中学生の文章読解力がヤバイらしい。─ でも、それは子どもだけか?

2017年1月30日付けの読売新聞で、中学生の読解力がヤバイという記事が掲載されていたそうですね。
 
ネット界隈でも、かなり注目を集めておりました。

こういう問題が出題されたそうなんですね。

【設問】( )に入る正しいものをA-Dから選びなさい。
【問題文】Alexは男性にも女性にも使われる名前で、女性の名Alexandraの愛称であるが、男性の名Alexanderの愛称でもある。
───────────
Alexandraの愛称は( )である。

何でもない一文ですが、この問題を解けなかった中学生が過半数だった、というわけです。

【選択肢と選択した生徒の比率】
A.Alex …45%(正解)
B.Alexander …12%
C.男性 …9%
D.女性 …33%

 
最初に「名前で」と書かれているのに、後で「…の愛称であるが」と言い換えられています。
 
普通なら「さっき名前と言ったのが、実は愛称だったというわけか」という推論が自然と働きます。
ここで「使う言葉を変えるんじゃないよ!」というツッコミには意味がありません。
 
この場合「女性の名Alexandraの愛称であるが」の前に「実は」という言葉が隠されていると解釈できるわけです。
 
その程度の推測、推論が出来なかったわけですから、やっぱり問題です。
 
 
これに似た「文章が読めない大問題」について、過去にも紹介したことがあります。

【設問】( )に入る正しいものをA-Dから選びなさい。
【問題文】仏教は東南アジア、東アジアに、キリスト教はヨーロッパ、南北アメリカ、オセアニアに、イスラム教は北アフリカ、西アジア、中央アジア、東南アジアにおもに広がっている。
───────────
オセアニアに広がっているのは(   )である。
───────────
【選択肢と選択した中学生の比率】
A.ヒンドゥー教 …7%
B.キリスト教 …63%(正解)
C.イスラム教 …10%
D.仏教 …20%

 
これは国立情報学研究所(NII)新井教授が調査したもので、2016年の秋にこの結果が公表された時は、正直、信じられない気分でした。
 
今回のAlex問題は、多少のひねりが入っているとはいえ、さらに正答率が低いわけです。
 
 
この結果を持って、中学生の読解力がヤバイ!と結論づけて良いかは不明です。
単に、「ちゃんと文章を読まずに、感覚で答えている」という、学習の姿勢の問題かも知れません。
もちろん、それでも一読して文章を読み取れないということは、やはり読解力が相当ヤバイことに変わりはないのですが…。
 
何が原因なのか、どうしたらこれが解消できるのかは、もちろん簡単には分かりません。問題の出題の仕方、テストの実施方法なども含めて検証していく必要があるでしょうし。
 
ただ、1つ言えるのは、この程度の読解力しかないのであれば、教科書を読んだり、参考書を読んだりしても、何が書かれているかは分からないだろうな、ということ。
 
自分の知らないことを、自分の力で分かるようになれないとしたら、それは大問題です。
 
でも実際の所、それは現実に起こっていて、恐らくそういう生徒は、成績が思わしくない場合、「分かりやすい説明をしてくれる先生がいる塾を探す」ことしかできません。
 
そして、自分の読解力や思考力は高まらないまま、問題の解き方だけを身に付けるわけです。
そりゃ、学力も成績も上がらないわけですよ。
ベースの学力が高まっていかないわけですから。
 
今、自分に理解できないことを理解しようとする挑戦の中でしか、人間の能力は高まりません。
 
塾に通わせて勉強させるということは、その作業をすっ飛ばしている可能性があるということなんです。
 
 
でも、大人でも似たようなものかも知れません。
 
例えば、この一文。
 
これをすんなりと読んで理解できる人と、「わけわからん」といってスルーして見ないふりをする人とに分かれます。

したがって、筆者がここに提出する、日本の諸社会集団にみられる諸現象から抽出された構造の理論的当否は、その論理的一貫性(logical consistency)ばかりでなく、実際の日本社会に見られる諸現象、日本人のもつさまざまな行動様式、考え方、価値観などに対する妥当性・有効性(Validity)の存否によってもテストされうるのである。
── 『タテ社会の人間関係』より

 
一文の中に、英単語を含めず、句読点を含めて140文字あります。
 
当然のように前段での説明を踏まえて書かれていますから、それぞれの語句が何を意味し、何を指し示すのかという理解も必要です。
そして、「理論的当否」という時の「理論」と、「論理的一貫性」という時の「論理」の違い、「妥当性」と「有効性」の違いなどを明確な言葉で理解していなければなりません。
 
そういう意識的に処理しなければならない言葉が、かくも長ったらしい文に詰め込まれているわけです。
 
これを瞬時に理解・吸収できるかどうかで、手に入る情報の質・レベルが決まります。
これを、丁寧にかみ砕いて理解・吸収しようと努力できるかどうかで、その人の知性がどのレベルまで高まるかが決まります。
 
 
例えば、人を動かす文章の書き方を指南する本として、3冊の非常に素晴らしい本があります。
 
超文章法 まんが
 
この2冊、確かに分かりやすくて素晴らしいし、実用的なアイディアも盛りだくさんです。
 
でも、実はこちら(↓)の本に詰め込まれている情報の方が断然濃い上に、原理と方法についても詳細に記述されており、「影響力のある言葉の技法学ぶ」という点で高い価値があります。
コピーライティングを学ぶような人なら、このくらいの本は前提知識として知っておく必要があります。
 
プロパガンダ
 
問題は後者の本、『プロパガンダ』を読むだけの読解力、思考力があるかどうか、です。
 
有り体に言えば、誰でも読める本を読んでも、表面的な知識は増えるかも知れませんが、知力は上がりません。
今の知性のレベルで、そこで得た情報を使いこなすだけ。
当然、思考力の切れも、情報処理力も上がりません。
 
上に紹介した読みやすいレベルの本しか読まない人と、『プロパガンダ』レベルの本を苦もなく読む人との間には、驚くほどの格差が生まれている可能性があるわけです。 
 
後者を「読むべき」とも、「読むことが望ましい」とも思いません。
問題は、誰でもない「あなた」がどこを目指したいのか、それだけです。
 
 
あなたは、深い洞察力、鋭い思考力を手に入れるために、歯ごたえのある教養書に挑む人ですか?
それとも、読みやすいビジネス書で表面的な知識を手に入れて満足する人ですか?
 
そして、あなたのお子さんには何を求めますか?
今の知的レベルで「テスト問題の解き方」を塾で学ばせますか?
それとも、自分で参考書を読んで、不明点を自力で解消していける力を付けさせますか?
 
さて?

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