科学的な速読技術を学ぶ電子書籍好評発売中

速読トレーニングの成果が上がらない時の強力な打開策

速読というのは、突然、今まで読めなかったものが猛烈に速く、高い理解で読めるようになる…などという魔法のようなものではありません。

もし、あなたがそんな妄想を煽る速読に挑戦しているなら、そろそろ夢から醒めることをお勧めします。人間の能力というのは、そんな簡単に引き上げられるものではありませんから。

とはいえ、読書スピードを確実に高めるための、「科学的に確かな策」はあります。ご安心を…。
ということで、その科学的に正しいスピードアップ策をお教えいたしましょう!

目次

速読のスピードはどうやって生み出されるのか?

基本的に速読の速さとそこで得られる理解は、次の式で表現されます。

速読スキーマ(読書の経験値)
×心身のコントロール技術
×フォーカス

もともとの読書力スキーマ)があって、その読み方の効率を高めるために、集中力を高めたり、視野を使いこなす練習をしたり、音に頼らない読み方を探ったり…そういった心身のコントロール技術をトレーニングによって高められると速読が身につきます。
その上で、フォーカスを定めることにより、読むスピードのコントロールが可能になるのです。

別に読書経験値が低いと速読がマスターできないということではありません
実際、読書が苦手な小学校4年生の子が、子ども速読教室に連れて来られた場合でも、30分ほどのトレーニングを週1回ずつ、2ヶ月ほど(合計8回程度)おこなうことで、1ページ9秒ほどの速読を身につけてしまいます。

ただ、もしあなたが自分の今の読書力を超えたレベルの書籍に挑み、知性を高めていきたい、あるいはそういった高いレベルの本を速読技術で軽やかに読みこなしたいとお考えなら、3ヶ月程度かけて基礎的な読書力を高めるトレーニングをしてみてください。

本当の意味で高いレベルの速読技術を使いこなすには、心技体の「体」としてのスキーマ、すなわち読書力がある程度充実していなければならないのです。

経験値不足を補うには?

今より高いレベルを目指す…ということ以前に、元々読書経験値が不足している自覚があって、そこを補うことで高いレベルの読書を身につけたいということであれば、読書力充実は速読に挑戦する前に必須の課題です。

ちなみに「読書経験値が不足している」というのは、およそ次のような条件に該当する人だとお考えください。(絶対的な基準ではありません)

  • 15歳~22歳(高校から大学)までの7年間で100冊の小説、新書、エッセイなどを読んでいない。
  • 社会人になって、ここ3年間の読書量(1冊読み通した冊数)が30冊未満。
  • 社会人になって、名著・名作と呼ばれる本の読書数が年間3冊以下。

資格のテキストは読書の経験値に含まれるか?

時々「本は読んでいませんが、資格試験の参考書はかなり読み込んでいます」とおっしゃる方がおられますが、それは残念ながら読書力の足しにはなりません仕事上の書類を読んでいるなんてのもそう。

読書というのは、資格のテキストや仕事上の書類の処理で求められるような、単なる「情報の処理」ではありません。
一方で言葉を読み解き、言葉どうしの関係を紡いでいくというミクロレベルの読解作業をします。またその一方で、大きなストーリーの展開を構築していくマクロレベルの読解・理解構築作業をしなければなりません。

もちろん、読書経験が豊富な人であれば、それらの作業を自然体、無意識にこなせます。
しかし、それが「自然に」できない人は、意識して丁寧にその作業をしていかなければならないというわけです。

ということで、その読書経験値を補うためにお勧めのトレーニングをご紹介しましょう!

読書スピードアップ!重ね読みトレーニング

このトレーニングは2系統あり、それぞれ狙う効果が異なります。
あなたに必要と思う方を選んでおこなってください。もちろん、両方を並行しておこなうとさらに効果的です。

その2系統とは…

  1. 言葉の意味の理解と、言葉どうしのつながりの把握する力を高めて、滑らかに読み進める力を高める(ミクロ構造の読解力
  2. リラックスし、視野を緩めた状態で読み進め、全体的な「流れ」を把握する力を高める(マクロ構造の読解力

では、それぞれのトレーニングを紹介していきましょう。

1.ミクロ構造の読解力アップ

用意する書籍:岩波新書

あなたにとって、ちょっと歯ごたえのある本を1冊。お勧めは岩波新書です。
興味が持てそうな内容、少なくともそのジャンルについての基本的知識を持っているものを選んでください。

クリックすると岩波新書シリーズ

なぜ「岩波」新書か?

文字の密度の高さ、教養としての適度な専門性などを考えた時、岩波新書(の赤)が負荷をかけるのにもっとも適切だと考えています。
2000年前後までであれば、岩波の赤ってちょっと軟派なイメージがあったのですが、こういう時代になってしまうと、これでもかなり「ヘビー級」扱いにしていいのかなという印象です。
ただし、あまりに読書経験が少なすぎて岩波新書だと途方に暮れる…orz…という場合は、読みやすいビジネス書や小説を使っても問題ありません。
その場合は半年ほどかけて、徐々に本のレベルを上げていき、最後の2ヶ月で岩波新書に持ち込みましょう。

取り組み方

①丁寧に読む

章のタイトルから始まる区切りのいい範囲(最小2ページ程度でOK)を、まず丁寧に読みます。
単に読んでいる言葉の意味が分かるというだけでなく、その範囲で何を言いたいのかが理解できるように読みます。立ち止まったり、戻ったりして問題ありません。
設定した範囲を読み終わったら、かかった時間を計測して記録しておきましょう。

もし意味が分からない部分は、その部分に緑で傍線を引き、付箋を横向きに貼った上で流しましょう。読み終わった後で誰かに質問するなどして解消しましょう。

②同じ範囲を読み直す

同じ範囲を読み直します。
一度、丁寧に読んだ範囲ですので、それほど難しくないでしょう。できるだけリラックスして読むよう心がけます。もちろん、意味が十分に理解できて、流れも把握できるような理解が得られるように読みます。
ここでも時間を記録しておきましょう。

③さらに同じ範囲を読み直す

前の2回よりもリラックスし、視野を緩めて読むことを心がけます。
もし、あなたがページスキャントレーニングや内声化抑制トレーニングに取り組んでいるなら、その読み方を活かせないか試すのもいいでしょう(くれぐれも無理は禁物です)。

③1ページ8秒で読めるまで、何度も同じ範囲を読み直す

3回目以降は、さらにリラックスして、受動的な気持ちで、3回かけて読んだ内容を確認するぐらいの気持ちで流していきます。もちろん、理解できている実感を損なわないように注意したいところです。

実際に試した人は…

実際にこのトレーニングを試した方の実例をご紹介します。

試した方:40代男性・読書の苦手意識強
試した本:標準的なビジネス書

最初は、1ページあたり20秒かかって、理解度は「低め」でした。
そして、22回も繰り返し読んで、ようやく8秒をクリアできました。理解度は「いつもより少し軽いくらい」でした…。

毎日やることで、徐々に「リラックスして、視野を緩めて読む」感覚が身についてきて、10日ほどで1ページ9秒の質の高い読書が手に入りました。
スピードや理解度を得るための方法が自分の読書とは正反対の方向にあったので、この2週間で読書に対する考え方がガラリと変わりました。「読むぞ!」という意識を捨てることこそが速読の扉を開くカギだったとは、いかにも盲点でした。

この男性は3日間講座で速読をマスターすることができず、事後2週間の読書演習で速読をマスターなさいました。(さらに5年後に再受講して、新書も1冊15分ほどで読めるようになっていらっしゃいます。)
そして、本当はもっとハードなトレーニングをなさっています。
実際のサポート画面はこちらでご覧いただけます。
桜井さんのサポートページ

学術的な根拠は…

このトレーニングは読書教育研究では非常に有名なrepeated readingという手法をベースにしています。(クリックすると論文のPDFにジャンプします。)

2.マクロ構造の読解力アップ

続いて、読書の理解のうち「およその流れ」や「概要」を把握する力をつけるための練習をご紹介します。

使用する書籍のレベルの考え方

こちらは、あなたにとって読みやすいと感じる書籍(下の表の「自分がよく読むレベルより1-2段階下)からスタートし、少しずつ書籍のレベルを上げてみてください。

その際、次の表を参考にして、文字の密度や内容から書籍のレベルを判断してください。

画像をクリックすると、PDFファイルが表示されます。

取り組み方

①丁寧に読む

章のタイトルから始まる区切りのいい範囲(章まるごとが長ければ、10ページ程度で区切りのいい範囲)を、まず丁寧に読みます。
単に読んでいる言葉の意味が分かるというだけでなく、その範囲で何を言いたいのかが理解できるように読みます。立ち止まったり、戻ったりして問題ありません。

やはりかかった時間を計測し、記録しておきましょう。

②何度も読む

ページスキャントレーニングの視野や内声化抑制のトレーニングで得られた感覚があるなら、それを使うつもりで、リラックスして視野を緩めつつ読み進められるようにします。
やはりかかった時間を記録しておきましょう。

③1ページ6秒で読めたらクリア

徐々に視野の流れを整え、1ページ6秒の読み方を探りましょう。
決して、1行1行目が上下運動するような読み方にはならないと理解してください。およその視野・意識の流れを図解すると下のようになります。

刷毛は縦長に作った視野のイメージ。色の濃い部分は明瞭に見えている領域。薄い部分は俯瞰する視野でとらえた領域を表現しています。

④ここまでで得られた感覚を使って新しい範囲へ!

③までで楽に読む感覚がつかめたところで、その感覚を使って新しい範囲を気楽に読んでみましょう。
この①から④までの反復によって、視野のゆるめ方を探っていきましょう。

⑤章が終わったらリハーサル!

章全体を読み終えたら、そこで「章のまとめ」をおこないます。
もし日をまたいで読んだのであれば、章の最初から最後まで通して読んでから取り組みましょう。

章のまとめとは、その章では、どのようなことを主張していたのかという要約作りです。
もし、要約を作るのが難しければ(普通は難しいと思います)、その章のキーワードを3-5つ書き出すだけでもOKです。

このように、読んだ直後に、その内容を思い出す作業を「リハーサル」と呼び、読書の理解と記憶を確かなものにする上で非常に重要な作業です。

リハーサルの効果に関する学術論文は…

書籍の理解および記憶を促すには「要約が最も効果的」とされますが、「それは大変だから、3-5個のキーワードを思い出すだけでも効果がある」という研究があります。
出典論文は…見失ったので(苦笑)、見つかり次第、修正投稿しますね。(^^;

最終的には3回の重ね読みで完読!

実際のフォーカス・リーディングでは、次のような3回の重ね読みでミクロ・マクロの理解両面から理解するように読み進めます。

1.Preview:下読み

マクロ構造の把握にフォーカスして、1ページ3-6秒ペースで読み進めます。
章が変わるごとに立ち止まり、章の内容を思い出す作業をして、全体の構成を把握するように努めます。

2.Read:理解読み

Previewで全体像を把握した上で、丁寧に読み重ねていきます。
やはり章が変わるごとに立ち止まり、細かな内容と全体の構成の両面の理解を整理しながら読み進めていきます。

3.Summarize:振り返り

下読み、理解読みで2回通して読んだ後に、一度、内容を軽く思い出しながら理解を整理していきます。
フォーカス・リーディングではコーネルノートと呼ばれるノート法に従ってノートを整理していくことをお勧めしています。

その上で、全体の流れやポイントの整理、あるいはノート作りの際にうまく思い出せなかった部分を補うような意識で全体を通読します。

この3つのステップを図で表すと次のようになります。

速読トレーニングとセットでどうぞ!

以上、読書スピードに伸び悩んだ時の打開策、あるいは速読トレーニングに取り組む前の準備としておこなっていただくと効果的なトレーニングをご紹介しました。

ぜひ、コツコツ取り組んで高い速読スキルを手に入れましょう!

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