セミナー紹介ページにも書いてありますが、本当の意味で高いレベルの速読技術を使いこなすには、心技体の「体」としての「読書力」がある程度充実していなければなりません。
以下の条件に当てはまる人は、3ヶ月程度かけて読書の基礎体力を補うトレーニングをしてください。もちろん、この条件に当てはまる人でも速読をマスターしている方はたくさんおられます。しかし、挫折した人(途中であきらめた人)を見ると、この条件に当てはまる人が多いのも事実です。
★「読書力不足」の目安(絶対的な基準ではありません)★
・15歳~22歳までの7年間で100冊の小説、新書、エッセイなどを読んでいない。
・社会人になって、ここ3年間の読書量が30冊未満。
・社会人になって、名著・名作と呼ばれる本の読書数が年間3冊以下。
時々「本は読んでいませんが、資格試験の参考書はかなり読み込んでいます」とおっしゃる方がおられますが、それは残念ながら読書力の足しにはなりません。仕事上の書類を読んでいるなんてのもそう。
読書というのは、単なる「情報の処理」ではないのです。
一方で言葉を読み解き、言葉どうしの関係を紡いでいくというミクロレベルの読解作業をします。またその一方で、大きなストーリーの展開を構築していくマクロレベルの読解・理解構築作業をしなければなりません。
小説になると、さらに複数の登場人物が絡み合ったり、場面の転換で時間が巻き戻されたりといったことが起こります。これを丁寧に1枚の作品として織り上げていかなければならないわけなので、エッセイやビジネス系の書籍よりも大変です。
もちろん、読書経験が豊富な人であれば、それらの作業を自然体、無意識にこなせます。
しかし、それが「自然に」できない人は、意識して丁寧にその作業をしていかなければならないというわけです。
岩波新書重ね読みトレーニング
目安としては「5回ずつ」です。
しかし、以下の説明にしたがって取り組んだ上で「5回ぐらいでは、スムーズ、軽やかに読みこなせない」と思ったら、最大7回までは読み重ねてください。
なぜ「岩波」新書か?
文字の密度の高さ、教養としての適度な専門性などを考えた時、岩波新書(の赤)が負荷をかけるのにもっとも適切だと考えています。
20年ぐらい前だと、岩波の赤ってちょっと軟派なイメージがあったのですが、こういう時代になってしまうと、これでもかなり「ヘビー級」扱いにしていいのかなという印象です。
ただし、あまりに読書経験が少なすぎて岩波新書だと途方に暮れる…orz…という場合は、読みやすいビジネス書や小説を使っても問題ありません。
その場合は半年ほどかけて、徐々に本のレベルを上げていき、最後の2ヶ月で岩波新書に持ち込みましょう。
取り組み方
1.岩波新書の赤を用意する。
☆岩波新書(赤)の例
基本的に本屋に行って、中身を確認して購入してください。
(興味の持てるジャンルから選んでください。)
2.丁寧に一読する。
一読目は、細切れに読んで問題ありません。
立ち止まって読み返しても意味が分からない部分は、
その部分に緑で傍線を引き、付箋を横向きに貼った上で流しましょう。
なお、少なくとも1週間以内に読み終えてください。
それなりにヘビーな本です。脳みそを使う感覚を体で味わってください!
3.二回目の重ね読みに取り組む。
前に読み流した「難解な部分」をしっかりクリアすること。
クリアできた部分の付箋ははがしておきましょう。
それ以外の部分は、前に読んだ内容を思い出すつもりで気楽に読み進めます。
細部に必死にならず、全体の流れを意識しながら読んでください。
やはり1週間以内に読みましょう。
4.三回目の重ね読みに取り組む。
前の2回よりもリラックスして読むことを心がけます。
また、章の変わり目で、そこまで読んだ内容を振り返ります。
お薦めは、章が変わったら、次の章のタイトルから
「キーワード」とおぼしきものを1つ紙に書き出し、
その章を読み終わったら、読みながら
「これはこの章のキーワードだな」と思った言葉を
1〜3つ書き出す、という方法です。
これによって、常に「現在地の確認」と「全体像の把握」をおこないます。
5.四回目の重ね読み。
リラックスして、受動的な気持ちで、3回かけて読んだ内容を
確認するぐらいの気持ちで流していきます。
見出しをとらえて「次を思い出し、想起した内容と照合する」
ような感覚でいいでしょう。
細部を読み込むことよりも、全体像、章と章のつながりなどを
とらえる意識で読んでください。
6.五回目の重ね読み。
四回目以上に全体像を意識します。
また、前とのつながりや、後に出てくる話を思い出しながら、
そことのつながりを意識して、全体的な理解を完成させます。
もし、内容の理解に心許なさを感じたら、あと2回、
全体像をつかむことを重視した読書をおこなう。
「読む」というより「思い出す」状態になり、
行頭を眺めただけで、続きがふわっと記憶からわき上がってきた…
という状態になれば終了です。
ポイント
集中講座受講前に、あるいはオンライン速読講座受講と並行して、このトレーニングで3~6冊程度をこなしておくことをお薦めします。
上述の通り、もし岩波新書がヘビーすぎると感じたら、他の読みやすいと感じる書籍からスタートしてみてください。その場合でも、やり方は基本的に同じです。
ひょっとすると1冊を終えるのに1ヶ月ぐらいかかってしまうかも知れません。長い目で、自分の読書力を鍛えていこうという気持ちで取り組んでください。
最終的には、3回の重ね読みで「全体像も細部も理解できた!」状態にしたいところです。
- 下読み:理解度C(50~60%程度の理解)で30分~1時間
- 本ちゃん読み:理解度A~B(理解度85%以上)で1~2時間
- 振り返り:理解度D(30~60%程度の理解)で20~30分
もちろん、内容によりますので一概には言い切れませんが。
そこにいたるのは、もちろん速読講座受講終了後で問題ありません。
なお、書籍に対する苦手意識を取り除くために、あわせてページ見わたしトレーニングも取り組んでおいてください。これについては、別の記事で解説しています。
もし、速読以前に「読書力そのものを高めたい」とお考えでしたら、いろいろなバリエーションで読書トレーニングをご提案させていただきますので、ぜひ早めにご相談ください。
※過去に1年半かけて小学校レベルの本から徐々にレベルアップしていった方もおられました。