「速読に意味はない」は実際どうなんだ?

先日、Lifehackerに速読を否定する記事が掲載されました。

この記事にはこのように語られています。

研究チームは、信じられないほど速く文章を読めるようになると標榜しているテクニックやアプリに焦点を当てて、何十年にもわたり研究を続けてきましたが、残念ながら、そんな便利なものはないというのが結論です。

その根拠としては、

  • 速度と正確さには反比例の関係にあって、速度を上げれば必然的に理解が下がる。
  • 速読技術の多くは目の動きに費やす時間量を減らすことを重視しているが、目の動きに要する時間は読書の時間の10%以内に過ぎない。

こういうとても当たり前のことを挙げています。
 
何十年にもかかる研究の成果がこのレベルなのだとしたら、いったい何を研究していたんだと驚くほかありません。
 
私も世間で多く語られる、以下のような速読は基本的に詐欺であることを指摘してきました。

  • 視野を広げればスピードが上がるとして、視野を広げるトレーニングをする流派
  • 目の動きを速くすればスピードが上がるとして、目の運動能力を高めるトレーニングをする流派
  • 右脳を活性化すれば速読できるとして、読書と関係ないトレーニングをする流派
  • 写真記憶ですべて潜在意識に取り込むことが出来るする流派
  • 意識で処理できないスピードで文字を眺めていれば、脳がいつの間にか処理できるようになるとする流派

それは科学的に考えれば当然のことであり、またそれらを主張する7つの速読流派の先生方や経営者の方々から「うちのメソッドでは速読できない」とこっそり告白を受けて来たからこそ、躊躇なく断言できることでもあります。
 
このあたり、いくつかの記事で書いていますので、興味がある方はどうぞ。


いろいろな方から、「寺田さん、この記事のこと、どう思いますか?」という問い合わせがありましたので、私からの回答はこの通り、ということで。
 
 
それらの問い合わせの中で、こういう記事を紹介してくださった方がいらっしゃいました。
冒頭のLifehacker.jpの記事へのノッカリ記事ですね。

自ら速読を実践なさっているという筆者堀氏は、ご自身の留学時代の体験で

読書には固有のペースがあって、それを意識することで理解とスピードのバランスを作れる

ということを学んだそうです。
 
そこから堀氏が得た結論は「意味のある速読の訓練はある」というもので、そのために2つの意味のある(と堀氏が思っている)訓練を推奨しています。

  • 1.目の動きを意識する
  • 2.脳内の音読を抑制する

なるほど。
堀氏ほどの能力が高くて読書経験が豊富な方であれば、そういう方法もあるのかも知れません。
ただ、間違っているとは言わないまでも、かなりのレベルで筋違いだと言っておきます。
 
例えば、1の「視界を意識する」ということ。これは実はかなり重要な要素であり、フォーカス・リーディングでも徹底的にトレーニングします。
 
ですが、この「情報に最適な視野の広がり」を使いこなすことは、それほど簡単ではありません。 
というのは、情報を受け止める視野の広さというのは「コンテンツの情報量・難易度」だけで決まるのではなく、読み手の集中状態、意識の鎮まり具合が大きく関わっているからです。
簡単な例でいいますと、同じ情報でも焦ったり、力んだりしていれば、視野が狭くなって読み取るのに時間がかかったり、読み損なったりします。ですから、視野のコントロールは常に「弛緩集中」のトレーニングとセットでおこなわなければ意味がないんです。
 
まさに「禅」的な鎮まりのトレーニングが速読のカギを握っているんですよ。
堀氏は多分それを天然でやっていらっしゃるんでしょうね。
 
そういえば、Lifehacker.jpが紹介している研究論文を書いたElizabeth Schotter氏(ポスドク研究者)は、ここを研究してないのでは?って話ですね。(そんな指導をしているのは私だけですから、仕方がありませんが…)
 
もう1つの「音読を抑制する」についても完全にナンセンスです。
記事では、無意味な言葉を発しながら読書をすると、頭の中で音声化(subvocalizationと呼びます)が起こらずスピードが上がると解説しています。
 
しかし、やってみれば分かりますが、無意味な言葉を発すれば、確かにスピードが上がりますが何を読んでいるかが分からなくなります。
 
あなたは、雑音だらけの環境とか、気が散っている精神状態で、落ち着いて本を読むことができますか?
もしそれが難しいと感じているなら、自ら雑音を発し、気を散らしている状態で速読ができるようになると信じる理由がありません。
 
しかも、いったい何分間それを続けられるんだ?という話です。
 
挙げ句の果てに「読書をし始めた瞬間の1ページの経過時間と、調子が出てきた頃の時間を測ってみるだけで、15%ほど違いがある」と言いますから、たった15%のためにそんな面倒な、質を落としかねないことをするのか?という疑問が出てきますよね。(^^;
 
こういう「すでに速読ができているスゴイ人の体験談」は、往々にして普遍性がなく役に立たないものです。
 
そして、私も含めて速読をビジネスとしている人間が主張することも、真に受けて信じるべきではありません。必ず、自分の体験をベースにして「それは本当だろうか?」と批判的に受け止めるようにしましょう。
 
その上で、様々な主張を比較検討し、ネットに転がる体験談を十分に調査して、

  • 速読ができると主張している人は、どのような知的背景を持った人だろうか?
  • 速読ができると主張している人は、普段、どのような本を読んでいる人だろうか?
  • 速読ができると主張している人は、どのような成果を上げている人だろうか?

そんなことを十分に確認するようにしましょう。
 
ちなみに、私の講座を受けた方のブログ記事やツイッターのつぶやきを拾い集めたページがありますので、フォーカス・リーディングについて調査したい方は参考にしてみてください。(ベストセラー作家さんからいただいた推薦の声以外に、受講者の方々が(私に依頼されたのではなく)書いてくださったものが多数あります。)

 
今回、私の周辺界隈で話題になった「速読は実は不可能だと科学が実証」の記事にのっかった形で、いろいろ書いてみました。
 
速読を極端に語る傾向や、天才的な人の体験談を誰でもできると勘違いしてしまう現状などに一定の結論を出せるような研究をしなければなりませんね。(^^;
 
来年、大学院に合格したらそれも研究テーマにしたいと思います。はい。

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