語彙を増やすために、どう速読技術を活用するか?

過去のレッスンで、こんな自己紹介をなさった方がおられて、ちょっとびっくりした経験があります。

「私は作詞家を目指しています。
 速読で、いい言葉、いい表現にたくさん出逢いたいと思って、
 受講しに来ました!」

なぜ、ビジネス速読術講座と銘打っている講座に、作詞家志望の方が…(笑)
 
とはいえ、せっかくそういう気持ちで来てくださったわけですから、最大限のお手伝いをさせていただきました。
 
その時の指導を振り返りつつ、先日の記事(↓)に引き続き、もう少し「言葉」を増やすための読書について少々。

「速読」というものの再定義

フォーカス・リーディングでは「速読」という技術を、こう定義し直しています。

「速読とは、コントロールされた読書である」

コントロールするための基準はTPOで決まります。
 
Time(かけられる時間)、Purpose(読書の目的)、Occasion(その読書の置かれた状況)です。
 
実際、速読術をどう活かしたいかというのは、本当に人それぞれ。
だから、それにふさわしく活用すればいいんです。
 
ビジネス速読術講座(「フォーカス・リーディング」講座)は、基本的に「ビジネス仕様」というコンセプトですが、一定割合(とはいえ5%未満)の方が「小説などを読みたい」という目的で受講していらっしゃいます。
 
目的が違えば、当然のように、本の読み方も速読トレーニング方法なども変わってきます。
今回は小説とビジネス書とで、読み方、速読トレーニングの方法などにどういう違いがあるのか解説します。

トップダウン処理 VS ボトムアップ処理

小説とビジネス系書籍を読む上での大きな違いは、ひとことで言うと「フォーカス」です。
 
ビジネス書は「概要」にフォーカスを当てて読むことが可能ですが、小説は「言葉」にフォーカスして、丁寧に受け止めていかないと深みもおもしろみも伝わってきません。
 
ビジネス書が、なぜ「概要フォーカス」で読めるかといいますと、

  • 【1】各文は1つの主張を支えるために存在し、多少読み落としても全体の理解を損ないにくい。
  • 【2】必ず「小見出し(先行オーガナイザー)」がついており、本文は小見出しの解説になっている。
  • 【3】話の突然の転換、後の展開への伏線など、イレギュラーな要素がない

これらの要素ゆえ、ビジネス書はトップダウン型で処理可能なんですね。そして、フォーカスを「概要」や「自分が知りたい、絞り込んだテーマ」に向けて、入力レベルを落とした上でスキャニング・スキミングをしくだけでも、十分に必要な情報を受け止められるのです。
 
それに対して、小説は上記の真逆。
場合によっては「てにをは」レベルに味わいがあったり、比喩表現に奥行きを感じたり、言葉のリズム、行間の「間」の静寂などにジンワリしたりします。
 
ですから、基本的に「表現フォーカス」で、ボトムアップ型の読み方が必要なのです。

読み方がどう変わるか?

小説=ボトムアップ型処理の場合

基本的に一字一句を、意識のフィルターをくぐらせる必要があり、そのため行頭・行末にも丁寧に意識を通してやらなければなりません。
 
ということは、

  • 視野は「言葉」をしっかり受け止められるレベル=「入力レベル:読む」に設定する必要がある。これは、通常の読書の「可読視野」のレベル。
  • 視野の流れは「行末」と「行頭」を丁寧にとらえるべく、1行ずつゆったりとした上下動にならざるをえない。

ということになります。
 
この状態を維持する必要があるため、あまり過激なスピードアップは不可能と考える方が無難。
 
「どこまでスピードアップが可能か?」といわれたら、「あなたのスキーマ(小説類の読書経験値)の許容範囲内で」というほかありません。

したがって、スキーマが十分にあれば速読可能という話でもあります。
小学校時代から毎日1冊以上の本を10年ぐらい読み続けてきたという高校3年生の少女は、夏目漱石の文庫を14,000文字/分で読めるようになり「十分に楽しめる」と語っていました。
また、ある読書家の方は村上春樹の『ノルウェイの森(上巻)』300ページ程度を30分弱で読めるようになり、「楽しみが増えた」と喜んでいらっしゃいました。
ちなみに、小説をあまり読まない私(寺田)は、同じ『ノルウェイの森』を読んで90分かかりました…。
これはビジネス書でも、事例を読む場合や、新しい概念を手に入れるために熟読玩味する場合には当然求められる読み方です。

ビジネス書=トップダウン型処理の場合

ビジネス書、とりわけ新刊単行本の読みやすい本の場合、凝った比喩表現や、数字を読み解かなければならない事例なども少なく、たいていの場合は「あ、なるほど、分かる分かる」という具合に、さらっと流して理解可能です。
 
多少、視野で語句を受け止め損なったとしても、内容の理解に影響が出ない場合がほとんど。
 
むしろ「読み落としていいや」というぐらいで視野を広げてスピードを上げた方が、結果として入力レベルを下げ気味に設定でき、理解度が上がるという現象が多いのも事実です。

トレーニング過程での違い

小説など、ボトムアップ型の速読を鍛えたい場合は、あまり過激なトレーニングをするのではなく、1行1行丁寧に、意識で受け止められる「ぎりぎりの入力レベルと視野」を探ることをお薦めします。
 
※トップダウン型の速読については『フォーカス・リーディング』をお読みくださいませ!

  • 1.小説を使ってトレーニングする。
  • 2.視野を1行の3分の1~半分程度に拡げるつもりでゆるめ(無理に拡げない)、その視野をできるだけ壊さないつもりで、意識をなめらかに行末に流す。
  • 3.その時、内容を受け止め、理解するように務める。
  • 4.すーっと、視野の流れとシンクロして、内容が頭に入って来なかったら、同じ行を何度もやり直す。
    ※慣れるまでは息を吐きながら上から下に意識を流すようにするとgood!
  • 5.意味が入ってきたら、すかさず次の行に視野を移す。このとき、行頭に戻る時に視野を緩めることをお忘れなく。
    ※視野は行頭でゆるめておいても、読む意識を持って行末に流すと、かならず「理解可能な視野の広さ」まで狭まっているものです。
  • 6.リズムよく、行から行へと視野を移動させられるようになるまで続ける。
  • 7.リズムがつかめて、快適に読めるようになったら「楽に、でも確かに内容を受け止められているか」をモニタリングし続け、もし上滑りをしていると感じたら、すぐに視野・入力レベルの微調整(チューニング)をし直して、ちょっと戻った上で読み直す。

いずれにせよ、「思索」という要素は含まれていません。その点、ご注意を。「入力」と「思索」をどうバランスよく織り込むか、効率的かつ効果的におこなうかというのは、ここで扱う「技術」の問題ではなく、「攻略法」の問題です。また、違う機会に。
 

「言葉を獲得する」、「ボキャブラリーを増やす」ための工夫

基本的に、速読というのは「持っているスキーマに依存した理解」で成り立っています。言葉を楽に受け止めて、最高のパフォーマンスでもって(反応レベルで)理解につなぎます。
 
ということは、自分の持っているボキャブラリーの範囲内で読むのが速読であり、速読でボキャブラリーを増やすことはできません。自分の感性のアンテナに反応させて発見することはできても、です。
 
冒頭の話にあるように「言葉を増やす」ためには、違う方法を採用しなければなりません。とりわけ「単語」レベルの言葉ではなく、「表現」のレベルでの言葉ですね。
 

3色ボールペンを使いこなす
⇒ 「expression green(表現の緑)」の採用

何か特定の意図・目的を持って読む、自分のフォーカスで読む場合、新渡戸稲造式3色ボールペンメソッドが有効です。
 
その考え方はシンプルで、「自分で色の役割を決めて線を引こう」というものです。
 
例えば【赤:重要だと思う主張】【青:重要だと思うデータ、情報】【緑:ぐっときた表現】という具合。
 
ここで、緑色に「自分の中にインストールしておきたい表現」へのアクセシビリティを高めてもらおう、というわけです。
※なぜその表現にグッと来たか、その理由、視点も書き添えておきたいところです。

かならず意識を止め、音にして確認する

線を引くだけでなく、必ず一字一句に意識を向けて、音にして「響き」まで味わいましょう。
 
いい表現、美しい表現は「音」や「リズム」が美しいものです。
 
人に紹介したい表現があればメモに抜き書きするのも1つの手ですが、基本的に付箋を貼って(緑系の色を使うなど工夫を!)トレーサビリティを高めた上で、いつでも前後の文脈とセットで再確認できるようにしたいところです。
 
きれいな花は摘んできて花瓶に生けてもきれいなのですが、やはり野にある状態でこそ、自分が感じた美しさが再現できるはずです。

ストックして満足せず、使ってみる!

表現というのは自分の文脈で使ってみて初めて使える武器になります。
 
知っておくだけではダメなんですね。
 
できれば、そこで使われているテクニックを応用して、自分色・自分流に表現し直してみる。言葉そのものを頂くのではなく、言葉の奥にある視点や技法、メカニズムを頂こうというわけです。 
 
 
ということで、ビジネス速読術の「ビジネス書以外の使い方」という感じでご紹介してみました。
 
私たちの人生を豊かにしてくれるものは、実は大半がトップダウンで軽く読めないものであることも事実。
 
ぜひ、言葉にフォーカスを向けた、質の高い読書も手に入れてください。その場合、スピードはあまり求めすぎず、「疲れない読み方」、「思考・意識の流れのスピードにベストマッチの快適な読み方」を探るつもりでどうぞ。

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