あなたは、本を読むよりAIに聞いたほうが手っ取り早いと思ったことはありませんか?
この記事では、読書に苦手意識を持つ人が「読書を通じて何かを学ぶ」ための「学びのための読書のステップ」について解説し、「なんだ、やっぱり本を読んだ方がお得じゃん!」と思える読書力を身につける方法をお伝えします。
「ヒューリスティック」という言葉は耳慣れないかも知れませんが、とても重要なキーワードなので、しっかり理解しておきましょう!
結局は「読書力」が勝負を決める
AIが何でも教えてくれるんだから、もう本を読む必要ってなくない?──あなたは、こう思うかも知れません。
確かに、知りたいことはAIが教えてくれるかも知れません。
足りない観点もAIが指摘してくれるかも知れません。
でも──
あなたが知りたいことは、あなたの知っている範囲内でしか質問できません。
AIが教えてくれたことは、あなたが質問した範囲内のことだし、AIが難しいことを教えてくれたとしても、あなたの理解できるレベルでしか受け止められないのです。
結局のところ、AIに質問するためにも、AIが語ってくれることを理解するためにも「言葉」と「体験」で作られた【知識の受け皿】が必要なんです。
あなたも思い当たることがあると思のですが、
“10を聞いて100を知る人”
“1しか知ることができない人”
その格差を作るのは、知識と体験そして思考力。
それが「知識の受け皿」です。
これは間違いない事実です。
「体験」も非常に重要。
ですが、体験を観察し処理する解像度を決めるのも結局は「言葉」。「何に注目すべきか」という視点を把握し、それを分析するための規準(分析の観点)と基準(分析の指標)を表現する言葉を持っていること。「意識/知識のフィルター」という言い方もできるでしょう。そして、その言葉の細やかさが体験を記録する解像度を決めるのです。
AI時代こそ、あなたの言葉と思考力の真価が問われています。
そして、言葉と思考力を鍛えるには読書しかありません。
ぜひ、効果的な本の読み方を学び、知識の受け皿を大きく豊かなものにしていきましょう!
そもそもの基本となる「本の読み方」
実は、本を何となく読んでも、知識は身につきません。
その実感があるからこそ、読書法の本が売れるわけです。
ですが、せっかく「読書法の本」を読んでも、それ自体が身につかないという残念な事態が起こります。
それはあなたが悪いのではなく、そもそも「本の読み方」を教えない教育制度に問題があります。
学校では読書指導ではなく読解指導、それも「文法的な観点から細かく読み解く」、「心情を読み解く」作業が中心ですよね。
小説と説明的な文章の戦略的な読み方の違いを学ぶこともない…
そもそも20ページを越えるような超長文を読むこともなく…
社会で一番必要になる「何かを学ぶための読書(Read to Learn)」を学ぶ機会も皆無です。
本の読み方の3つの基本とは?
本を何となく読んでしまうと、理解できた気分は味わえても記憶に残らず、当然、アウトプットに結びつくことはありません。もちろん、AI時代の武器になるような知性も身につきません。
まずは「読書の3つの基本」について理解しておきましょう。
これらは国語の授業で学ぶ「短い文章の読解」との大きな違いです。
1.「本」は「章」の組み合わせで出来ている
⇒本・各章それぞれの論点と主張を把握すべし
本というのは、いくつかの「章」から成り立っています。この「章」というのは、それぞれが独立した内容になっていて、それらが組み合わさっています。
そして、本には著者が伝えたかった「論点」と「主張」があります。これは、著者が「どのような問いに答えようとしたのか」ということです。
例えば「読書」をテーマにした本はたくさんありますが、「なぜ、本を読んでも記憶に残らないのか?」という問いに答えるために書かれた本もあれば、「どうしたら、記憶に残せるのか?」という問いに答える本もあります。
この設定された問いこそが「論点」であり、それに対する著者なりの答えが「主張」なのです。
この主張を効果的に伝えるために、例えば
- 多くの人がはまる問題とは?
- 前提となる理論にはどのようなものがあるか?
- 効果的な本の読み方とは?
といった小さな「問い(論点)」を用意して、それに答えていくのが「章」なのです。
つまり章はそれぞれ独立した論点と主張を持ちつつ、全体として「本の持つ論点」に対する「主張」を形作るわけです。
これを何となくダラダラと通して読んでしまうと、章ごとの主張が整理されず「なんとなく著者の言いたいことが分かった気がする」くらいの理解で終わってしまいがち。
なので、本を理解し記憶する大前提として「章ごとの論点と主張を理解した上で、章と章の関係を把握する」ことが必要なのです。
章を読み始める時に、
この章が本全体のテーマや前の章と
どうつながっていそうか予想してみよう。
2.長い文章は「印象」だけを残して記憶から消えがち
⇒章が終わる毎に、頭の整理をすべし
あなたも、本を1冊読み終わった後に「いい本だった!」という感想と、全体的な印象は残っているものの、知識として活用できる程の記憶も、人に本の主張をロジカルに説明出来るほどの記憶も残っていないと感じているのではないでしょうか?
実は読書教育研究(教育心理学)でも「長い文章になるほど、理解したものが印象に置き換わって忘れ去られてしまうものだ」とされています。
そして、これを回避するには「章を読み終える毎に、内容の要約を作るか、数語のキーワードを思い出す作業が必要」とされています。これをリハーサルと呼びます。
章を読み終わるごとに、
この章はこんな内容だったな、
と振り返る癖を付けよう!
3.理解にはミクロとマクロの2つの方向がある
⇒フォーカスを明確にして2回読むべし
上記1, 2の内容ともつながりますが、書籍を読む場合「書籍全体の論の構造」あるいは「章全体の論の構造」というマクロ構造の理解が必要です。そして、マクロ構造を理解しようと思ったら、あまり細かなことに意識を取られてはいけません。
全体像をつかむための読書は、マクロ構造にフォーカスし、細かなことはさらりと流す意識が必要です。
詳細をつかむための読書は、ミクロ構造を的確にとらえつつ、一言一句を丁寧に処理する必要があります。
この両者は、かなり読書慣れした人でない限り、1度の読みでは共存させられないものなのです。
しかも、記憶の特性上、いきなり細かなことを憶えようと思ってもうまくいかず、最初はアウトラインを理解し、記憶に残すことにフォーカスして読むのが得策です。そこから丁寧に読み重ねるわけです。
最初に下読みする癖を付けて、
全体の構成と詳細な理解を
結びつけながら読もう!
手に入れるべきは「戦略的読書」だ!
ここまでに解説したような「読書の特性」を踏まえ、何となく読んでしまわず、自分が手に入れたい成果(知識の理解・記憶、思考回路のブラッシュアップなど)からのトップダウンで読み方を検討する癖をつけたいところ。
これを一言でいうと、手に入れるべきは「戦略的な読書」。これこそが、AI時代に求められる知性を獲得するために必須の読書スタイルなのです。
「戦略的」という言葉はビジネスの世界でもよく使われますが、目的が明確な場面で、使えるリソース(時間、資金、スキルセット、ツールなど)を場面に応じて選択し、より効率的・効果的に事を運ぶことを「戦略的」ととらえます。
時には最新の情報とケーススタディを獲得するために大量の書籍やウェブ情報を速読…
時には分析・理解のためのロジックを学ぶために学術的な書籍を精読…
限られた時間の中で、最適な読み方をコントロールしていく能力であり、読書スタイルです。
当たり前ですが、1つだけのシンプルな戦略で、すべての課題に対応できるものではありません。
その時々の、様々な課題に応じて適応させることができる広範な認知/メタ認知プロセスも、戦略的読書の一部といえます。
予測、イメージ化、解釈、理解モニタリング、要約、質問生成、精緻化、組織化/マッピングなど様々あります!
読書が苦手な人の課題
読書指導を受けることなく社会人になった方の多くは、読書に課題を抱えています。
例えば、以下のようなものが不足あるいは欠如していることが指摘されています。
- 文脈を正しく把握する能力
- 文章あるいは書籍のマクロ構造を把握する能力
- 重要な情報を見分ける能力
- 複数のテキストを対照しながら情報を選択・整理・分析する能力
- 効果的な読書戦略(戦術)のレパートリー
- 認知・メタ認知・感情的プロセスに対するコントロールスキル
- 「うまくやれる」という自己効力感
- 読んだことを実践につなぐべく情報を整理・加工する能力
などなど…。
科学的な読書法を学ぶことで、このような課題をクリアすることが可能なのです!
こうやって戦略的読書を身につけよう!
0.基本となる読書力
根本的な「読んだ文章を正しく理解する能力(読解スキル)」については、ただ読むだけでなく、外部からのフィードバックを受けることが必要です。
例えば、ある程度難しいと感じる書籍を丁寧に読み、読んだ内容について他者と意見交換をしたり、Amazonのレビューなどを参照したりするといいでしょう。自分の意見の正しさや誤り、偏りを知ることができます。
基本となる読書力を高めるために、次のような方法を採り入れることをお勧めします。
- 読む前に読書の目的を明確にしておく
- よく理解できなかった部分に緑の傍線を引く
- 章のタイトル、小見出しとの関係を常に意識して読む
- 前とのつながりを意識しながら読む
- 過去に読んだ本の内容や、経験的に知っていたことを思い浮かべる
- テーマが変わる毎に簡単なまとめを作る
文章を正しく理解する能力も、ぼちぼち磨いて行くとして、それと並行して「戦略的な読書」を学んでいきましょう。
具体的には、次のような2段階で学ぶことをお勧めします。
この2つを学ぶことで、広く、大量の書籍を軽々と自分のものにすることも、そこから自分ならではの知見と発想、そして言葉を手に入れることも可能になります。
1. アルゴリズム戦略
フォーカス・リーディングではPQRSストラテジーと呼ばれるアルゴリズム戦略(戦略的読書アルゴリズム Strategic Reading Algorythm とも呼ぶ)を学んでいただいています。これは書籍を次のような4つのステップで段階的に(ステップ・バイ・ステップで)学んでいこうというものです。
- Preview:下読み;書籍全体を俯瞰し、マクロ構造を把握することが目的,その本のおよその内容と読むべきポイントを確認するための下調べです。
- Question:問いの設定;自分がこの本から何を読み取りたいと思ったか、そのテーマについてすでに知っていることは何か、どのような読み方(フォーカス)で読めばいいかなどを自問自答しながら決定します。
- Read:理解読み;設定したフォーカスに従って、目的を達成するのに相応しい読み方で読み進めます。
- Summarize:まとめ+振り返り;書籍全体の内容を要約するつもりで内容整理をし、その後に再読します。
ちなみに、このPQRSを「Uプロセス学習戦略」という大戦略に沿った読書法として解説しています。


PQRS以外で有名なものとしてはSQ3R(Survey;下調べ, Question;問いの設定, Read;読書, Recite;想起, Review;振り返り)がありますが、学習の進行のステップはPQRSで説明したことと、ほぼ同じです。
アルゴリズム戦略を採用するメリットは、次のように整理することができます。
- 学習のステップが明快になるため、ある程度はパターン通りに進めることで効果的な学習が可能になる
- Previewでマクロ構造を把握し、Readで詳細な理解(ミクロ構造)を手に入れるというように、役割を明確にすることで、ミクロ・マクロのバランスが取れた記憶に残る読書が可能になる
- 各フェーズの目的がはっきりするため速読技術を組み込むことが可能になる
- 各フェーズにリハーサル(読んだ直後に思い出す作業)やリトリーバル(読んだ後に時間を置いて思い出す作業)を組み込むことで記憶に残りやすくなる(もともとのPQRSにはそのようなステップはありませんが、フォーカス・リーディングでは学習効果を高めるために、敢えて入れています)
ただし、パターン通りに進めることに固執してしまうと、状況に応じて自由にやり方を修正・調整することを忘れ、かえって効果的でない読み方にはまってしまう可能性があります。実際、難しい書籍は「型どおり」にはいかないことも多いものです。
また大学生を対象とした研究でも、学期の成績平均点(GPA)のようなざっくりとした尺度では改善が見られるものの、それが「読書戦略を採用したおかげ」という証拠は少ないとされています。また、指導を受けた学期を超えて、それ以降の学期でも成績が向上しているという証拠もほとんどありません。
面倒くさくなって使わなくなるのか、型が形骸化して効果的なものになっていないのか…謎です。
2. ヒューリスティック戦略
こちらは「型」というよりも、様々な文脈に適用できる広範な認知プロセスとして各フェーズの目標だけを明示しています。
Wikipediaではヒューリスティックを次のように説明しています。
必ずしも正しい答えを導けるとは限らないが、ある程度のレベルで正解に近い解を得ることができる方法である。発見的手法では、答えの精度が保証されない代わりに、解答に至るまでの時間が短いという特徴がある。「アルゴリズム」に対置する概念である。
もともとの英語の意味がこちら。
(学習者の)発見を助ける; 自発研究をうながす,発見的な.(Weblio)
代表的なものがPLANやPLAEといったパターンです。
- Predict :予測マップ作成;内容や構成の予測
- Locate:情報の分類・記録;既知・未知情報の特定、マーク付け
- Add:新情報の追加;書籍等を読んで新情報を追加
- Note:ノート整理;要約や振り返り、メモの作成・整理
- Preplan:事前計画;課題の内容を明確にし、取り組み計画を立てる。計画メモ作成など
- List:リスト化;必要な情報やタスク、既知の知識をリスト化
- Activate:活性化;既有知識を活性化し、疑問を立てたり、関連する経験を思い出したりする
- Evaluate:評価;学習の成果や理解度を自己評価。目的達成度や残った疑問を振り返る(ノート整理など)
実はPLAEには明示的な読書フェーズはありません。「List」や「Activate」の準備段階を経た後で、必要な情報を得るために本文を読む活動が行われ、読書ノートも必要に応じて作ることになります。
具体的な作業でいうと…
PLANもPLAEも表現が違うだけで、やるべきことは変わりありません。
- 学びたい(調べたい)テーマを明確にして、自分が知りたい内容を列挙しておく。
可能なら当たるべき書籍のリストを用意する。 - 用意した書籍を1冊10-30分など時間を決めて、その本から何を学べるか、他の書籍との違い、特筆すべきポイントなどをチェックしていき、簡単なメモを作っていく。
- 自分が知りたかったこと、出力したいことと照らし合わせて、内容の過不足があれば本を追加し、②の作業を追加する。その上で、必要と思われる箇所を中心にスキャニング(ポイントと思われる部分だけを丁寧に処理する読み方)し、重要箇所・気になる箇所に傍線を引いたり、考えたことを書き込んだりしていく。
- ②のメモと③の傍線部や書き込みを元に、アウトプットしたい形式でラフ原稿を作る。再び、目的に照らして過不足を評価した上で仕上げに取りかかる。
大学生のレポート課題なら…
ちなみに私がティーチングフェローとして大学の授業で読書法指導をおこなった時にはこういうステップを示していました。


ちなみに、PLANやPLAEのようなヒューリスティック戦略は、アルゴリズム戦略と違って、大学生を対象とした研究でもより良い成果を示しています。特にPLANについては、小学校から大学レベルまで幅広い学年で成績向上が報告されています(学術論文として)。
そのフェーズの目的だけを意識して、後はその目的と「手応え」を大事にしながら自由に学習を進めていく、というイメージですね。
まとめ
このヒューリスティック戦略の最大のポイントは「読む」という行為を形式化しないということ。
「読んだけど、よく分からなかった」とか「読んだけど憶えてない」というような、まったく意味の分からない暇つぶしの読書を捨て去る戦略とも言えます。
PLANの「Add+Note」のように「読んだ後の処理としてノートを作る」ことや、PLAEの「Activate+Evaluate」のように「読んだ内容を思い出してノートに整理し、その意味づけをおこなう」という非常に能動的な「読んだ後の価値」を大事にした戦略なのです。
このような戦略を身につけることは「自己調整学習(Self-Regulated Learning)」と呼ばれる、自分で設定したゴールに向けて、自分で目標との距離(達成度)を測りながら学習のやり方を工夫(調整)していくスタイルを身につけることにもつながります。
もし、あなたが「本を読んでも身についてないなぁ」という状態なのだとしたら、それは「ただ機械的に読んでいるだけ」だからかも知れません。これは「ゾンビ的読書」と呼ぶ、本当に無駄な作業です。
ただ読むだけのゾンビ的読書ではもったいない!
知る⇒理解する⇒処理・整理して記憶する
⇒活用する⇒成果を確認する


ここまでを戦略的な読書ととらえて、AI時代をサバイバルする知的武器にしませんか?
参考記事
ゾンビ的読書を乗り越えよう!というお話をこちらで書いています。よろしければ、参考にどうぞ。














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