたい問いを言語化する。
例:「○○プロジェクトの遂行上、足りない要素は何か?」
論点に対する答え(主張・結論)が得られた後に、①これに対する反論として、どのようなものが出てくるだろうか?、②これを実際に試した際に、どのような事態になったら失敗だったと言えるだろうか? と考えておく。これが出せないとしたら、独り善がりのものになっている可能性がある。
例:「あらゆる顧客について、そう言えるのか?」⇒「境界条件は…」
「効果の測定期間は○週間。測定項目は…」
フェーズ③:コーパス設計 Where to Read
主要概念、用語整理、代表理論、対立軸(対立する論点)、重要著者を探索・確認する。
AIを利用しておこなうのがお勧め!誰に本を勧めてもらうかをチームで検討してもいい。
上記リサーチで得られた情報を元に(AIに相談しながら)、以下の4種類に整理する。
- 教科書的(中核的)位置づけの本
- ケーススタディや各論など補助的位置づけの本
- まったく異なる(あるいは反する)意見の本(反論・視点の転換)
- 具体的方法論について学ぶための本
フェーズ④:俯瞰 Overview
フェーズ③で確定したリストを目次・序章(前書き)・結論、あるいはAmazon等のレビューを参考にして、それぞれの書籍をどう読み、処理するか考える。(概要把握のスキミングも有効)
それぞれの書籍をどの位の深さで読むか、どういうフォーカスで読むか(何を抽出できたらいいか)を決める。
フェーズ⑤:読解設計&実行 Read
各書籍の位置づけに従い、「何を、どこまで理解するか」(理解・応用・分析・評価)を決める。
重要箇所、問題・言葉の定義、条件、限界、反論などを記録(傍線・記号・メモ)する。
フェーズ⑥:想起&統合 Synthesize
1章を読み終わったらキーワード(3-7語)を書き出し、その章のポイントを自分の言葉で要約的に記録する。
複数の書籍の共通点・差異(差分)・条件の異同を整理し、主張&根拠⇔反論を概念化。
フェーズ⑦:出力と品質保証 Deliver
一連の取り組みで得られた材料を、自分の現場(文脈)での諸条件と照らし合わせながら、応用(再利用)可能な要素は何か、条件を変えなければならないものは何かを検討する。
その上で、主張の構造を書く。そこに段落(チャプター)を埋め込み、最後に文章化(もしくはスライド化)する。
出典照合、論理の飛躍や抜け漏れのチェック、反証耐性のチェック。必要に応じて再設計へ…
ここで「Step 2で仮置きした反証条件」に照らしてチェックし、自分でも反証条件(例外・適用範囲)を挙げてみる。
独りでやる場合は?
チームでやる場合には、担当を決めたり、全員の合意で進めるために言語化したりといった作業が必要になる。これに対して、自分のための読書の場合は、もっと気楽にやっていいだろう。その場合、独り善がりに陥らないために、反証条件を、AIと壁打ちしながら検討することをお勧めしたい。
最初は面倒くさいと感じるかも知れないが、慣れてくるにつれて、全体をヒューリスティック(体当たり的な取り組みで、その場の感覚で処理していくやり方)にこなせるようになるものだ。
ぜひ、「情報を受け取るだけの読書」を卒業して、ユニークな独自の価値を生み出せる読書を目指そう!





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