読書の最中に「章のまとめ」を自力でした方がいい理由

イマドキのビジネス書(といっても2005年くらいからかな?)というのは、「章のまとめ」が添えられていて、読み終わった段階で総復習ができるようになっているものも多いものです。
 
速読講座でも、「スキミングした後で、まとめを読むと頭が整理される感じがあって、すごく楽です」という感想がよく出てきます。
 
しかし、書籍『フォーカス・リーディング』でも指摘をしたのですが、これはあまりよくないことなのですよ。それは…

学びのための読書には何が必要か?

ここでは「何かを学ぶための読書」に限定してお話をします。
その上での話なのですが、「学び」で求められるのは何かというと…

  • 知らなかったことを知る
  • 分かっていなかったことを理解する
  • できなかったことができるようになる
  • 今までとは違う考え方ができるようになる

そういった「読んだ後、何らか、読む前と違う自分になっている」ことが求められているはずです。
 
しかし、ここで問題があって、

「読んだ」という事実は、
「分かった」も「憶えた」も
「できるようになった」も保証しない!

という事実があるわけです。
 
あなたの学生時代を思い出してみてください。一度、教科書を読んだら、テストの応用問題が解けるようになったでしょうか?── なりませんよね?
時々、耳にしませんか? 「学校で学んだことは社会に出て役に立っていない」って。まぁ、それはウソだと思うのですが、次に列挙することは、あながち間違いではないと思うわけですよ。

  • 歴史を学んで、人名やら歴史的事件を知ったとしても、記憶に残っていなければ学ばなかったのと大差ない。
  • 歴史を学んで、人名やら歴史的事件を知ったとしても、その事実関係やら因果関係やらが整理されていなければ、知らないのと大差ない。
  • 数学を学んで、何かめんどくさい計算の仕方・手順を知ったとしても、問題が解けなければ学んでいないのと大差ない。
  • 哲学を学んで、偉人の思考や名言を知ったとしても、自分の人生でそれが活かされていなければ学んでいないのと大差ない。

そう考えたとき、本を読んだとして…

  • 人に要約とポイントを伝えられるほどに、読んだ内容がちゃんと整理されていない。
  • 3日経ったら、理解がぼんやりとしてしまって、あやふやになっている。
  • 1ヶ月経ったとき、読んだ内容は、日常生活のどこにも影響を与えていない。
  • 1年経った頃、本棚に並んだ本を眺めても、「読んだ」という記憶以上の情報が思い浮かばない。

こんな状況であれば、「読んでないのと大差ないよね?」と思うワケです。
 
普段の読書というのは、「読んだつもり」「分かったつもり」で終わらせてしまっている可能性が非常に高いのです。

読書「分かったつもり」問題とは何か?

本を読めば、誰しも「読めた」と思っています。分からないと思ったら、何度も読み返すでしょうし。
しかし、ここにはいくつかの「分かったつもり」の罠が潜んでいるのです。

1.自分の「分かった」は、実は「分かっていない」ことが多い

心理学の世界で、多くの研究者が指摘していることなのですが、

本人の理解できたつもりは、かなりテキトー

という問題があります。

Glenberg, A. M., Wilkinson, A. C., & Epstein, W. (1982). The illusion of knowing: Failure in the self-assessment of comprehension. Memory & Cognition, 10(6), 597-602.
Paris, S. G., & Myers, M. (1981). Comprehension monitoring, memory, and study strategies of good and poor readers. Journal of reading behavior, 13(1), 5-22.
Zabrucky, K. (1990). Evaluation of understanding in college students: Effects of text structure and reading proficiency. Literacy Research and Instruction, 29(4), 46-54.
ほか多数

本人なりに「分かった」と思ったことが、問われてみると意外と分かっていないぞ、と。
 
まー、そもそも日本人の半数以上が、難しい文章を読解できないという、いわゆる機能的識字率の問題もあるわけです。このあたりについては、新井紀子氏による『AI vs 教科書の読めない子どもたち』で散々指摘されたことですね。
 

2.「分かった」のレベルがあまり高くない

読んでいる言葉は理解できているのかも知れません。しかし、問題はその「読んでいる言葉が分かった」を越えたところに行けているかどうか、なのです。

2-i)書籍全体の主張・論理構造が理解できているか

「読んだ部分が理解できた」ことを積み上げていっても、書籍全体が理解できたことにはならないのが、文章理解の難しいところです。
いつも持ち出しているこれ。

この横軸ですね。

  • その本の問題意識(論点)はどこにあるのか?
  • その本が想定している読者は誰か?
  • その本の究極の主張はどういったものか?
  • その主張を支える論理(ロジック)はどのようなものか?
  • 今、「分かった」と思ったことは、全体の論の中でどのように位置づけられているものか?

こういった要素を理解することで、著者が苦労して自身の体験と知識を詰め込んだ知恵が、あなたの頭脳にインストールされるのです。
その世界観をまるごと飲み込んで、自分のものにしてしまいたいところです…が…そこまで「理解できた!」と言える人は少なそうです。

2-ii)自分の知識構造に取り込めているか

たとえば、「いい箱(1185)作ろう鎌倉幕府」── これを憶えることは簡単です。
ですが、

  • なんで「いい国(1192)」じゃなくなったんだっけ?
  • 何をもって「幕府」としてるんだ?
  • よくいう「武士の台頭」って、どういう経緯があったんだっけ?
  • そういえば、源氏って3代で滅んだけど、その後の将軍って誰がやってたの?(そもそもいたの?)

そういうところまで理解できるような学び方ができたら、それこそ、本当の意味で「分かった!」になりそうじゃありませんか?
 
歴史なら単なる教養かも知れません。「知っている」ことに価値がある、みたいな。
でも、自己投資として学ぶものであれば、表面的な情報・知識の奥まで理解できた上で、知ったことが、多方面で活きてくるというのが理想ですよね?

ここで必要なのは、単に「分かった」で終わらせず、元々持っていた知識や体験と結びつけたり、比較したりしながら、吟味する習慣です。
自分の既有知識と食い違ったり、類書などと矛楯したことが書かれていたりしないでしょうか。自分の持っている知識のネットワーク構造の中に、適切に位置づけられたとき、その知識は本当の意味であなたのものになったと考えるべきなのです。

「章のまとめ」の何が問題か?

「章のまとめ」の何が問題なのかという話が、そろそろ見えて来たかも知れません。
 
ここまで「分かったつもり」の話をしてきましたが、この「分かったつもり」を解消したいと思った時、何をしたらいいのでしょうか。
 
実は、それが「想い出して出力する」作業なのです。
心理学研究では、大人でも、自分の理解の程度は把握できていないものだけど、その内容についてテストを受けると(テストの結果を見るまでもなく)自分の理解の程度が確認できるという研究があります。

Pressley, M., & Ghatala, E. S. (1990). Self-regulated learning: Monitoring learning from text. Educational psychologist, 25(1), 19-33.

 
とはいえ、読んだ本のテストなんて自分で作るわけにも行きませんし、市販されているはずもありません。
時々、章のまとめの代わりに、章の内容に関する確認テストが用意されている書籍があります。それが理想。
 
だったら、章のまとめを自分で作ることがテストの代わりになり、自分の理解のレベルが確認できますし、全体の中での位置づけなどを確認するチャンスにもなります。
 
重要なことは、能動的に出力する機会を作ること。
これは学習ストラテジーでいう「リハーサル方略(rehearsal strategy)」であり「想記演習(retrieval practice)」として、曖昧な点を明らかにし、記憶を強化する効果が期待できるのです。
 
しかし、章のまとめが掲載されていることで、結局のところ、自分の理解の浅さや誤解などを確認することなく、「あー、そうだよねー」と分かったつもりを再生産してしまう可能性があるわけです。

こういう「章のまとめ」を作ろう

そういうわけで、「残念な理解の状況」を打破してくれる可能性が、「章のまとめ」にはあるわけです。
 
そもそも「章」ごとに、いちいち「まとめ」を作るのには理由があります。
それは、「章」には、それぞれにテーマと論点(問題意識)が設定されており、章の理解を確かなものにすることが、書籍全体の理解を構築することにつながるからです。
 
もちろん、その大前提として書籍のテーマ、問題意識(論点)」を明確にしておく必要があることは言うまでもありません。
書籍全体で何か1つのことを主張するために、すべての章をつかってロジックを構成しているのです。その大きなロジックを理解するためにも、基本パーツとしての章を確実に理解しておこう、というわけです。
 
ということは、

(1)章の論点とロジックを明らかにしよう!

これが理想的なまとめ作りの第1の条件です。
 
そして、

(2)書籍全体のロジックが見えてくるように、
章と章のつながりを確認しよう!

これも重要です。
 
もう1つ。

(3)もともと知っていた知識や類書の情報などを書き加えよう!

これによって、書籍からの学びが、あなたの知識構造の中に位置づけられ、活きた知識になる可能性が高まります。
 
さらに、学習効果を高めるための条件として、

(4)読んだ後、書籍を見ないで思い出しながらラフに書き出そう!

もちろん、見ないで書くのには限界がありますよね? でも、それで「直後ですら、ちゃんと思い出せないレベル」であることを自覚できるわけです。
その上で、

(5)再度、通読した上で、またノートに書き足そう!

「想記+再学習」というタッグは脳の記憶構造を変え、記憶を強化する効果が期待できるのです。

Tay, K. R., Flavell, C. R., Cassini, L., Wimber, M., & Lee, J. L. (2019). Postretrieval relearning strengthens hippocampal memories via destabilization and reconsolidation. Journal of Neuroscience, 39(6), 1109-1118.

コーネル・ノートをベースに作ってみよう!

ここまでご紹介した「章のまとめ」を、1冊読み終えた後、もしくは章ごとにおこなうのが理想なわけですが、その際に、フォーマットがあると便利です。
フォーカス・リーディング講座では、Cornell Note Takingという手法を、読書用にアレンジしたものを活用しています。

これはCornell Universityの教授が1940年代に開発したものであり、世界中で活用されているノートフォーマットの代表的なものの1つです。

ノートの説明(クリックで拡大)

読書メモのPDFダウンロード(クリックしてダウンロード)

読書メモのサンプル

書籍ではなく、短い読み物のまとめですが、どのような書き方をしたらいいかが理解できるでしょう。
(大学の授業で学生さんに課題として書かせたものです。)

※クリックすると拡大されます。

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よろしければ、こちらの「読書ノート」についての記事もどうぞ。

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