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学んだ内容を憶えられないのは歳のせいでも遺伝のせいでもないよ、というお話

寺田

何か学習上のお悩みはありませんか?

…という具合に、メールマガジンで投げかけをしたところ、私(私=50歳)と同じか少し上の年齢の男性から、しかも3人の方から異口同音に、こんなご相談が届きました。

お悩みさん

歳のせいか年々、記憶力が落ちているようで…
内容が膨大なのもあって、挑戦している資格試験に、何年やっても合格しそうにないんですよ…。

まぁ、悩みとしてはよくあるタイプのものでして、特に驚くことではありません。
が、科学的な観点でいえば、記憶力が歳のせいで衰えるというのは勘違いなんですよ。
 
むしろ、記憶は年齢が高い方が有利と考えるべきなのであって、成果が上がらないのは、単にやり方がまずいだけ。
 
問題は、「試験に合格できない」というだけではありません。
正しい学習手順とやり方を学んでいないと「いくらがんばってもダメだ」というネガティブな暗示が年を追うごとに積み上がり、自信をどんどん失ってしまうこと。これはとても残念なことですし、是が非でも避けたいところです。

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とある40代女性の悲劇からの突破劇

もう、数年ほど前のことですが、同じように「歳のせいでしょうか…涙」と相談してこられた女性がいらっしゃいました。
看護系短大に入学したものの、18歳の同級生が楽勝でテストをこなしているのに、自分は単位を落としまくり、進級できそうにない、と。

悲観女性

どれだけ紙に書いても憶えられないんですよ…

そう訴えて、指導を受けにこられたのは、大量の追試験(水曜日)が目前に迫る週末。そこで、5分ほど学習法(高速学習メソッド)のレクチャーをさせていただき、あとはひたすら自習をしていただきました。

寺田

憶えたい用語は紙に書いたらダメですよ。問題を隠して空で想い出すだけ。想い出すのに使う時間は3秒以内です。

その結果、その方は全教科(確か9教科だったかと)の追試験に合格し、その後も順調に単位を修得して卒業。無事に看護士として働くことになったそうです。

「勉強できない!」も「勉強したくない」も、やり方が悪いだけかも?

もちろん「人(状況)による」ってことは重々承知していますが、「勉強ができない」という事例の多くは、勉強の正しい取り組み方を、誰も指導してくれなかっただけなんですね。
 
そして、それが小中学生の場合、往々にして「家では勉強しないんですよ」とか「やってもできないんですよ」と、親にも呆れられ、諦められている場合が多いんです。そして、本人もあきらめてしまうんです。
 
でも、勉強のやり方を知ることで、やった分だけ成績がアップし、勉強が楽しくなります。そうすると、自宅でも勉強するようになるんです。
 
自己効力感というのは、勉強へのモチベーションを作る非常に大きな要因なのです。

危うく可能性を閉ざされかねなかった小学生の場合

これまでに「勉強ができない」「やっても成績が上がらない」というお子さんを多数お預かりしてきました。
全員が完全に勉強にできるようになったわけではありません。私の力が及ばなかった例もありました。

しかし、一つ言えるのは「単にやり方が間違っているだけで、人生で大損している子が多すぎる」ということ。 
数年前ですが、「学習障害らしい」という判断で(詳しいことは忘れましたが、医者の診断とかではなかったような…)、特別支援学級で学んでいる小学生(3-4年生だったと記憶しています)の指導を、1ヶ月ほど引き受けたことがありました。

「これ、できるかな?」──「できない…」
何をやらせようとしても、「できない」のヒトコトが返ってきます。
親御さんも「発達障害というものでしょうけど、漢字や計算はまったくできません。」と、残念そうに話してくれました。
 
しかし、その子のペースに合わせて学習を進めつつ、無理なくやれそうな方法で漢字や計算に取り組ませたところ、一時間後には普通に漢字を書いたり、計算したりできるようになりました。
 
初回は漢字を数文字だけ。3回目の授業の時には、一度に12文字の漢字を憶えて書けるようになりましたし、読めるようになりました。
それからは「勉強が楽しい!」と笑顔で話すようになり、自宅でも一人で勉強できるようになったそうです。(今は中学生になっているはずですが、勉強がんばってくれてますかね…)

もし、本人も、親も、学校の先生も「この子は発達障害だから勉強はできない」と思い込んで過ごしてしまったら?
ちょっと恐ろしくなりますよね。

いつからでも、勉強の遅れは挽回できる!

「歳のせいかな・・・」と諦める前に、学習法を学んでみてください。

お子さんの場合、「勉強しなさい!」と叱る前に、正しい勉強法を学ばせる。
「うちの子はこんなもの」と諦める前に、正しい勉強法を学ばせる。
 
ただし、気をつけないと「一見すると正しそうに見えるけど、ほとんど効果の上がらない勉強法」というのも存在します。

  • 大事なところには、蛍光ペンでハイライトする
  • 大事な用語や単語/漢字は何度も書いて(あるいは、何度も口に出して)覚える
  • エビングハウスの忘却曲線に従ったベストなタイミングで復習する
  • 5感をフル活用して、何度も書いて覚える・口に出して覚える
  • VA(R)K理論に基づいて、個性にあった学習法を採用する
  • ラーニング・ピラミッドに基づいて、「読む学習」より「教える学習」を採り入れる

これらは、どれももっともらしく語られ、多くの教育者が使っていますが、どれも「神話」(都市伝説)として否定されるものです。
こんな間違ったやり方を信じていたら「がんばってもムダ」という悲しい信念にとらわれてしまいます。

そういう勉強法を信じてしまうと、「なんで、効果的って言われている方法で勉強しているのに成果が上がらないんだろう?」って、自己効力感を下げてしまいかねません。

「正しい学習法」とは何か?

上記のような「一見すると正しそうに見えるけど、ほとんど効果の上がらない勉強法」は、一部の学習者や指導者が感覚的に「これが効果があった!」と思ったというだけのこと。実際の効果については、その後の科学的な研究の結果否定されているわけです。
 
どうしたら記憶に残りやすいかというのは、人により、対象により様々ですが、それでも最新の心理学や脳科学、認知科学的な研究から、ある程度の「誰にでも有効な学習法」は明らかにされてきています。
例えば、有名なところで言いますと…

  • 学習した内容を、一定時間を経て思い出す「想起演習retrieval practice)」
  • 復習は、すぐにおこなわず、ある程度の時間を空けた方が効果的だとする「分散効果spacing effect)」
  • 一つの教科や単元を連続しておこなわず、複数のものを組み合わせておこなう「ランダム学習(interleaving)」

こういったものが挙げられます。こういった科学的な知見については、教育に携わる人は学んでおかなければなりません。

科学的な研究結果が、絶対に正しい訳でもない…?

ただ、そういった最新の科学的知見に基づく学習ノウハウでも、注意が必要です。学習指導の経験がなく、単に論文の結果だけを見てノウハウをまとめたもの(例えばDaiGo氏の書籍や、それを孫引きしたブログ記事など)ですね。
 
科学的な研究に基づいて示された結果であっても「ある条件の下で効果が上がった」という例に過ぎません。
ランダム学習が効果を発揮する条件もあれば、ブロック練習(同じ内容の反復練習)が効果を発揮する条件もあります。
分散効果を得るために空けるべき時間(間隔)も、学習内容によって様々です。例えば…

初めて学ぶフランス語の単語や難解な専門用語 と 言葉そのものは知っているけど、気にしたことがなかったトリビア系知識 とでは復習のタイミングも、反復すべき回数もまったく違います。

具体的には、

日本で一番高い山は富士山ですが、二番目に高い山は何ですか?

という、よくあるトリビア系クイズであれば、一度学んで「あー、そうなんだ」と思ったら、次の復習は数ヶ月後でもいいんです。
 
それに対して、

数分後に想い出しても想い出せないような、つづりそのものが難解な外国語の単語

などは、5分ほどの間隔を空けて、何度も復習する必要があります。そして、数分おきに、連続して6回程度正答できるようになったらひとまず第一弾終了。
その後は、1週間後くらいに同じように復習します。これでも何割かは忘れているもの。それを補って、次は1ヶ月後…という具合です。
 
そして、ある程度の習熟状態が得られるまでは、インターリービング(他の学習や練習を差し挟むこと)はしない方がいいと考えるべきなのです。
 
このトリビア系知識と難解な外国語の単語の例を両極端ととらえて理解し、あとは自分の手応え・実感を元に、反復の回数や復習のタイミングを試してみなければなりません。指導者であれば、紋切り型の指導をしてしまわず、どういうパターンの時にはどういうやり方が適切か、子どもたちの反応(学習の成果・結果)を見ながら判断していかなければなりませんね。

学習法を学びつつ、自分の手応えを見て柔軟に応用しよう!

「正しい学習法を知る」という場合、次のように考える必要があります。

  • 科学的な研究に基づく知見から導かれたノウハウを学ぶ。
  • そのノウハウが適用できる条件は何か調べる。つまり「いったん保留」とする。
  • 条件が調べられない場合は、とりあえず試す。
  • 学習(あるいは指導)した手応えから、そのノウハウを見直す。

気をつけなければならないのは、学習系ハックをうたうブログです。
医療・健康系のブログは散々叩かれて消えていきましたが、学習系は無責任な記事を垂れ流しながら、広告料を荒稼ぎしています。科学論文や様々な書籍からノウハウとかき集めて記事にしているものは要注意です。

本人が研究しているわけでも、論文を読んで試してみたわけでもない、単なるライターが記事を書いている場合、多くの場合、見当違いな内容になってしまっています。

これは書籍でも同じですが…(最近読んだ本でも、「科学的にも分析され、「VAK理論」として体系化されています。」と堂々と書かれていました…)。

なので、ひとまず信じてやってみることは必要ですが、もし「うまくいかないなぁ」と思ったら、やり方を再確認し、場合によってはさっさとやり方を変えた方がいいかも知れません。

勉強法に悩みがあるなら…

もし、今やっている勉強法に壁を感じていたり、やり方がよく分からなかったりといった問題を抱えているなら、気軽にコメント欄でご質問、ご相談ください。
動画やブログ記事の形でお答えしますので。

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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