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実際問題、「誰でもできる速読」のスピードってどのくらいなの?

あなたが「速読」という言葉を聞いた時に思い浮かべるイメージはどのようなものでしょうか?
 
世の中には「1冊3分99%記憶」だの、「1冊10分で正確な理解」だの、「写真として焼き付ける」だの、とても人間とは思えないような話がわんさかあふれておりますが…。
実際のところ、速読の定義というものはありません。それぞれの速読流派が、独自のメソッドをうたい、いろいろに主張しているのが現状です。そして残念なことに、それらのメソッドは心理学的研究でことごとく否定されています。
 
「おー、速いな!」というスピードが科学的な研究で確認されているものとしては、パク-佐々木式の研究(2012)がありますが、速読をマスターできていると見なせる被験者は1人しかも7年半ほどトレーニングをしている人です。さらに「1分間で10万文字読める」(つまり1冊1分)と言っていたが、研究では「1分間5000文字程度だった」とのこと。(比較のための対照実験に参加したトレーニング歴6-7年の方々は速読ができていなかったそうです…)

…the results revealed rather poor performance in the Park-Sasaki trainees. That is, the negative speed-accuracy correlation involving both untrained participants and the trainees suggested a speed-accuracy trade-off.

────

▼寺田のてきとー訳

結果からは、パク-佐々木式の訓練者は、いただけないものだということになる。それは、訓練非経験者と(スピード・理解度のトレードオフが確認されている)訓練経験者を含めて、読書スピードと理解度とには負の相関があるということだ。

Reading Speed, Comprehension and Eye Movements While Reading Japanese Novels: Evidence from Untrained Readers and Cases of Speed-Reading Trainees ─ by Ueda, Minagawa-Kawai, Watanabe, Sasaki, Ueda(2012)

現段階で、科学的な研究では1分あたり5000文字程度は確認できているが、あまりにも特殊事例過ぎて、実際、一般論としてどれくらいのスピードで読めるかは確認されていないということです。
 
それを踏まえて、これまでの約2000人の指導経験とデータの集計結果からいえる「およそ現実的といっていいだろうという読書スピード」を整理してみたいと思います。

目次

ここで考える「速読」の大前提

読書というのは、読む目的とか読む対象とか、そういったものによって読み方が変わります。
ここで前提とする読書は「社会人が何かを学ぶための読書」であり、対象となるのは「見出しがついた説明的な文章」です。具体的にはビジネス書、自己啓発書、新書あるいは入門レベルの学術書といったものがこれに当たります。

大前提①読書スピードと理解度の関係は読書力(経験値)で決まる

フォーカス・リーディングでは、速読のパフォーマンスの規定要因を次の3つと考えています。

速読=スキーマ×心身のコントロール×フォーカス

スキーマ:認知の枠組み、長期記憶、読書力

当たり前ですが、何でもかんでも速く読めるわけではありません。語彙や論理思考力あるいは社会経験といったものが不足していれば、ゆっくり丁寧に読まなければなりません(スキーマの問題)。

大前提②読書スピードは状況/目的で全然違う

「一字一句を丁寧に処理する」感覚で読むのか、「理解できればいい」というスタンスで読むのかによっても、まったくスピードが変わります(フォーカスの問題)。

2018年に実施した社会人を対象とする速読講座で、2種類の異なるコンテンツの、異なる状況における読書スピードを測定したことがあります。その結果というのは・・・

レッスン最終日の最後に、「いつも通りの理解度の読書」という条件ビジネス書や新書を読んでもらったところ、平均5000文字/分(1ページあたり5-6秒計算)程度という結果でした。
その直後に、夏目漱石の『坊っちゃん』を「後に10問の内容理解テストをおこないます」と宣言して読んでもらいました。すると、読書スピードは1400文字/分に落ちました(これは受講者の訓練前の自己啓発書・ビジネス書の読書スピードとほぼ同じでした)。しかも、10問テストの正答率は平均約55%。
その後、2週間の読書演習の後に、同じく『坊っちゃん』の別箇所を読んでテストを受けてもらったところ、読書スピードはまったく変わらず、正答率が「ほぼ満点」に上がりました。

この①と②の話はこちらにも詳細な説明をしています。よろしければどうぞ。

大前提③読書スピードは「一読して理解できるもの」でないと測定できない

読書の理解を客観的にどう評価するかは難しい問題です。
読書スピードはあくまで「主観的な理解」です。これが本当の意味で「正しい理解」かどうかは、ここでは評定しません。(「学ぶ」というのは、あくまで主観の理解でおこなうものであり、その評定は現実の世界でのアウトプットで行われるものですから。)
 
ただ、「読んで理解できない」となると、分かるために考えたり、メモをしたりといった「読み取る」のとは別の時間がかかります。なので、読書スピードを考えるときは、基本的に「一読して分かる内容」である、という条件で考えます。
とはいえ、読んで理解できないことを理解できるようにするのが学習です。その部分については「学習法(学習ストラテジー)」という形で攻略していくことになりますので、ここでは対象外、と。

では、現実的な速読の読書スピードはどのくらいか?

ここまで述べてきた前提で、どの程度の読書スピードを実現できるのかという話。
これは大人だろうが小学生だろうが、基本的に同じことだと考えてくださってOKです。

平易な本を気楽に楽しむスピード:1ページ5-6秒

自分にとって馴染みのあるジャンルの書籍を、気楽に(普通に)読む状態ですと、だいたい1ページを6秒平均で読むことが可能です。もちろん、内容によって難易度の凸凹がありますので、1ページを4秒くらいから12秒くらいの範囲でペースに緩急を付けながら読むことになります。
さらに、「馴染みのあるジャンル」とはいえ、次のような状態だと難しいと考えてください。

  • そもそもの読書量が年間数冊以下。学生時代も読んでない。
  • 一冊を読み通した経験が少なく、途中で終わることが多かったり、適当に興味がある場所を拾い読みすることが多い。

こういったことがあると、6秒ペースだと「ちょっと雑」とか「軽く読んでいる」感覚になります。なので、そういう場合は、次の9-12秒ペースを目指すのが現実的です。

平易な本を、やや丁寧に読むスピード:1ページ9-12秒

小学生で、もともと読書が苦手だった子や、読書量があまり多くない子でも実現できるペースがここ。ということで、本当の意味で「誰でも無理なく」という読書スピードはここでしょうか。
ただし、小説を読んだら「内容は分かるけど、面白さが感じられない」と語る子が多いのも、このペースの特徴。(この記事で想定しているのは、説明的文章なので問題はないのですが。)
 
大人ですと、内容は特別に難解でなくても、文字数が多めで、「丁寧に読もう」という意識が働くとこのくらいに落ち着きがちです。9秒ペースで十分な理解が得られますが、エピソード(事例)などが多いと、フォーカスが「語句レベル」に向かいますので、12秒ペースに近づきます。

さらに丁寧に読んでしまうとスピード:1ページ12-15秒

実は速読トレーニングをしていない人でも、それなりに読書経験が豊富だったり、仕事柄、活字情報をざっと処理することに慣れている人はこのレベルを実現しています。
逆にこのレベルが実現できないということは、リミッターを発動してしまっていて、まったくフォーカス・リーディング(フォーカスを変えて読む技術)が修得できていないということです。
このくらいのペースでも、200ページの本が40-50分で読み終わる計算ですので、実は実用上まったく問題ないと考えています。

これらのスピードの意味するもの

ここまでの内容をまとめると、この図のようになります。

5000文字/分:1ページ5-6秒
2700文字/分:1ページ9-12秒
1700文字/分:1ページ15-20秒

1ページ9秒で読むと、200ページの本1冊で30分かかります。12秒だと40分。
たった10分しか変わりありませんので、はっきりいってどうでも良さそうにも思えます。
 
それに、読書スピードというのは、そもそも読書の目的状況・位置づけなどが主として存在し、それに応じて変化するものです。同じ本でもページによって違います。
なので、読書スピードにこだわってもあまり意味がありません。あくまで「自分の速読トレーニングの成果を測る目安」に過ぎないと理解しましょう。

1ページ6-9秒ペースを手に入れる鍵は?

ここで書いているのは、あくまで自分にとって、それほどハードルの高くない本を対象とした読書なので、6-9秒に行けるのか、12-15秒で落ち着くのかは、能力とか経験値の問題ではありません。
これまでの、充実感はあるけど、生産性の高くない読書を手放せるかどうかですし、活字をしっかり読んでる満足感という目先の、しかも何の利益も生まない満足感にとらわれるのか、という問題です。つまり、心(リミッター)の問題
 
じっくり読んで血肉にしたい本であれば、丁寧に、時間をかけて読めばいいわけです。「本をじっくり読んだら力になる」のであれば、ですね。
 
でも、現実はそうじゃない。たいていの場合、自己満足で終わります。速読修得で目指すのは、そういう自己満足、その場限りの満足の読書を乗り越えること。
目的に応じて自分の読み方をコントロールできるようになることですし、読書の目的を最大限に達成するための戦略的で効果的な読書力を手に入れること。
 
ぜひ、あなたの学びをシフトするためにも、1ページ6-9秒の読書を手に入れてください!

こちらの記事も、ぜひご一読を!

YouTube動画バージョン

【99%の人が欺されている!?】研究者にしか語れない速読の真実

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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