前回、アノテーション(読書メモ)とAIとの対話を通じて「思考の言語化」をしていこうという話をしたわけだが、
この記事で提案したいのは、それに加えて、AI時代に自由自在に発想を広げ、新しいアイデアを生み出すインサイトを手に入れるための方法だ。
ちなみにここからは次の4つのステップで編集型読書を体験してもらいたいと思っている。
《編集型読書の4ステップ》
出発点:受け身の読書からの卒業
第1段階:「!」と思った一文を、自分の言葉で言い換える
第2段階:その一文の背後にある価値観・主張の「構造」を抽出して、自分の文脈に移設する
第3段階:「でもさー」「じゃーさー」で命題を揺さぶり、広げる
第4段階:自分の問いへの「応答文」としてまとめる
【出発点】こんな読書を卒業しよう!
著者の立場で本を読み、著者が大事だと主張していることを汲み取るだけの作業。 著者が太字にしたり、装飾をいれたりしている箇所を「そうだよなー、大事だよなー」と思って感銘を受けるだけの読書。
これは真っ先に卒業したい読書だ。読書はあなたの主体的な営みであって、あなたの未来を創る営みなのだ。
あるいは、今この段階で知りたいこと、気になっていることを知るための情報収集作業。
こういう読書はもちろんある。というか、必要不可欠ですらある。
このような受け身の読書、情報を受け取るだけの読書をやめて、自分の仕事や関心・人生からの再解釈を、主体的・能動的におこなう読書に移行する。
そこで、まずは表面的でいいので、「自分だったらどう語る?」と考える。
【第1段階】「!」と思った箇所の編集
①まずは傍線を引いてみる
まずは「!」と思った箇所に赤色の傍線を引こう。具体的には…
- これは大事だ!
- これはスゴい!まじか、知らなかった!
- 確かにそうだ!
- なんかグッときた…(感情が動いた)
こういった自分の内面の心と頭の反応をすかさず捉えよう。
そして、ここに傍線を引いた後にやるべき作業が2つある。
②そう感じた理由を言葉にしてメモする
なぜ自分はそこに「!」と反応したのだろう?
それは著者が語る文脈の中で出会った言葉に、あなたの文脈上の何らかの想いが反応したからだろう。
ただ、気をつけないといけないのは、僕らは日頃から大事だと思っていたこと、分かりきったことを再確認しただけで終わりがちということだ。
それは決して悪いことではないが、もったいない。
もっと表面的な意識でないところで反応できるセンサーを持ちたい。そして、その練習として、自分の「!」がどこから生まれて来たのかを観察する目を養おう。
- なぜここが「大事!」or「すごい!」「そうだね!」と思った?(自分の中の根拠、感覚の出所を見いだす!)
- そういう反応を生み出した体験とか考えとかある?(何となく、著者の主張、分かるわ…を卒業!)
- それは誰に伝えたい言葉?(それが「今の自分」にならない観点で反応したい!)
③「!」な一文を言葉レベルで再配置する
ここが編集的読書の第一歩。
自分が「!」と思った言葉を、自分の中の想いとか!の根拠を浮かび上がらせるつもりで言葉にしてみよう。
著者の言葉をそっくり借りてきて、単語レベルで自分の文脈上の言葉に置き換える作業だ。
例えば
依頼者の期待を超えない仕事は、そもそも仕事とは呼ばない。
千田琢哉著『一流の人だけが知っている、他人には絶対に教えない この世界のルール』より
この一文にグッときたとする。これを自分の文脈に移し替えてみる。このグッときた言葉を、自分の仲間やお客さんに伝えるなら、どんな言葉で語り直すだろう?
私の場合、読書指導だから…
読む前に設定した成果を超えない自己投資のための読書は、そもそも自己投資とは呼ばない。
どうだろうか?
本を読みながら、「これを別の文脈に載せるとどうなるだろう?」という視座の転換の練習と思ってトライして見て欲しい。
第1段階のメモのフォーマット例
本文に赤線(自分の「!」)
そう感じた理由:
思い当たる体験:
誰に伝えたいか:
再掲載:《編集型読書の4ステップ》
出発点:受け身の読書からの卒業
第1段階:「!」と思った一文を、自分の言葉で言い換える
次⇒第2段階:その一文の背後にある価値観・主張の「構造」を抽出して、自分の文脈に移設する
第3段階:「でもさー」「じゃーさー」で命題を揺さぶり、広げる
第4段階:自分の問いへの「応答文」としてまとめる
【第2段階】価値観+主張の「構造」を抽出して再配置する
「構造」と言われると「なにそれ?」と思ってしまうかも知れない。
まずは、先ほどと同じ千田さんの文章を拝借して具体例を見てみよう。
依頼者の期待を超えない仕事は、そもそも仕事とは呼ばない。
千田琢哉著『一流の人だけが知っている、他人には絶対に教えない この世界のルール』より
実はこの一文は、出典のタイトルからも分かるとおり「一流の人のものの見方・考え方、評価規準とはどのようなものか」について一貫して語っている。
この下地(地模様)の上に先ほどの言葉が乗っかっているわけだ。
これを踏まえて、新しい編集作業だ。
ここでは、直接的に著者の言葉をいじって書き換えるのではなく、主張の構造を見る──抽象度を上げて捉え直すわけだ。
【表面の一文】依頼者の期待を超えない仕事は、そもそも仕事とは呼ばない。
【背後にあるチャプターのテーマ】一流の人は、仕事と向き合うスタンスが違う。
【さらにその奥にある書籍のテーマ】一流と認められるには、普通の人と違う独特のものの見方・考え方を知る必要がある。
そこから、あなたが採り入れたい構造をいただいてしまおう。
例えば…
【パターン・その1】
テーマ:一流の人は、仕事と向き合うスタンスが違う。
主張:一流の人は常に、依頼者の真意を見抜き、その期待を上回る成果を上げ続ける。
【アレンジ】
読書を通じて成長し続ける人は、本と向き合うスタンスが違う。
彼らは、自分の期待する成果を明確に設定し、その期待値を上回るべく行動し続ける。
【パターン・その2】
テーマ:一流の人は普通の人と発想が違う。
主張:一流の人は仕事で一発逆転を狙わず、コンスタントに相手の期待を上まわる成果を出し続ける。
【アレンジ】
一流の人は普通の人と本の読み方が違う。
彼らは本から「すごいお宝」を得ようとするのではなく、何気ないヒントを受け取り、昨日の自分を超え続ける。
このあるテーマや価値観をベースにして主張するという「構造」は、書籍から読み取った内容であれば、どういう形でも問題ない。
大事なことは、著者の主張+テーマ(価値観)の構造をいただいて、自分の文脈に載せ替えてみること。
こういった作業を通じて、常に目の前に提示される文脈を、別の文脈に再配置しながら、その価値を確かめるという思考の習慣が発動されるようになる。
第2段階のメモのフォーマット例
本文に赤線(自分の「!」)
著者がベースにしている価値観(テーマ)
そこでの著者の主張
【第3段階】著者の主張から発想を広げる
文脈の再配置の第3段階として、「でもさー思考」「じゃあさー思考」を使って、著者の主張あるいは自分版の命題を検証する。
これは一見正しそうに見える命題(主張)に対して、ツッコミをいれる作業だ。
本を読みながら、微かな違和感を感じ取ったら、即座に「?」のフラグを立てて、緑色の傍線を引こう。
①でもさー思考で批判的にツッコミを入れる
著者の主張に対して「でもさー、・・・っていう考え方(例)もあるよね?」という反証例や矛盾する理論を提示するのが基本型だ。
もし、「?」の部分に対してあなたの中に、著者の主張と矛盾する事例があれば、それは次の3つのうちいずれかということになる。
- 著者の主張が間違っている。
- 著者の主著と、自分の見ている事例や意見とで、前提条件が違っている。
- 自分の持っている事例は著者の主張にとって「例外的な例(例外例)」である。
つまり、「でもさー」というツッコミを通じて、著者の主張の限界(適用範囲)や前提条件、場合によってはウソ(真偽)が見えてくるわけだ。
②じゃーさー思考で展開の可能性を確かめる
こちらは批判的にはならず、著者の主張が本当にどんな場合にも言えるのか、自分(あるいは他者)の文脈に置き換えるならどういう形になるのかを確かめるためのツッコミだ。
「じゃーさー、フランスだったらどうなんだろう?」
「じゃーさー、江戸時代にも同じことが起こったのかな?」
「じゃーさー、読書で考えたらどうなるんだろう(同じことが言えるのかな?)」
こういう具合に、条件(パラーメータ)を入れ替えながら、当てはまるかどうかを確認する作業だ。
僕らはついつい主語を大きくして考えがちだし、著者も同じように書いている可能性がある。
「国民のための福祉充実を」と言われたら、「じゃーさー、うちのじいちゃんはどうなるんだろう?」「じゃーさー、うちの父ちゃんだったら…」というように、抽象化された顔の見えない「国民」を、具体的な顔の見える、条件がはっきりした主語に置き換えるだけで、その限界も真偽も見えてくる。
日頃から思考のトレーニングとして、
- 時代を変えてみる
- 地域・場所・人を変えてみる
- 純粋に理論的に展開してみる
というパラメーターを入れ替える思考を発動できるようにしておきたいところだ。
【第4段階】自分の問題意識への答えを作ってみる
いよいよ最終段階だ。
第3段階までは、著者の文脈を拝借しながら、自分の文脈、その他の文脈に再配置するというものだった。
ここでは、著者の語るストーリーや主張をヒントに、自分の問題意識への答えを受け取るのだ。
例えば、私はAIが日に日に進化していく様子を目の当たりにして、2025年の初頭に(まさにChatGPTが大進化を遂げたのがきっかけだった!)
AI時代の読書は、これまでの読書と何を変えなければいけないのか?
その読書で何を目指すのか?
という問題意識を持った。
そこからAIに関する書籍や論文を幅広く読んでいったわけだが、それ以外の書籍やSNSでのやりとりからも、どんどん自分の問いに対する答えが集まってきて、このブログの連載に結実することになった。
基本的には、何か「!」と思った主張や命題から「じゃーさー、読書を同じように語ったらどうなるだろう?」というじゃーさー思考と、言葉を入れ替える第2段階の構造の再配置だった。
この時、第2段階・第3段階を応用して、
- 中心となる命題(主張)の自分の文脈への再配置
- 下敷きになっている価値観の置き換え
- 制約条件や適用範囲、例外の確認
こういった要素を抽出してみることをお勧めする。
第4段階の「自分の問いへの答え」の例
中心となる命題あるいは問いへの答え
その命題が成り立つ条件や限界(でもさー・じゃーさーからゲット!)
そこから導かれる行動・実践への示唆(未来への提言)
あらためて、なぜ編集型読書が必要なのか?
さて、4ステップで編集型読書について語ってみたわけだが、これがどういうものかおぼろげにでも見えて来ただろうか?
再掲載:《編集型読書の4ステップ》
出発点:受け身の読書からの卒業
第1段階:「!」と思った一文を、自分の言葉で言い換える
第2段階:その一文の背後にある価値観・主張の「構造」を抽出して、自分の文脈に移設する
第3段階:「でもさー」「じゃーさー」で命題を揺さぶり、広げる
第4段階:自分の問いへの「応答文」としてまとめる
ここであらためて「なぜ編集型読書が必要なのか?」を確認しておきたいと思う。
そもそもAI時代というのは、
- 情報が一瞬で手に入る時代
- AIが生成したコンテンツを中心に価値がありそうな情報が大量に(無料で)出回る時代
- 何かを知っていることの価値が薄れていく時代
- 現場を知り、自分の文脈を知った上で、インサイトを生み出す知性が求められる時代
こういう時代だ。だから読書を変えよう、ということだったわけだ。
AI時代に僕らが求めるべき読書は、次のようなものだ。
- ただ情報を読み取り理解するだけではない
- 自身の思考そのものをアップデートする
- 今まで持ち得なかった見方や考え方を手に入れる
- 暗黙知、未整理の知識あるいは感情・価値観などを明確な輪郭とロジックを持つ言葉にする
これを読書でのアノテーション(メモ)とAIとの対話を通じて強化していきたいわけだ。そして、これは野中郁次郎氏が語るSECIモデル(※)を、著者が共有してくれた知識やノウハウをベースに、個人内で実践していこうというものでもある。
つまり、目指したいのはこんな作業だ。
未整理・未言語化状態の
自分の感情・価値観・経験あるいは暗黙知とされるものを、
意識し、操作可能な言葉にする
別に今までの読書や多読が不要になったわけではない。
むしろ、大いに必要になってきている。でもさー思考もじゃーさー思考も、著者に戦いを挑むための材料がなければ成立しないわけだから。
ただ、ブレストも方程式通りの直観もAIがこなしてくれるわけだから、僕らが手に入れるべきは知識や情報ではなく、インサイトなんだ。インサイトというのは、ややイレギュラーな、無関係に見える情報同士が突然つながり、新しい解釈や解決策が浮かび上がる気づきだと考えればいいだろう。
だからこそ、日頃から方程式通り、公式通りの思考の枠を外れて、いろいろな情報同士を結びつける練習をしておこうというわけだ。同時に、この作業を通じて自分が言語化できていなかった感情や思考、体験といったものに言語化を通じて輪郭を与え結晶化しておこうというわけだ。
こちらのマトリクスは書籍から学んだことや、AIが提案してくれたことに対して、僕らがどのように受け止められるか(あるいは、発想・行動に結びつけられるか)を示したものだ。

大量の読書で手に入れた情報・知識を背景に、AIから提案されたことを統合的・文脈的に理解した上で、自分の現場から得た体験とそこで得た実感・思索、積み上げて来た論理が化学反応を起こすことで得られる「気づき」こそが、僕らがAIをパートナーとして活躍する上で求められる思考なのだ。
その練習を、野中郁次郎氏のSECIモデルに倣って、AIをパートナーとして読書の中で取り組んでいこう、という話が冒頭のこの図だ。

ぜひ、多読も熟読も、編集型読書も楽しみながら、AIを最強のパートナーとして自分を成長させていこう。
その第一歩として、常に3色ボールペンを片手に読書をしていこう。そして常に「じゃーさー」「でもさー」と著者に語りかける癖を付けてみよう!













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