ことのばで、今週中か、来週あたりに、一人、面談の希望をいただいています。
小学校低学年の頃に子ども向けの速読を学んだことがあるそうで…
まぁ、どんな相談なのかは分かりませんが、なんだかね、ちょっと「やれやれ」と思うわけですよ。
だって、文章読解力を少しずつ育んでいって、「本を読む力」を身に付けようという年齢で、いきなり速読ですよ?(^_^;
3年ほど前だったと思いますが、関東を拠点にして全国展開を目論む、幼児向けの速読教室の社長から相談がありました。
その方は、身分を隠してこっそりと、私の速読講座を受講していらっしゃって、その上で相談にいらしたんです。
自分が速読をマスターしてみて、自分たちがやっていることは、どうも違うのではないか、と。
実際、まったく成果が上がっていないとのことで…(だったら、まず教室をたたむのが正義だと思うのですが…)
なんと、対象が幼稚園児から小学生なんですよ。(苦笑)
まだ音読すらあやうい年齢に速読…もう笑うしかありません。
相談に乗って欲しいということでしたので、2度ほど相談に乗り、子どもが読書力を付けるために必要なプロセスを説明し、小学校低学年までの速読がいかに危ういものかを説明しました。
そして、教材(パソコンソフト)も拝見したのですが、よその教室の完全パクりで、しかも劣化版。
そりゃ、うまくいかないよね、というお話で…。
一応、
- 速読指導は諦めるべきこと。
- 流ちょうな音読ができるような指導と、漢字の読み書きを指導した方が実利があること。
などを提案しました。
そしたら「報酬は払えないけど、顧問をして欲しい」というよく分からない提案をいただき、きっぱりとお断りして、その話は終わりました。
(その後、全国の学習塾などに営業しているようです。)
そもそも、速読技術を指導しようとする人たちは、読書技術、読書戦略(方略)というものが、どういうものか、そのレベルから、ちゃんと研究して、自分でも実践してみるべきだと思うんですね。
読書ができていないのに、速読ができるわけないんですよ。
そして、そういうことは、教師自身が効果的な読書を実践し、その中で速読を使ってみないと分からないことなんですよね。
それができないから、妄想だけで「なんかすごそうなこと」をやろうとするんです。
最近読んだ、大学生の読書スキルの向上を目指す研究の論文にこんなことが書いてありました。
The presumption is that only someone who has a specific ability (here, reading-related skills) can teach this to others. This idea reflects study results indicating that the specific competences of a teacher predict students’ learning outcomes.
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▼寺田のてきとー訳
仮説はこうだ。つまり、ある能力(ここでは読書にまつわるスキル)を持った人だけが、それを他者に教えられるということ。
この考え方は、先生の持つ能力を見れば、生徒の学びうる成果は予想できるという研究結果からも読み取れる。
出典:「Students Improve in Reading Comprehension by Learning How to Teach Reading Strategies.
An Evidence-based Approach for Teacher Education」
「読解戦略の指導法を学ぶことで、学生の読書における理解が向上する。・教職教育のための、エビデンスに基づくアプローチ」
だから、なんです。
パソコンだけポンッと置いてあって、「画面を眺めていたら速読できますよ」なんていう教室を信じたらダメなんです。
それで速読を身に付けたとして、それで読書がどう変わるんですか?
速読なんて、所詮、読書技術の一つに過ぎません。使い方を誤れば、武器どころか自分を傷つける道具になってしまいかねません。
過去に書いたように、速読を身に付けた結果、国語や算数の成績が落ちていく子ども達がたくさんいるんですよ。
ま、とりあえず速読を身に付けたいと思うなら、ちゃんと読書のことを理解している人から学びましょうね。
子どもにも、そういう先生がいる教室から学ばせてください。(^^)
(ただし、小学校の高学年に入ってから!)
そういう、読書のことを理解していて、その上で「オプションとしての速読を子ども達に…」という先生がいらっしゃったら、ぜひぜひ情報交換など一緒にしていきたいものです。