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【速読も無駄になる?!】読書量が質につながらないのは「ゾンビ的読書」が原因かもよ?

本をいくら読んでも、読書力が上がらないなんて、どこのホラーでしょうか…。
でも、この怪談話、日本中のあちこちで夜な夜な語られておりまして…

もしあなたが、「本を読んでいるのに読書力が上がらない…」と悩んでいるしたら、それはゾンビの呪いかも知れません…。

ゾンビって、ほら、意志なく勝手に動きだして…。
自動操縦のように、撃たれても、身体が壊れても、狙った獲物に…。

あなたの読書は、そんなゾンビのような状態になっていないでしょうか?

目次

本を読んでも読書力が上がらない…?!

こちら、毎度おなじみのグラフですが…読書量0よりも読んだ方が成績が高いのは当然のこととして…。
問題は「週1冊ペースで読んでいる」と回答した小中学生が、もっとも国語の成績が高い状況にあるということ。

ベネッセ教育研究所のレポートを元に作成

アメリカの読書教育研究の知見を踏まえて考えても、本をたくさん読む子どもたちにもゾンビモードが発動しているものと考えられるのです…

ゾンビ的読書とは何か?

「あらゆる学力の基本は国語です。どんどん読書をさせましょう!」とかいう言葉を真に受けて、たくさん本を読ませたら成績ダウン…。そんなホラーな話も、実際起こります。

ここで疑うべきは、「ひょっとすると、その読書はゾンビになっているのかも知れない」ということ。
すべてが自動化されて、満身創痍でも、何かを失っても、まったく頓着せずにゴールに突き進む読書。これこそがゾンビ的読書です。

そして、実に多くの人の読書が、このゾンビになってしまっているのです。
その特徴はざっくり言ってしまうと、

自動操縦かのような、何の意図もない、ただ目指すゴールに向かって突き進む読み方になっている

ということ。
そして、このような呪いが生まれる原因は次の2つの要素がありそうです。

A.気楽に読めるものばかり読んでる?

本を読んで過ごす時間が楽しい、だから読みたいという想いは確かにあるわけです。いや、場合によっては読まなければならないと思っているから読んでいるってこともあるかも知れませんが。

「楽しい」を優先すると、自然と「無理なく読める」本を選びがちです。これは大人も子どもも。

もしあなたが難しそうな本、漢字や専門用語が多い本、イラストや図解が少ない本をスルーしてしまう傾向にあるとしたら、すでにゾンビの呪いはすぐそこに…

物語であれば、知らない言葉がなく、流れの中でなんとなくストーリーが楽しめれば、それ以上のことが気にならない…。
説明的な文章(たとえば自己啓発とかビジネスとか)であれば、とりあえず知らない概念がなければ、どんどん進んでいきますし、そこに自分がなんとなく思っていたことが明快な言葉で断言されていたりすると、我が意を得たり!的に喜んでしまいます。

しかも、そういう本に読み慣れてくると、読むペースも上がります。すいすい読めます。特段の意図も戦略もなく、漫然と「なんとなく」読めてしまうところが、ゾンビの呪いの始まりなのです。

B.“分からない”違和感をスルー?

物語にせよ説明的な文章にせよ、様々に張りめぐらされた伏線が少しずつ回収されていくところに面白さがあるものです。仕掛けられたギャップに、次に起こる何かを予感したり…。

ですが、ゾンビの呪いにとらわれている人は、今目の前にある言葉の処理に没頭しており、そんな楽しみをことごとくスルーしていきます。それどころか、本当は知らない概念が書かれているのに、並んでいる言葉を知っているというだけで、分かっていないことに気づかずにスルーしていきます。

寺田

高校教師時代に、生徒たちに教科書を黙読させて「今、読んだ範囲で分からなかったことなかった?」と聞くと、大抵、「ありませんでした」と返ってきていました。でも、こちらから内容確認の質問をすると応えられないんですね。「分かってないことが分かってない」わけです。

「なんとなく」の量は質に転化しない

よく「量をこなせば、質に転化する」なんて、耳障りのいい激励の言葉を耳にしますが、そんな都合のいいことはありません。量稽古が質に転化するのは、それが負荷がかかった、意図的な稽古だった時だけなのです。

ゾンビの呪いを振り払って、読書力を高めたいと思ったら、どうしたらいいのか? ── これはなかなか難題です。読書力というのは、そもそもかなり複雑な要素が絡む問題であって、そうそう単純化して「こうしたらいいよ!」と言い辛いものだからです。

ただ、そのスタートラインとして1つ提案したいのは、「なんとなく最後まで読み切る」というゾンの呪いから逃れましょう、ということ。
決して難しい本を読みましょう、ということではありません。難しい本を読んだとしても、この指示語は何を指しているのか、今のこの話は前に出てきた伏線とどう絡んでいるのか、この話は自分の知っていることと同じなのか…そんなことに一切気を留めず、なんとなく読んでしまえば、それはやはりゾンビの呪いの中にあります。

アメリカ読書教育研究から…

アメリカの読書教育研究で得られた知見から考えると、鍵は「自分の頭を使って読む」ことが重要だと考えられます。
それはどういうことかと言いますと…

  • 読んだ内容について人と語り合う時間を作ると読書力が向上する。
  • 本を読んで自分で調べる、何かについて学ぶという読書法(学習法)を学ぶことで読書力が読書量と比例してくる(それまでは量と読書力が相関しない)。

自分で何が分かっていて、何が分かっていないのか、ちゃんと確認しながら読むこと。そして、読んだことを自分の頭で整理して本を読むこと。
そういう作業が、どうやら鍵を握りそうです。つまり、ゾンビの呪いを打ち破るために必要な読書の鍵はこの2つと考えていいでしょう。

1.能動的、意図的に読む

能動的で、意図的な作業でなければ、やったことからのフィードバックが得られません。意図があるから、意図にそぐわないことに気づきます。能動的だから手応えを感じます。そういうフィードバックを受け取れる状態で、量をこなすとスキルが進化します。

この能動的アクションと、それに対するフィードバックこそが、新たな気づきを手に入れ、進化をもたらす要因なのです。

2.負荷のかかるものを、負荷を感じながら読む

簡単なタスクだと、すでに持っているスキルで十分に対応できてしまい、自動的、無意識的に、つまり「なんとなく」でこなせてしまいます。
負荷を感じ、これを読みこなすにはどういう工夫が必要なのか?と考えながら読むことで、そこに戦略が生まれます。読書が得意な人というのは、この戦略をたくさん、意図的かつ自由自在に使っていることが分かっています。

さらに、知らない言葉や概念と出会い、それらとじっくり格闘した体験が、語いや思考力を高めてくれます。

理解のモニタリングがゾンビ撃退の第一歩!

何はともあれ、読書の中で自分と対話し、自分(の理解)をモニタリングする習慣を身につけたいところです。いわゆるメタ認知的な気づきを得られる読み方です。
このモニタリングができるようになることで、そこで生まれてくる違和感やもやもやを解消し、よりよく理解するために戦略的に読む習慣を持つことが可能になります。

では、どうしたらモニタリングができるようになるのでしょうか?

単純な話として「なんとなく」を撃退するには「明確な意図」を持たせることが一番です。どういう読み方をしたらいいのかという読み方の観点・ポイントを明らかにして読む、という作業。
例えば・・・

a.読む前に本のテーマについて「知りたいこと」と「知っていること」を確認する

これは小学生から社会人までお勧めの「読み始める前」の読書戦略です。
そして、理解と記憶を強化する上で非常に有効とされています。
ぜひ、興味があるから!と、なんとなく飛びつかないで目的(何を読み取れれば成功か)を明確にしつつ、それについて元々知っていたことを箇条書きにしてみましょう。

b.全体像を最初につかんでから丁寧に読む

これも読み始める前の読書戦略。前書き・目次を丁寧に読んだ後、本をパラパラめくりながら、本の構成や章のタイトル、本文の長さなどを確認していきます。

細かな話を読む前に、全体像をつかんでおいて、丁寧に読むときに「今、全体の中のこのあたりだな」という現在地を確認できると理解が深まりやすくなります。ついでに、前の章とのつながりや、本全体のテーマとの関係を意識しながら読む習慣ができると理解がさらに深まります。

c.分からない部分に緑の線を引きながら読む

こちらは読んでいる最中の読書戦略。

実をいうと「自分がどこを分かっていないか」を理解するだけでも、読書の理解度は爆上がりします。
同時に、これは理解モニタリングの第一歩なのです。

d.自分の知っていたこととリンクさせながら読む

これも読んでいる最中におこなう読書戦略。

本に書かれていることが、自分の知識や前に読んだ本とどう結びついているのか、どう違いがあるのかといったことを確認しながら読み、ノートや本の余白にメモしていきましょう。
自分の既有知識を活性化できると、読書の理解とともに記憶も強化されるのです。

e.章ごとに整理しながら読む

読んでいる最中と、章を読み終わった段階で取り組む戦略です。

本全体にも「この本で伝えたいこと」が設定されているように、当然、そのパーツである「章」にも「この章で伝えたいこと」が設定されているのです。それを章ごとにノートに要約していくようにするだけで、自分の理解をモニタリングしたり、頭の中で情報を整理したりする習慣が身につきます。

f.章と章がどうつながっているか確認する

これはすべて読み終わった後に取り組みたい読書戦略。読んでいる最中に、1つの章を読み終わる毎に確認していくのもお勧めです。

章ごとの整理ができたら、章と章がどういう関係にあって、それが全体としてどう展開しているのかを考えます。ただし! 考えるだけだと適当に終わってしまいますので、dとセットでノートに整理してみましょう。

g.理解と記憶のテストをする

読んだ後の作業です。

そんな面倒くさい!と思われそうですが、読んだ後に「○○について説明できるか?」「○○を実践できているか?」など、その本を読んで得られたことで「未来に自分のスキルや知識として定着していたらいいと思うこと」を付箋に書いて、本の表紙の裏にでも貼っておきましょう。

それを本を読んだ数ヶ月後や1年後などに見返して、本当に自分のものになっているかどうか確認するのです。

ここまでの内容を整理すると、本を読む時に赤色文字のようなことを意識することが重要というわけです。

最初は読みやすい本でいい!

読書に慣れていないうちは、読みやすい本でいいと思うワケです。楽しめない本は、モチベーションが下がり、そもそも読書から離れてしまいそうです。
でも、せっかく読むんですから、ちゃんと自分の進化が実感できるような読み方をしたいと思いませんか?

そのために・・・まずは「なんとなく」をやめてみませんか?というのが、今回の私からの提案です。

  • 一瞬一瞬、一文一文を、意図を持って読む。
  • 今、この一文が何を伝えようとしているのか、前後の文脈と照らし合わせながら読む。
  • 自分の分からないところを、把握しながら読む。

そのためにも、読書ストラテジーを学びましょう。
自分の読書が能動的で、何か目的志向のものに変わるように。
常に自分の内面の動きをモニタリングできるように。

それだけで読書は間違いなく変わります。
読書の質を高めたければ「ゾンビの呪い」から、読書を解放すべし ── これこそが、読書力アップの前提条件であることは間違いありません。

いざ、ゾンビ的読書の大征伐へ!

追伸:速読の多読が無駄になる理由も…

速読でサクッとたくさん読んだとしても力にならないことは、もう明らかですよね…
もう少しこの「速読の限界」について知りたい方はこちらの記事をどうぞ。

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この記事を書いた人

1970年、福岡生まれ。名古屋大学法学部卒業。元福岡県立高校教諭(公民科+小論文)。
現在は九州大学・大学院(博士課程)に在籍し学習ストラテジー、読書ストラテジーを研究。
2001年に教職を辞し独立。教師時代から研究を続けていた高速学習と速読のメソッドを完成させ、その指導にあたる。速読と学習法を学ぶ3-4日間集中講座は98%の高い修得率と高い学習効果が話題を呼び、多くのビジネス書ベストセラー作家や経営者、MBA学生が通う人気ぶり。
 
そのメソッドを公開した書籍『フォーカス・リーディング』は10万部のベストセラー書。その他に読書や学習にまつわる様々な業務に携わった経歴を持つ。
・ベネッセ中学2年生コースの特集記事の指導・監修(2008年)
・西南学院大学での読書力養成講座(通年講座、2014年度から)
・司法書士スクールの高速学習指導(2015年度)
・学習塾経営者への学習法指導、経営指導

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