僕らはなぜ、ちゃんと読んですら、ちゃんと理解できないのか?

こんなにどでかい帆船が、目の前に4艘も並んでいるのに、
それが「見えない」なんて話、信じられます?
 
実は、マゼランが世界一周をしている最中、南米のある島に漂着した時の話(いわゆる「逸話」ですね)なのですが、島民は、マゼランの帆船が入り江に入ってきていることに、まったく気がつかなかったそうです。
 
 
なぜか?
 
 
それは、島民が「帆船」という存在を知らなかったから、だそう。
 
世の中を「目」で見る時ですら、私たちは他人とは同じ世界を見ることができないのです。
 
では、私たちの「読書」はどうだろう?って思うわけです。
読み直してみたら「こんなこと書いてあったっけ?」と思ったり。ちゃんと読んでいたはずなのに、他の人から同じ本について聞かされると「あー、それはすごい話だよね」って、はっとさせられたり。
 
そんな経験、あなたもお持ちではありませんか?
 
いったい、なぜそんなことが起こるのでしょう?
そして、どうしたら解消できるようになるのでしょうね?

「読んで分かる」の前提とは?

私たちは目から入った情報すべてを認識できるわけではありません。読書の場合でいうと、音読してすらそう。
  
本を読んで頭で理解していたはずのことが、実際に体験した時に「やってみて初めて、書いてあることが分かった」と、驚きをもって再発見されることがあります。

このあたり、『U理論』の冒頭に2匹の子猫にまつわる、世にも残酷な話が紹介されています。ぜひ一度読んで見てください…。
【子猫のお話の概要】
子猫は生まれて数日たたないと目が見えないのだとか。
そういう生まれたての子猫二匹を一組として、一匹の背にもう一匹を乗せて固定したそうです。
手足を使って移動できるのは下の猫のみ。上の猫は同じ空間で同じ世界を見ているはいますが、身体を一切動かしません。
 
するとどうなったか?
 
下の猫はまったく普通に目が見えるようになりますが、上の猫はまったく視覚能力を発達させられなかったそうです…

 
つまり、大前提として「直接的、能動的な体験」が必要だってことなんですね。

A.様々な、幅の広い実践体験

やはり、ここなくしては下の子猫にはなれないもの。どれだけ言葉を増やしたとしても、理解が浅くなってしまいます。
ただ、実際問題、自分の直接の経験だけの世界というのは非常に狭いもの。そこを補い、広い世界、過去・未来の知らない世界を知ることが出来るのは、やはり次に挙げるB-Eの読書があってこそ、なのです。

読書で「ちゃんと分かる」ためには何が必要か?

読んだ内容を理解し記憶するには、次の3つの要素がからむことになります。

読書の理解・記憶=アンテナ(問題意識・好奇心)
         ×受け皿(前提知識・体験等によるスキーマ)
          ×システム(処理の仕方、反復の仕方)

 
この2番目の要素「受け皿」が入力段階から、一種のフィルターとして働くんですね。
 
デジカメの画素数感度と同じようなものです。
このフィルターのきめ細やかさと感度によって、写し取れる世界がまったく変わります。
 
読書のフィルターという場合、知識、語彙そして体験で作られる横糸と、読解力で作られる縦糸を織りなした布ようなイメージです。
 
具体的には次のような要素を上げることができます。

B.情報が書かれている言語の語学力(文法、語彙)

普通、ここは大丈夫だと思いますが、もし海外の文献を当たる必要があれば、やはり語彙力の向上は必須です。
ある領域のことを学ぼうと思ったら、それに関する語彙、スキームも必要ですね。

C.情報の背景となる社会・時代・歴史に関する理解

中学校の社会科(歴史、公民、地理)レベルの教養でもかなりのレベル事足りますが、深さを作りたければ、やはりそれ相応の教養は必要です。

D.発信者・著者の背景(職業、顧客、専門など)に関する理解

誰かの主張を理解したいと思ったら、住んでいる世界、その人が見ている世界・読者(層)、大事にしている価値なども知っておく必要があります。

E.著者、発信者の主張のロジックを理解できる読解力

論理的な思考力は必須。それ以上に、複雑になりがちな話、あえて難しく書かれていることを解きほぐすような思考力が必要になることも大いにあり得ます。
このフィルターが粗ければ文章をどれだけ丁寧に読んでも得るものはありませし、ゼロなら、真剣に読んですら何も響かないでしょう。

読書のフィルターの育て方

だから、100の話を読んで、少なくとも100を理解したければ、フィルターを十分に育てておかなければなりません。
 
とりわけ、何かしら専門性を高めて身を立てていこう、頼れる自分、キャリアのコアとなる価値を育てていこうと思ったら、Eの体験はともかくとして、十分なA-Dの知識が必要です。
 
その知識が高い画素となって、あなたの体験からたくさんの発見と学びをもたらし、その学びが次の読書、体験のフィルターを作ってくれるのです。
 
ちなみに、専門性の高いフィルターを作るための読書というのは3つの方向性があります。

1.専門領域の書籍の多読

受け止めるフィルターの基礎を作る読書です。
手に入れる主眼は上記のうち、業界独特のAの「語彙」、Dの「フレームワーク」。
 
あなたの立っているステージによって、読むべき本は変わりますが、ノウハウ書、入門レベルの学術書(新書など)、専門的学術書などを丁寧に読んでいく必要があります。
 
これは「知る、理解する」ことが目的ですので、速読を有効活用しうる領域です。
 
周辺領域まで含めて500~800冊を目指したいところです。

2.専門的学術書の熟読

これは知識を表面的に理解するだけでなく、1で手に入れた知識を使いこなすための思考体験のためのものと考えてください。
ということは速読の出番はありません。
 
1で500~800冊を、と書きましたが、その中から価値の高い本を50冊程度ピックアップして、じっくり(可能なら何度も)読むようにしたいところです。
 
緻密に分析的に読むようにし、テーマごと、書籍ごとにマインドマップで知識を整理したり、図解化して思考を整理したりすることをお勧めします。

3.幅を作るための教養書の多読


専門性の高さ、思考レベルの深さは重要ですが、思考の横方向の展開がなければ実用性に欠けるものとなりかねません。
 
また、専門家あるいはプロフェッショナルとして活躍していくためには、人間としての幅、深みといったものが当然、求められます。
 
上記A~Dの要素をトータルで磨くためには、意図的に幅を作った読書を積み上げていく必要があります。
右図は教養の幅を意識的に作るために設定した5つのジャンルのサンプルです。
 
これは1、2の専門性を高めるものと別系統で設定していますが、「ビジネスノウハウ」を1、「ビジネス教養」を2と重ねることは可能です。

ベースとなる読書基礎力から高めていこう

この1~3を積み上げる前に、ベースとなる「読書基礎力」が充実していなければならないことは言うまでもありません。
もし自分の読書力、これまでの読書経験値に自信がないなら、「読書力そのもの」を高めることをまず考えましょう。
 
理解力、思考力、情報整理・処理力といったベースができてくると、情報の吸収力がどんどん上がっていきます。
これが充実しさえすれば、知識と情報は、専門的な本の速読&多読と、そのまとめ作業を通じて短期間でも手に入れることができますからね。

基礎的な読書力の高め方

では、どうしたらそういった論理や表現をスムーズに咀嚼できるようになるか?
 
これは簡単な話ですね。(^^*

今の自分に難しいと感じるレベルの高い本を、丁寧にじっくり読むこと。
そして、その本がスムーズに理解できるようになるまで、同じ本を何度も繰り返し読むこと。

 
これに尽きます。スポーツや音楽などの技能とまったく同じ。
 
ただし、その場合、2つの系統を意識して磨いていく必要があります。

■言葉の咀嚼力、イメージ力、理解力

難しい表現、込み入ったロジック、微細なレトリックをすんなり吸収する力を手に入れるには、そういう表現満載の本をじっくり読む作業が必要です。
 
例えば、

■文脈構築力、全体の構成把握・整理力

上の3冊のような本を丁寧に読むことで、言葉を吸収する力は確実に高まります。
しかし、読書は「文」「文章」の把握を超えて「200ページにわたって展開される主張を、的確に理解する」という力が求められるのです。
 
これまでご指導させていただいた経験で言えば、社会人に一番欠けているのが、実はこの部分
 
これがないと新しい情報に、前の情報が上書きされていって、速読で一気に1冊を読み終えた時「何も残っていない」ということになってしまいます。
 
そのためには、当然「大きな流れ、章立てを意識し、整理する読み方」、別の言い方をするなら「マクロの理解を重視した読書」を意識的に行う必要があります。
 
それに最適なのが「岩波新書トレーニング」
フォーカス・リーディング講座では、読書が苦手な人、表現が豊かな小説や歯ごたえのある新書、あるいは古典などを読まない人には、2~3ヶ月程度やっていただいています。
 
これをこなすことで、高速に読んだ時に入ってくる情報の量が変わりますよ、実際。(^^*
 
なお、具体的な取り組み方はこちらに説明しています。

専門性アップ、効率アップの前に「基礎力」を高めよう

「速さ」「量」を追うのは、非常に魅力的に見えるかも知れません。
そして、手軽に自分のレベルを上げられそうにも。
 
ですが、魅力的でなく、お手軽そうにも見えない「基礎力を上げる取り組み」からも逃げずに、正面から取り組んでおきたいところです。
 
最終的に、読書スピードと成長スピードを加速してくれるのも、最初に「デジカメの画素数」として喩えた「情報を受け取る力」を高めるのも、こういう「基礎の確かさ」ですからね!d(^^*

読書力を根本から高めたい方は、2ヶ月以上前にお申し込みを!

集中講座にお申し込みくださった方は、必要とご希望に応じてこの岩波新書トレーニングから、丁寧にサポートさせていただきます。
 
もし読書の基礎力を高めたいとお考えでしたら、ぜひ早めにお申し込みくださいね。d(^^*

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