クリエイティブ系天才たちの脳の使い方はどこが違うのか?

クリエイティブな仕事ができる人と、頭が固い人との差はどこにあるのだろう? ── そんなことを考えたことはありませんか?
 
実は最近の研究で、クリエイティブな頭脳を持つ天才たち(エジソン、ダリ、アインシュタイン、ベートーベンetc)というのは、同じ「脳の状態」をうまいこと活用していたらしいことが分かっています。
 
その脳の状態を広告の世界で活用する方法を解説したのが『アイデアのつくり方』であり、それとは別の角度からアイディアを生み出す方法を語ったのが『思考の整理学』というベストセラー書なのです。
 
もちろん、今挙げた皆さんは、この科学的な話を知らなかったはずです。それでも、多くの天才(的な業績を残した人たち)が同じ手法を採用していたというのは興味深い話ですよね。
 
その「脳の状態」とは”Diffuse mode“と呼ばれる状態です。
 
 
私たちは「知恵を絞る」といいますが、何かを考え出そうとする際、どうしてもうんうん唸りながら一生懸命に考えがちです。
 
しかし、その状態の脳は”Focused mode“と呼ばれる状態であり、アイディアを深めることはできても、柔軟な発想、クリエイティブな発想を生み出すことができないと言われています。そしてこのDiffucse modeとFocused modeは同時に共存できないため、何かしらの方法で”Focused mode”に切り替えてやる必要があるのです。
 
では、その方法とは?

ダリの‘Slumber with a key’

ダリとエジソンは同じやり方で、そのDiffuse modeを創り出していたといいます。
それが‘Slumber with a key’(鍵を持ったまどろみ)というもの。
 
ダリは、何かについて一生懸命に学んだり、情報を収集したり、思索を深めたりした後は、鍵を軽く握ったまま、椅子にだらりと座り、夢うつつの中で、自由に思考を遊ばせたそうです。ただし、本当に寝入ってしまうと思考が止まりますので、眠ったら鍵を落としてしまい、ガチャッという音でちゃんと目が覚めるようにしていたそうですよ。
 
この話はオンラインで学べる大学の講義の中で紹介されています。ちょっと長いのですが引用してみます。

He'd relax in a chair and let his mind go free, often still vaguely thinking about what he had previously been focusing on. He'd have a key in his hand, dangling it just above the floor, and as he would slip into his dreams falling asleep, the key would fall from his hands and the clatter would wake him up, just in time so he could gather up those diffuse mode connections and ideas in his mind, and off he'd go back into the focus mode bringing with him the new connections he'd made while in the diffuse mode.
── Using the Focused and Diffuse Modes–Or, a Little Dali will do You

【寺田訳】彼は椅子にリラックスして腰掛け、心を解き放った。もちろん、そこまでに集中して考えてきたことがらについて、ぼんやりと考えながらである。手には鍵を持っており、床に向けてだらりと手を下ろした状態で。そして寝入ってしまったら、手から鍵が滑り落ちて目が覚めるという案配である。そして、その時、心に浮かんだアイディアとDiffuse modeの状態で思い浮かべた思考をかき集め、再びFocused modeに戻って、新たに得た思考の連結を整理し直すのである。

『思考の整理学』で語られる三上・三中

“東大生が一番読んだ本”というポップで爆発的に売れたという大ベストセラー書『思考の整理学』。
この中で、著者外山氏は、文章を練るのに理想的な場所、アイディアを生み出す場所として「三上」という言葉を紹介しています(元は欧陽修という北宋の偉人の言葉だそうです)。
三上とは「枕の上(枕上)」、「馬の上(馬上)」、「トイレの中(厠上)」を指します。

どういうところでいちばんいい考えが浮かぶか。(中略)三上とは(中略)馬上、枕上(ちんじょう)、厠上(しじょう)である。
これを見ても、よい考えの生まれやすい状況を、常識的に見てやや意外と思われるところにあるとしているのがおもしろい。
(中略)
ここでは、むしろ、目を覚まして床の中に入っているときに、いいアイディアが浮かんでくることを言っている。それに、夜、床に入ってから眠りにつくまでよりも、朝、目をさまして起き上がるまでの時間の方がより効果的らしい。
── 外山滋比古著『思考の整理学』 p.172~”三上・三中”より

また、同じエッセイの中で、外山氏本人のアイディアとして、「思考の形成に役立つ」状況として、「三中」という言葉を語っています。これは無我夢中、散歩中、入浴中というものです。

共通して語られることは…

この両者に共通して語られることは、リラックスした状態、一生懸命に考えていない状況です。そして、ここでは引用していないのですが、実は非常に重要な前提が述べられており、それは事前に徹底的に情報をインプットしておくこと、アイディアがひらめいたら、すかさず集中して思考を整理し直しておくことなのです。
これをトータルで「アイディアを生み出す技術」として整理したのが、広告業界の教科書とも言える名著『アイデアのつくり方』です。

『アイデアのつくり方』で語られるアイディア作りの5ステップ

広告の世界で第一線で活躍したジェームス・ヤングはその著『アイデアのつくり方』の中で、アイディアは5つのステップを通って生み出されると語っています。

1.資料の収集

まずは必要な資料を徹底的に集めるよう、ヤングは求めます。どのくらい徹底的なのかというと、例えば石けんについての調査では、「かなり分厚い一冊の本ができた」としているくらいですから、推して知るべしです。
また、資料の整理の方法として、カードにメモしていくことを勧めています。これは”資料を文章に表現することを諸君に強制して実際にアイデアの作成過程の完成を準備する点にある(同書p.41より)”と説明しています。

2.資料の咀嚼

次に、集めた資料を十分に吟味すべきということを、ヤングは「咀嚼」という言葉で表現しています。

これらの資料を咀嚼する段階である。ちょうど諸君が消化しようとする食物をあず咀嚼するように。(中略)集めて来た個々の資料をそれぞれ手にとって心の触覚とでもいうべきもので一つ一つ触ってみることである。
── 同書(p.44)

ただ、おもしろいのは、こういう作業を通じても、ひらめきはやってこないとヤングは語ります。むしろ頭がごちゃごちゃになるかもしれないことを指摘しています。

しかしやがて諸君は絶望的状態に立ち至る。なもかもが諸君の心の中でごっちゃになって、どこからもはっきりした明察はうまれてこない。ここまでやってきた時、つまりまずパズルを組み合わせる努力を実際にやりとげた時、諸君は第二段階を完了して第三段階に移る準備ができたことになる。
── 同書(P.46)

3.問題の放棄

第2ステップまでで十分なインプットが完了し、ここでようやく、ダリの語る「まどろみ」に似たフェーズが登場します。

ここですべきことは、問題を無意識の心に移し諸君が眠っている間にそれが勝手にはたらくのにまかせておくということのようである。
(中略)
だから、アイデア作成のこの第三段階に達したら、問題を完全に放棄して何でもいいから自分の想像力や感情を刺激するものに諸君の心を移すこと。
── 同書(p.47-48)

4.常にそれを考えている

いよいよアイデアの到来のフェーズです!

諸君がその到来を最も期待していない時──ひげを剃っている時とか風呂に入っている時、あるいはもっと多く、朝まだ目がすっかりさめきっていないうちに諸君を訪れてくる。
── 同書(p.49)

アイデアの訪れてくるき方はこんな風である。諸君がアイデアを探し求める心の緊張をといて、休息とくつろぎのひとときを過ごしてからのことなのである。
── 同書(p.51)

5.作成過程の完結へ

アイデアが浮かんだら、それを世の中に通用するものに仕上げていかなければなりません。

この段階において諸君は生まれたばかりのかわいいアイデアをこの現実の世界の中に連れ出さねばならない。
(中略)
そうすれば驚くことが起こってくる。良いアイデアというのはいってみれば自分で成長する性質を持っているということに諸君は気づく。
── 同書(p.52-44)

 
いかがでしょうか?
 
今回のテーマである「Diffuse Mode」というものそれ自体と、それを活かしてクリエイティブに発想する方法が理解できたでしょうか。
 
これを愚直にこなせれば、きっとあなたも、私も、クリエイティブな存在を目指せるはず。d(^^*
 
そして、クリエイティブな発想というのは、これからの時代、知識基盤社会をサバイバルする強力な武器になるはずです!

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