速読はどこまで読書の価値を高めてくれるのか? 読書の真の価値とは?

読書を通じて、全人的に成長したいと願うなら、
絶対に忘れてはならないことがあります。
 
それを再確認させてくれる、貴重な一冊をご紹介します。
 
『遅読のすすめ』

「読書とは何か?」── その根本的な問いを考えさせられる1冊

この本を手に取ったのは、本当にずいぶん昔のこと。
でも、時々、自分の読書を点検する「鏡」として読み返してみる、そんな1冊です。
 
著者は、私たちが速読に求めるような「知る」「調べる」といった読書を否定します。

必要があって本を読むとき、私はそれを読書とは思っていないのだ。
── 同書(P.45)

つまり、ビジネス書を読む人たちとは、そもそも見ている本が違うわけです。
 
立っているステージ、見ている本、読書に求めるもの。これらが違えば、当然、読書感が違います。

これについては、著者本人も認めており、あくまで著者本人の個人的な読書への思いを語っていることを認めています。

もちろんその本の著者が「期待」しているかどうかにもかかわりなく、個々の読み手が決めることだ。
(中略)・・・(読書について)そういう収支計算の要る人にとっては、全文通読をしなければいけない本など、おのずと限られてくるのだろう。しかし、私はそういう立場ではないし、そんな暮らしをしていない。

── 同書(P.42)

人生いろいろ。本もいろいろ。だから読書もいろいろ。みんな違って、みんないい。
 
── 読書なんてものは、それでいいんです。
 
ただ、自分を成長させたいと思う人が、もしその成長のための栄養源をビジネス書だけに求めているとしたら、それはモッタイナイことです。そして、速くたくさん読むことにばかり目を奪われているとしたら、それは多分、相当大切なモノを見落としている可能性があります。
 
そういう意味で、読書の価値をまったく違う視点から提案する本というのは、自分の読書の価値を相対化してくれる、いい刺激になるものです。

「幸福」という読書の価値尺度

著者は読書の価値に「幸福」という指標を持ち込みます。

本を読んでいるあいだはもちろんとしても、本を手にする前、読みはじめたとき、
そして読了したときなど、それぞれに快楽があり、幸福がある。

── 同書(P.63)

この意見に理解を得るために、様々な文学作品から「ゆっくり読む喜び」が伝わる一節を抜き出し、証拠として並べていきます。
 
ここに並べられた数片の引用を読むだけでも、ゆっくりと味わって読むことへの期待感が高まってきそうです。
#実際、私もこの本を読んで、夏目漱石作品の楽しみ方を思い出すことができました。

あなたの読書は軽薄になっていないだろうか?

速読という道具に飛びつき、速く、大量に読むことで自分のビジネスの価値を高めることができると思いがちな私たち(あえて「たち」と呼ばせていただきます…)は、一度、「読書の本当の価値って何?」と立ち止まって考えてみなければならないのかも知れません。
 
著者は速さをや量を求める読書「本のもたらすあらゆる幸福の放棄」とまで切り捨てます。
 
目指すものが違うわけですから、ここまで言うのもどうかとは思いますが、知識やノウハウなどは、あくまで情報として新陳代謝するものでしかないのも確か。
 
そこで得た知識を本当に価値あるものにするのは、私たち本体の「頭(知性)」と「心(感性)」。これらが豊かでなければ、本当の価値は生まれません。
 
もし、たくさん読むことを目的化してしまい、速く読める本、楽しく読める本ばかりを手にとってしまっているとしたら、それは幸福どころか成長すら放棄してしまった軽薄な読書といえるかも知れません。
 
ちなみに、著者の言葉ではありませんが、『奇跡の教室』に、こういう一節があります。(奇跡の教室の生みの親、灘高校伝説の元国語教師橋本武先生の言葉。)

「スピードが大事なんじゃない。すぐに役に立つことは、すぐに役に立たなくなります。何でもいい、少しでも興味を持ったことから気持ちを起こしていって、どんどん自分で掘り下げてほしい。そうやって自分で見つけたことは君たちの一生の財産になります。そのことはいつか分かりますから。」

じっくり読みたい本を、じっくり読むゆとりを作るために速読を活かす

速読本当の価値は「速く読むこと」ではありません
 
速く読めば当然何かが落ちていくことを理解した上で、速さを使いこなすことによってしか手に入らない新しい価値を手に入れられることです。
 
それは、名著を何度も読み返すことかも知れません。
 
全体像を適切につかむことで、理解と記憶をより確かなものにすることかも知れません。
 
仕事や「読まざるを得ない資料・書籍」を軽やかにこなし、本当に大切な「読みたい本」に時間を回すことかも知れません。
 
いずれにせよ、速読を使いこなそうと考える私たちは、常に忘れないようにしなければなりません。
 
・その速さを何のために手に入れようとしているのか?
・速さを手に入れることで、自分はどこに行こうとしているのか?

 
この本を読みつつ、読書の持っている「もう1つの価値」を再確認し、本当に豊かな成長を目指していただければと思う次第です。
 
『遅読のすすめ』

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