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「VAKの優位タイプに合った学習スタイルが効果的」は本当か?(ウソでした…)

VAK理論をご存じでしょうか?
人間の持つ認知特性を上手に活用して、勉強法を工夫しようというものです。V;Visual(視覚タイプ)、A;Auditory(聴覚タイプ)、K;Kinetic(体感覚タイプ)の3つの感覚タイプがあり、自分に合った勉強法を採用することで効果が上がりますよ、と説明されます。最近読んだ本では『ムダな努力を一切しない最速独学術』という本で、学術的にも証明されていて体系づけられている…などと説明されていました。

実は、これまったくウソです。

このVAKという概念は1980年代に提唱されたもので、KolbやHoney & Mumford、Felderといった学者らが学習フレームワークとして整理しています。もともとGardnerという学者が提唱した「Visual-spatial(視覚空間的知能)」「Verbal-linguistic(言語的知能)」「Bodily kinesthetic(身体的知能)」という3つの知能(intelligence)に沿ったものとして展開されたようです。

先に挙げた書籍の著者も、そういった学説をよく検証せずに盲信し、まんまと一杯食わされたのかも知れません。
何しろ、もともとエビデンスに基づいたものとは言い難い上に、現在ではその説明すら無茶苦茶になっています。「Visual(視覚的)」の説明に「単語帳を使う」という全然ビジュアルじゃないものを入れて説明された例も見られます。
 
なにしろ科学的には「学習法神話」と呼ばれるものの一つとされています。「効果を誰も確かめたことがないのに、多くの人が信じてしまっており、教育の現場でも使われることがある」というものです…(苦笑

学校教育の中でも、こういった「学習法神話」(私は学習法都市伝説と呼んでます)はいろいろありまして、

  • 音読して憶える
  • 漢字や英単語を何度も書いて憶える
  • 教科書の重要な箇所にアンダーラインを引く

このあたりが「みんなやってるけど効果の上がらない学習法の代表選手」といっていいでしょう。

あなたも、何かの勉強に取り組んでいるなら、きっと学習ノウハウを語る書籍や講座で「学習法」を学んでことがあると思います。ですが、最初は「お、これはスゴい!」と思ってやってみていたのに、結局、それほど効果を感じることなくやめてしまrった方法も多いのではないでしょうか。実は、それこそが神話・都市伝説だったのかも知れません。

科学的に正しい方法を学んで、効果の上がる勉強を積み上げていきましょう!

目次

VAKの何が問題か?

問題は「学習者の好み」と「学習効果」を同列に論じてしまっており、しかもその効果を科学的に検証することなく「好き=ストレスなくやれる=効果的」と考えてしまっていることです。
ですが、科学的な研究を見ると、VAKの好み・得意不得意に応じて学習方法を変えても、学習効果が上がる事実はまったく見られていません

好みと効果は別問題!── この単純な事実を見ずに、指導者の盲信によって、「これこそ、あなたにぴったりの方法です!」的に提案してしまうことこそが問題です。もっと効果的な学習法があるのに、それをスルーしてしまう可能性があり、学習効果が上がらなかった際に何が問題なのかが分からなくなってしまいかねません。

寺田

ちなみに、先ほどの「Visual」の学習法として「単語リスト」を出すのは間違いと指摘しました。これはAuditoryのタイプに含めるのが妥当だと考えられます。「Auditory」の元になっているのは「Verbal-Linguistic」なのです。
通常、Visualとしては、映像学習やイラスト、マインドマップ、概念図など、あくまでビジュアライズされた教材やビジュアルなノート作りを指します。
ちなみに、さすがにVAKという3区分は雑だろう…と指摘する学者や先生らは、VARKとして「R:Read/Write(文字の読み書き)」を挿入することで、単語リストやテキスト学習を独立させています。

VAK理論を科学的に検証したところ…

こちらの論文では、「Visual」タイプの学生と「Auditory」タイプの学生を比較した研究の結果が論じられています。

結論としては「学習タイプ(論文中ではLearning Style)はまったく効果的とはいえなかった」とされています。

V/Aの好みと学習効果

面白いことに、視覚優位タイプの学生も聴覚優位タイプの学生も、視覚系の学習タイプの方が記憶テストの結果が高かった(2倍くらいのスコア)ことも示されています。
また、聴覚タイプの学生が視覚学習をした時のスコアが一番高く、視覚タイプの学習者の聴覚学習スコアは、聴覚タイプの学習者の聴覚学習スコアより若干高い!
つまり、効果がないというより、逆効果があったという結果だったわけです。(笑)

以下の論文でも指摘されているのですが、学び手にとって快適に学習が進むような条件を、指導者が考えるのは非常に素晴らしいことなのですが、科学的な根拠もなく感覚・経験に基づいて指導したり、あるいは「みんながそう言っているから正しいんだろう」という盲信によって指導してしまうと、学び手の可能性を奪ってしまうことにつながりかねません。

何か最もらしい話を聞いたら「それは本当か?」とエビデンスを確かめる習慣を身につけたいものですし、そもそも何より、目の前の学び手の可能性を信じて「このやり方で思ったように成果が出ていないとしたら、やり方がまずいのではないか?」と指導法を問い直せる思考回路、「もっと高いレベルの効果を引き出せるのではないか?」とさらなる改善を探求する思考回路を持ち合わせたいものですね!

効果的な学習法は…!

ちなみに、VAKのいずれに関わらず、視覚系学習と聴覚(言語)系学習とをミックスして学習するのが非常に効果的という結果が、先の論文では示されています(Dual Codingという言葉で表現されています)。

そして、その学習が「記憶」に依存するものであれば、現在もっとも有力だと考えられているのが「retrieval practice(想起トレーニング)」です。入力はデュアル・コーディングでおこない、記憶に残す仕掛けとしてリトリーバル・プラクティスを採用するのが理想といっていいでしょう。

このretieval practiceは難しいコツも何も要らない非常にシンプルな学習法です。
DaiGo氏の学習ノウハウ書にも紹介されていましたので、知っている人も多いのではないでしょうか。

ただ、コツも何も要らないのですが、エビングハウスの忘却曲線のような科学的にはあまり意味のないことを根拠に、あやまった反復学習のノウハウも生み出されており、そういったものに惑わされてしまって、効果の上がる学習ができていない人も多そうです…。

科学的に正しい学習法というのは非常にシンプル。
ぜひ、妙な、もっともらしい都市伝説に惑わされず、正しい学習法を学んでください…!

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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