成長には「鏡」と「方位磁針」が必要です。
方位磁針は、進むべき道を見誤らないために。
鏡は自分自身を見失わないために。
人に「教える」という仕事を生業として18年。
特に社会人のみなさんの「学び」の現場に関わり始めてからの10年、しみじみと思うのが「いい師匠を持つこと」と「謙虚に学ぶ姿勢」の重要性。
別の言い方をするなら「方位磁針」と「鏡」を心に持ち続けているか。
方位磁針たる師匠との出会いは偶然に左右されることもありそうです。
それに常に定位置で輝き続ける北極星は誰の心の中にもあるはずなので、心の眼を曇らせなければ大きく道を外れることはないのかな、と。
問題は「鏡」。
常に鏡の中の自分を見ながら自分と対話し、学びの姿勢・フォームを確認し続ける心──謙虚に学ぶ姿勢──は自分次第。
速読ほか諸々のことをご指導していく中で、常に自分の心の鏡と対話し続けられるかどうかで、成長のスピードが大きく変わるなと、しみじみ思います。
「いやーできませんね。何が悪いんですかね?」←ん?
何かを学ぶ時、心の向きで、得られる成果がまったく変わります。
ズバリ「心は常に自分の内側に向けておく」こと。半眼の姿勢ですね。
学ぶ事が苦手な人、鏡の中を見つめることが苦手な人の思考にはパターンがあります。
– 常に、人に教えてもらおうとします。
– できない理由も外に求めます。
– 分からない事を他人事のようにとらえ、何かのせいにします。
セリフでありがちなのが「いやー、できませんね。何が悪いんですかね?」。。。(--;
「単なる指摘」を鏡にする
速読講座で、私は一人一人の目の動きをチェックし「行頭3文字が塊になってますよ」とか「ここで視野が飛んでますよ」というような指摘をします。
単なる指摘。
アドバイスしたとしても、説明済みの、分かりきったことの再確認です。
受講者の方は「どうやったら、それができるの?」と迷うはず。
でも、それが実は重要。その指摘を鏡として、受講者の方の自分との対話が始まります。
– そもそも、指摘されたような状態なのか?
──これで自分の眼・視野の使い方に気付くきっかけが生まれます。
– では、どうしたら理想の状態に近づくのか?
──これで眼のコントロールの試行錯誤が生まれます。
この「自分と対話するプロセス」こそがすべての向上の鍵を握ります。
ある意味で「結果には、自分で責任を持つ」という積極的な姿勢に支えられたアドバイスとも言えます。
結果に責任を持つために、プロセスに主体的に関わる。そういう姿勢が求められるのです。
アドバイスは「鏡を見つめ直す」ためのきっかけ作りに過ぎない
一生懸命に何かをしている時、私たちはついつい「目に見えるもの」ばかりを見てしまいます。
主人公たる自分の姿を見ることを忘れがち。
アドバイスは鏡を取り出して自分の姿を確認するきっかけ作りに過ぎません。まさに世阿弥が語る「離見の見」を作り直す作業。
その時、自分を見つめながらクールに評価する思考回路も必要です。
– 「できてない」こと確認で終わらせない。
– 「だめだこりゃ」などの価値判断だけで終わらせない。
– アドバイスを求める時に、「○○ができません」などと他人事のような言い捨て方をしない。
今、何がどういう状態かを確認し、どういう試行錯誤をしたら、何がどう変わり、何が課題として残ったか確認します。すべてを自分の責任でとらえ直し、足りない部分についてアドバイスを求める。
アドバイスというのは、自分を良く見つめるためのきっかけ、あるいはヒントに過ぎません。
そこから始まる自分との対話の中にこそ成長の鍵があります。
成長の鍵は「鏡の中」にこそ。
日常生活、あるいは仕事や学びの際に「鏡」を持ち続ける心を忘れたくないものです。(自省)