あなたの「読んだ」を価値あるものにするために必要な2つの視点

速読&読解関連コラム

こんにちは。読書と学習法のナビゲーター、寺田です。
 
今日は「本を読んだ」という言葉が何を意味するのか?というお話。
 
ここをきちんと理解して整理しておかないと、「読書力を高めよう!」と思った時に、何をしたらいいか分からないはずですからね。(^^;

1.「理解度」に持ち込む新たな視点

私たちが「本を読んだ」というとき「本の内容を、一応は理解した」というニュアンスを含んでいます。「本を読んだけど、中身は理解できなかった」ということも、当然ありうるわけですが、そこでの理解は「ゼロ」ではないことが前提です。
 
例えば、まったくふれたことのない外国語で書かれている本を「読んだ」とは表現しません。一方で、日本語で書かれた難解な専門書などは、基本的に書かれている内容を理解できなかったとしても、何が書いてあったかくらいのことは確認できるわけです。
 
理解というのは「限りなくゼロに近い」状態から「限りなく100%に近い」状態までありうるわけですが、その程度は、次の2軸で考える必要があります。

  • 1.ミクロ視点での理解:いわゆる語彙として語られる名詞、形容詞、動詞など単語の使用、接続詞や代名詞など言葉どうしのつながりを的確にとらえているか。
  • 2.マクロ視点での理解:文章の構造の把握、作品を通じた作者の主張論理構造を的確にとらえられているか。

コロラド大学名誉教授Kintsh氏が提唱している構築-統合モデルでは、この「ミクロ−マクロ」という理解構築の視点を横軸として、そこに「テキストに書かれている言葉に沿った理解(テキストベース)」と「背景知識や個人的体験を下敷きにした推論(状況モデル)」を両極に置いた縦軸を設定しています。

この「テキストベース」−「状況モデル」は次の2つのとらえ方ができます。

  • 言葉の表面だけをとらえた浅い理解か、その奥、行間までもくみ取れるだけの深い理解か。
  • テキストそのものを理解することに主眼があるのか、それを1つのリソースあるいはモデルとして、新たな知見を手に入れることに主眼があるのか。

小学校時代に始まる国語科の「読解」は基本的に「ミクロ構造−テキストベース」を中心に置いています。そこから「作者の意図や心情」をくみ取るような作業として「状況モデル」に近い読解が行われたり、「作者の主張として適切なものを選べ」というような問いを通じて「マクロ構造」にやや寄った理解テストが行われたりすることになります。
 
私たちは、残念ながら書籍を1つの作品とした「マクロ構造−テキストベース」「マクロ構造−状況モデル」をつかむだけのトレーニングを受ける機会を持っておらず、そのために作者の主張をつかめず、各論的、断片的なレベルで理解して満足したり、それを活用しようとしたりしがちです。
 
西南学院大学での読書構造は、まさにこの「マクロ構造−テキストベース」の理解を確かなものにすることを主軸として据え、そこに「状況モデル」志向の論文演習を取り入れてきました。
 
ただ、教養としてビジネス書や学術書を読む場合には、さらに気を遣うべき要素が出てきます。

2.著者の立ち位置、意図という視点

それは「その本を書いた著者の意図」です。
本来、書籍は何らかのテーマについて、作者ならではの論点を設定し、ある事象について「説明」するか、何らかの行動を期待して「説得」するか、いずれかの方向性を持っています。
 
このとき、著者がこの作品を1つのデータ(Claim-Data-WarrantのData=証拠となる事実)として、読者をどこへ導こうとしているのかを見抜く意識が必要になります。その時にチェックすべきは次のような要素です。

  • 作者は何者か。プロフィールから見る立場(ポジション)。研究者・学者、教育者、実践者・プロフェッショナル、コンサルタント、経営者といったプロフィール。
  • 作者が想定している読者層のプロファイル(プロパティ)。
  • 作者が所属する社会。価値観の集団。

ここまで読み取って初めて、冷静・客観的に、作品についての状況モデルとしての理解を作り、それに対する主張や判断が可能になるのです。

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