社会人速読講座指導者の私が大学でおこなった読書講座まとめ

「学生時代に、ちゃんと本を読んでおけばよかった」
「学生時代に、本の読み方を教えて欲しかった」
 
そんな声を、社会人向けのビジネス速読講座でよくお聞きします。
  
速読にせよ、熟読にせよ、数をこなした分だけ本の読み方はうまくなります。読み方を理解した上で、速読技術を駆使して量をこなせば、そのレベルはどんどん上がります。
 
私としては「社会人の学習メタスキル(汎用能力)」として、この読書(熟読)講座と速読講座を提供していきたいと考えており、フォーカス・リーディングビジネス速読講座では事後の無料サポートとして、1年間のオンライン読書(熟読)講座を提供しています。
 
 
でも、可能なら学生時代のうちに身につけて欲しい。
そう思って、儲け度外視で西南学院大学の通年講座をお引き受けしています。
 
その西南学院大学の読書力養成講座(速読&読書講座)の通年の授業が、ようやくすべて終了しました。
 
1月6日という微妙な日程だったため、3人中2人が授業があるのを忘れて欠席という残念な終わり方でしたが。(笑)
 
それはともかく、3人に提出してもらったアンケート(欠席の2人とはメールでやりとりをしました)を眺めながら、今年度の読書講座の振り返りをおこないつつ、大学の読書講座のあり方について考えたいと思います。
 
ちょっと未整理感満載で、ぐだぐだなまとめですが、お役に立つようでしたらどうぞ。

1.速読技術は必須か? いつ提供すべきか?

1-1.そもそもの受講動機は?

読書力養成講座というコンセプトではありますが、受講した3人はやはり「速読に興味があった」とのこと(年度の最初の講座で口頭で質問したら、異口同音に「速読が決め手だった」と話してくれました)。
 
以下、3人のアンケート「この講座にどんなこと(力・スキル)を期待していましたか?」への回答。

  • 本を読むことが好きなため、より多くの本を読めるように、少しでも読む速度が上がればなと期待していました。
  • 本を年に数冊しか読まない、読み始めても最後まで行かない、読むのが遅いという状況でコンプレックスに思ったいたので、改善したいと考えていた。
  • 読書の質、スピード、理解力の向上、また論理的思考を身につけることに期待して受講を決めました。

1-2.速読指導はいつおこなうべきだろう?

学生さんには、まず基本となる本の読み方を教え、読書力を高めることが先。
その上にあってこそ速読が生きると考え、この2年間、速読講座は「夏休み中のオプション講座」として受講させていました。
 
しかし、前期で読める本の冊数というのはせいぜい3冊。よくよく考えてみれば、それで読書力が上がるなんてことは期待できません。読み方を知った上で、量をこなさないと、ですね。
 
ということで、これは反省すべき点。
速読を「メタスキル(基礎スキル・汎用スキル)」として位置づけ、前期の早い段階でやるべきでした。(3日間連続で日程が確保できるかどうか、という問題は残りますが。)
 
前期授業の段階から読書量を増やすことができたはずです。
 
実際、昨年度、速読講座を受講した法学部の2人も速読講座を受講した後、1日1冊から2日に1冊くらいのペースで読み続けているということでした。(それに対して、受講できなかった1人は量がそれほど増えていません。)

1-3.アカデミック読書スキルとしての「速読」

そういえば、アメリカの大学に通った従弟も「読書慣れしていない学生は、年度の最初に友達や先輩から読書法を教えてもらっている」と語っていましたっけ。
それがアメリカの大学生の「4年間で500冊」という読書量を支えているわけです。
(以下の記事を参照してくださいませ。)

 
ちなみに読書について語った古典的名著、アドラー著『本を読む本』では「点検読書」(フォーカス・リーディングでいう「下読み」)のための技術として速読の効用を説いています。
 
同時にアドラーは速読教室について、こう語っています。

なにがなんでもいまより速く読めればよい、というものではない。「速読教室」では、さまざまな速度の読み方を教えるべきである。つまり、読者が本の性質や難易に応じて自分で読みの速さを変えることができるように、教えなければならない。

これが今の私の速読講座の基本思想になっております。はい。
 
フォーカス・リーディングは、フォーカスを変え、フォーカスに応じてスピードをコントロールする技術
この技術を学ぶことで、1冊の本をフォーカスを変えながら読み重ねることができるようになります。これは学術書を読む上ですごく大事な要素です。

1-4.学生の読書は速読講座によってどう変わったか?

学生さんのアンケートの、読書の量・習慣・スタイルの変化についての回答はこんな感じ。(上の「期待」の回答者順)

  • 量は、少し読むのが速くなったため、少し増えました。ただ質に関しては知識不足の面で深く読めていない部分があったりします。今後は社会的知識を身につけるための読書もがんばりたいと思います。
  • 暇つぶしに本を読むことは、昨年までなかったが、最近は家にある本をパラパラめくり、おもしろそうなものを読んでいる。以前は、本はじっくり理解しながら3日くらいかけて読むものと考えていたが、まず速読して何が書いてあるのか知った上で、構造や主題を考えながら読むのが100倍正しいとよく分かった。
  • 受講前に比べて1冊の本を読み切ることができるようになりました。以前は読んでいる途中で興味が失せてしまい、読まずじまいになりがちだったので、そこが一番大きな変化です。そしてどこに行くにしても、必ず一冊は本を持ちあるくようになりました。
    月に2、3冊を読むか読まないかというレベルだった自分が、今では1日に1冊、少ないときでも2,3日で1冊は読むようになりました。また、読書をしながら考える、ただ情報を受け取るのではなく、時には立ち止まって熟考したり、分からない部分は前のページに戻って読み直す習慣が身につきました。

これを読んでも速読技術とフォーカスを設定して読む技術は、早い段階で学ばせるべきだという結論になりそうです。

2.熟読の技術をどう学ばせるか?

2-1.1年間でこんな本を読んできた

4月から1年間、合計23回の授業で読んだ本は以下のとおり。

これが「多すぎ」なのか「少なすぎ」なのかは、もう少し学生からのフィードバックを受けながら調整していかないと分かりません。(現段階では結論を出せず。)

2-2.そもそも「熟読」とは何か?

一橋大学言語社会学教授である石黒圭先生の「読む」技術から引いてみますと、こういうふうに「熟読」について定義されています。

「熟読」は、書かれている内容を十分に理解して、頭に入れるようにしながら読みすすめる読み方です。「記憶」ほど集中力を要するわけではありませんが、文章中の重要な概念を読後に説明できるようにする読み方ですので、精読が必要になります。

ちなみに「精読」を、石黒氏は次のように解説しています。

時間が十分にあって、内容を深く理解したいときは、ボトムアップ処理重視の読みになります。その典型が「精読」です。一つ一つの言葉の理解を慎重に吟味し、筆者がなぜここでその言葉を選んだのか、その意図に思いを馳せます。すべての文にきちんと目を通すだけでなく、書かれていないことも推論で読み解こうとします。

この記述には全面的に賛成なのですが、「本を読む」場合の熟読という場合、若干の再定義が必要だというのが、私の現在の見解です。
 
それは(そこそこのボリュームの)文章と比べて、「本」という大きな作品をより深く読もうと思えば「著者の主張」からのトップダウン処理、全体の構造、前の出てきた章との関わりからの推論などが必要になるからです。

2-3.全体の構造をとらえさせる

つまり、文章の熟読は時間をかけて丁寧に読めば可能かも知れませんが、書籍の熟読は「全体の構造」「主張(ロジック)の展開」にフォーカスした速読があって初めて成り立つものなんですね。
 
これは上述の『本を読む本』の「点検読書」が前提ということ。
 
大学の読書講座の主眼は「読書力」のアップですから、授業ではマクロの視点から細部を読み解いていく工夫をしています。
 
前期は速読技術の指導をしていませんので、速読技術ぬきで「全体の構造」がつかめるように、あえてページ数の少ない本を課題図書としています。

ただし4月は、「学ぶということは、どういうことなのか?」という哲学を学生に迫るため、あえてヘビーな「影の学問 窓の学問」を選んでいます。
ちなみに、書籍が絶版になっているため、著者ご本人から許可をいただいて学生さんにはコピーを配布しています。

2-4.論点と主張を抽出させる

「影の学問 窓の学問」を除くすべての本について全体の構造を図解化させる作業をさせましたが、その大前提として「論点」と「主張」を掘り起こさせています。
 
論点とは、著者が本を書く大前提として設定した「問い」です。
12月の課題図書は、その問いがそのままタイトルになっていますが、それ以外の本は前書きや最初の章(とその後のつながり)を丁寧に読み、明確な言葉として掘り起こす必要があります。
 
そして、その問いに対して、著者はどういう主張をするのか。
その「問い⇒主張」の間の「」の部分が「ロジックであり、そこにどういう小さな主張、事実が配置されているのかを整理するのが「構造の図解化」という作業です。
 
授業のホワイトボード
↑「自己プロデュース力」の授業の板書↑
 
文章の構造を図解化させると、著者の主張とそのロジックをきちんと把握できているか一目瞭然です。
 
ミクロ視点で「文章」が読めても、細かなパーツどうしがどう関わり合っているか、著者の本筋の主張を支えているかが読めるとは限りません。その「パーツどうしの関わり」を矢印などの記号を使って表現、つまり出力することで、その理解が本物か試されるのです。
 
本当は図解化した上で「論旨」としてコンパクトな文章にまとめさせたかったのですが、時間不足と学生さんたちの文章力不足で、あえなく撃沈しました。
 
来年度からはそこを見据えて、4月の段階から論理的な文章を書かせる指導を徹底したいものです。

3.とてもあっさりした、簡単なまとめ

私は「読書力」を次の3つの要素の複合的なスキルと捉えています。

  • 1.言葉のつながりを分析的にとらえるミクロ視点の読解力。
  • 2.大きなストーリー展開を把握するマクロ視点の読解力。
  • 3.根拠をもって自分の意見や感想を語ることができるコメント力。

このうち「2」を主軸に据えて「書籍を読み、思考・思索を深め、自分の意見として論理的に表現する力」を学生さん達に身につけさせたいということで、この読書力養成講座をおこなっています。
 
その成果としては「60点」というところでしょうか。
 
もう少し、学生さんレベルに応じて、思考整理のためのフォーマットを用意したり、論理的な文章を書くためのトレーニングをしたりといった工夫が必要です。
 
課題図書の冊数を減らすか、ワークを工夫するか、時間数の配分を工夫するか、どういう方向にせよ、もう少し上記3つの力がバランスよく養われるような講座に育てていきたいものです。
 
西南学院大学さん、もしよろしければ来年度もそのチャンスをくださいませ。
 
あるいはどちらか、読書講座をさせていただける大学(あるいは企業)があれば、ご担当者様、ぜひぜひご連絡くださいませ。

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