「速読で多読」を価値あるものに変える、たった1つの鍵

ご存じの通り、フォーカス・リーディングでは「多読」を否定しています。
 
その理由は簡単です。
 
それは「学びとしての読書」を不完全なものにしてしまうから。

「学びとしての読書」のプロセス

学びとしての読書は、必ず
【入力】⇒【処理】⇒【出力】⇒
 【フィードバック】⇒【反省】⇒…

というプロセスで成り立ちます。
 
反省の後は、再入力に向かうかも知れないし、処理・出力にいくかも知れません。
 
いずれにせよ、入力よりも、その後のプロセスの方にこそ時間がかかるものですし、「学び」が本当に生まれるのはフィードバックを受け取った瞬間です。さらにそれが成長につながるのは、再出力で前よりも意図した結果に近づいた時なのです。
 
数学の学習で、教科書を読んだだけで「よし、勉強できた!」なんて言っていたら、ちょっとおかしいですよね。(^^;
 
であれば、学びとしての読書も同じです。
 
本を1回で読み捨てて良いのは、今を楽しむ消費としての読書だけ。
 
その本の「学びのプロセス」が完成する前に次の本に向かうのは、基本的にNGなのです。
 
──100冊を読む意識が、1冊の学びを奪う。
 
このことを頭に置いておかなければなりません。

多読は絶対に価値がないのか?

かといって、多読の価値を絶対的に否定するわけではありません。
 
多読は、ある場面においては大いに価値を発揮します。

1.読み手に、全方位的なアンテナ(問題意識)が立っている

学びの中でも「知識を手に入れる」という場合、記憶に残るかどうかは、その人のスキーマ(認知の枠組み、知識量、知識の受け皿)と問題意識(アンテナ)にかかっています。
 
日々のビジネスや発信の中で、常に好奇心を持って世の中を見ており、「なんでだろう?」、「これはどうなっているんだろう?」という「問い」(問題意識)を持っている状態こそが、この「アンテナ」が立った状態です。
 
そのような条件が整っていれば、本から得る知識は、もともと自分の中にある知の体系(しかも自分の体験が絡む有機的なシステム)の中に位置づけられますので、簡単に定着してしまいます。
 
コンサルタントや経営者に多読推進論者が多いのは、まさに彼らがこの仕組みを仕事の中にストレートに取り入れているからですね。d(^^*

2.特定の分野のプロを目指し、その分野の本を攻略している

もう1つは、ある分野の専門化を目指して学んでいる場合です。
 
学びのプロセスが不十分であったとしても、次の学びが必然的に前の学びを呼び覚まし、思考、記憶の中で利用することになります。
 
私の場合であれば、「読書」というど真ん中の本を100冊以上読んでいます。
さらに、そこで生じる記憶や学習に関する問題意識をベースにジャンルを広げていくことで、「認知科学」、「脳科学」、「教育論」、「子育て」、「文章力」、「学習指導方法論」、「組織論」、「社会論」などが、知の体系として組み込みやすい状態になります。
 
ただし、それでも新しいジャンルに取り組む初期段階では、マッピング式ノートで全体を俯瞰するなどの工夫が欲しいところです。
ノートをまとめる作業には、入力した情報を、全体の関係を考えながら(処理)、2次元平面に落とし込んで行く(出力)作業となっており、書きながら自分の知識があやふやな部分を確認する(フィードバック)という一連のプロセスが組み込まれています。
 
多少時間がかかり面倒だと感じたとしても、トータルではお得になります。

多読が価値を持つための鍵

つまり、多読ではなく、学びのプロセスが成就することのない読み方がダメなのです。
 
それが冒頭で書いた「「学びとしての読書」を不完全なものにしてしまう」ことの真意。
 
多読が「学び」として成立するためには、大きなフォーカスが必要なのです。
 
個別の本をパーツとして吸収してしまう、大きな問題意識が生まれるようなフォーカス。
 
1冊1冊の本を、その知の体系に組み込んでしまうような大いなるフォーカス。
 
 
逆にもし、あなたがのフォーカスが1冊1冊の本に向かっているなら、そしてそのフォーカスが本当にあなたのビジネスに必要なものなのであれば、決して「次の本」を急いではなりません。学びのプロセスをしっかりと回して、学びとして成就させてやりましょう。

余談ですが…

ちなみに、学習のプロセスは、以下の図に示すように5つの(作業としては1-2-4-5の4つの)領域を経て成就します。
 
何かのジャンルについて学ぼう!というマクロの学習プロセスにおいても、1冊1冊の本を読んだり、単元を学習したりといったミクロの学習プロセスにおいても。
 
U-process-study2

※下半分の領域は「無意識」と表現していますが、学習においては「できた、できていないという価値判断をせず、ひたすら無心に作業をおこなう」と理解してください。

なお、この「U理論」をモデルとした学習プロセスについては、書籍「U理論」の前書きに名前が登場する一橋大学学生(現在は社会人)田畑吉規氏にアイディアの示唆を受け、独自に展開したものです。
2010年春に何度か意見交換をしてから独自に展開していますので、すでに田畑氏の考えている純粋なU理論からはズレが生じているかも知れません。
また、私が開催している高速学習講座および速読講座での指導には使っていますが、まだ荒削りですし、ある部分においては矛盾があるかも知れません。何かお気づきになることがあれば、ご意見いただければ幸いです。

読書プロセスのU理論モデル

これになぞらえて読書を考えると、【入力】が1(下読み)~2(本ちゃん読み)、【処理】は読みながらの作業でもあり(2)、出力しながらの作業でもあり(4)、そこからある種の勇気を持って【出力】に向かうわけです(4)。
 
読みっぱなしの読書は1で終わってしまう状態であり、それは「読めば分かる」レベルでしかありません。もしくは「知っていることを再確認しただけ」か。
 
知識を得たいなら、それを自分なりに整理する作業が必要です。これが4。
そこで、あやふやな部分とか、自分の内部での矛盾などが見えてきます。それを1つ1つクリアしながら右上に向かって進んでいきます。
 
最終的に、必要に応じ、自分の文脈の中で自由自在に知識を使いこなせるようになるのが、5から右上に突き抜けていくプロセスですね。
 
知識ではなく行動にフォーカスするなら、4で試行錯誤の体当たりがあり、5でその意識的整理、自在に使いこなす状態が来る、と。

あるジャンルに関してプロフェッショナルを目指す学習モデル

ただ、上記は1つの学びをクローズアップしたミクロ視点でのモデルです。
 
あるジャンルを攻略するぞ、というような場合には次のようなプロセスを経ることになります。

1.【予習・準備】自分の現状の認識、全体像の把握、基本書の精読
2.【記憶の精緻化作業】 テーマを絞った多読と重ね読み、「分かる」状態作り
3.【手放す】 情報の内面化
4.【情報の結晶化・活性化】 テーマごとのマインドマップ的整理、
             「分かるからできるへ」、型どおりの出力
5.【情報の再統合】 自分の文脈での自由な発信、現場への応用

 
この2の「記憶の精緻化作業」(いわゆるエラボレーション)のところで、過激なまでの多読が間違いなく必要になります。
 
ここは「無意識的・体当たり系作業」の領域ですので、あまり深くツッコミを入れたり、良い悪いの価値判断をせずにどんどん読み込んでいくのがお勧めです。
 
1の段階でざっくりとしたフレームができていれば、ここにどんどん情報がひもづいていき、あたかもジグソーパズルができあがっていくかのように、1つの知の体系が整っていきます。
 
ただ、それすら「理解している」という状態に過ぎませんので、テーマごとにブログで意見をまとめたり、マインドマップでミクロ・マクロの整合性を取っていくような作業が必要ですね。
 
最終的に目指すのは、どんな変化球的な事例に対しても知識を援用して理解できるようになることであり、世の中を分析できるようになることであり、他者からの突飛な質問にもスマートに応えられるようになること。

結論!だから読書に重要なのはTPOなのです!

私がTPOだよ!って主張する意味がおわかりいただけたでしょうか。
 
1冊の本を読む時のTPOも重要です。
その本を力に変えるには、短期間でUのプロセスの3までを駆け抜けなければなりません。多読を忌避するのは、それを邪魔するからです。
 
でも、専門領域を熱くするための読書であれば、そもそも1冊1冊は「知の体系のごく一部」に過ぎず、それを完璧に読み解くことが目的とされないわけです。
 
そういう場合には多読だ、多読っ!
 
と声高に叫ぶことになります。

おまけ

この考え方は、そういうわけでU理論の研究に携わっていた田畑氏にヒントをもらい、彼の許可を得て独自に「学習法」として理論とメソッドを構築してきたものです。
 
ただ、私の知性が追いついておらず、まだU理論の理解が甘々な部分が多々あります。
それについては、みなさまそれぞれにU理論をお読みの上、理解を補っていただければ幸いです!
 
『U理論~過去や偏見にとらわれず、本当に必要な「変化」を生み出す技術』
U理論

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