大学時代で身につけておきたい!「学習メタスキル」としての速読技術

福岡市にある西南学院大学での「読書力養成講座」(正確には「ワンランクアップ!読書講座」)がスタートしました。
 
昨年度に引き続き2年目ですが、今年は学生募集が適当だったらしく(教務の掲示板に開講案内が貼り出されただけ)、受講者は全学部で5人。
文学部・国際文化学部・法学部・商学部から1名ずつ。そして他大学(福岡大学)の人文学部から1名。
 
わざわざ外部から講師を呼んでおいて、この力のはいらなさ加減…苦笑するしかありません。
 
ともあれ、私の使命はこの「たまたま集った5人」を年度の最後までナビゲートし、高い読書力、大学生=最高学府の学生にふさわしい、高いレベルの読書力、学ぶ力を身につけさせること。
 
教授法などもしっかり工夫しながら、講座を進めていこうと思っています。

大学生(もちろん社会人)にも身につけて欲しい読書力とは?

この講座の目的は「読書力」を高めること。
 
ただ「読書力」というのがくせ者です。
 
何を持って「読書力」とするか明確にしておかないと、何となく本を読んだ、自分なりに本を読むようになった、という自己満足で終わりかねません。
 
そこで、私は次のように読書力を以下の4つの技術の総合力であると定義して、それぞれの項目をケアできるような授業設計をしています。

著者の意図、行間を深く読む熟読の技術

ゆっくり丁寧に読めば理解が深まるかというと、実はそうでもありません。
まずもって自分の読み方の粗さとか癖、傾向を知った上で、精読・熟読のための技術も理解しておかなければなりません。

素早く、的確に流れ(全体の構造)をつかむ速読の技術

速読業者が煽るような「潜在意識に入る」とか「右脳で処理」とか「写真のように記憶」というような、まったく実用性のないマジカルなものを意味しません。もちろん、「一字一句をちゃんと読んで、しかも速い」というような超人的な能力も求めていません。
あくまでもフォーカスを「概要・流れ」に設定した上で、適切にその理解を手に入れられる読み方を指します。つまり「熟読」の対義語としての速読であり、「速読をマスターする」とは、イコール「フォーカスを変えて、読み方を変えられるようになる」ということなのです。

書かれていることについて、ロジカルに考察する(思考を展開する)思考の技術
読んだ内容についての自分の意見や想いを適切に伝える発信の技術

ロジカルな思考力と発信力はセットです。
読んだものについて自分なりに論理・筋道立て手意見と感想を持てることと、それを的確に誰かに伝えられることは、「読んだ後の作業=活かす作業」として非常に重要です。

前半の2つが「入力」、次が「処理」、最後の2つが「出力」に関すること。
 
入力から出力までを適切にチューニングし、レベルを上げてこそ、「読書力アップ」が成就します。

速読技術こそが「学習のメタスキル」である、その理由とは?

実は「学習」とか「自己教育」という意味でいうと「熟読」こそが本命です。

「賢くなるためには、分からない本を読まないといけない。
 わからない本はゆっくりと読まないといけない。
 となると、賢くなるためには、速読の出番はないな。」

 ── 村上 宣寛著『「心理テスト」はウソでした。』

 
これはまさに、その通り!
 
でも、入力については熟読と速読はセットでなければなりません。
 
この講座を西南学院大学の法学部長さん(当時)から養成されたとき「読書会のような形でいいので、学生に本の基本的な読み方を教えて欲しい」というお話をいただきました。
そこで「3日間講座という形での速読講座とセットでいいなら」ということでお引き受けした経緯があります。
 
それくらい速読の技術というのは、とても重要なものなのです。
いや、むしろ「速読技術あっての熟読であり、学習である」と言えるのです。
 
具体的に、そのメリットを挙げてみると…

速読のメリット1:全体を俯瞰でき、内容の理解が深くなる。

速読というと「効率を上げる」技術と考えがちですが、実はそうではありません。
全体を俯瞰することで、「文脈の大きな流れの中での細部(意味)」が見えてきます。微視的にとらえられない前後のつながりなどが、速読によって巨視的な「引いて眺める」視野を持ち込むことで、とてもよく分かるようになります。

速読のメリット2:フォーカスを、より明確にし、手に入れたい理解を強くすることができる。

「フォーカスを明確にして読む」という意識があっての速読なのですが、逆に速読で読むからフォーカスに沿った理解を強くすることが可能になるというのも事実。
たとえば、「本全体の概要を理解したい」と思っても、じっくりゆっくり読んでしまうと、細部の理解に気を取られてしまって、概要理解がおろそかになります。あくまでフォーカスにふさわしい読み方を採用して初めてフォーカスしたものが手に入るのです。
だから「速読で読んだ方が頭に入る、記憶に残る」ということも当然起こります。

速読のメリット3:フォーカスを変えた重ね読みにより、理解が有機的・重層的になる。

速く読める分、何回も読めるので理解が上がるというのは、間違いではありませんが、実はあまり効果の上がらない方法です。
大切なことは戦略的に読み方、フォーカスを変えて読むこと。
フォーカスを変えて何度も読むからこそ、ミクロ、マクロの理解が重層構造をなして理解を強くしてくれるのです。
※「フォーカスを変えて読み重ねる」ことの重要性を広く世に知らしめてくれたのが、読書論の古典として名高い『本を読む本』(アドラー著)ですね。

速読のメリット4:一気に短時間で読み重ねられるため、理解と記憶が強くなる。

ここからは「速さ」と、それによる「効率性」によって手に入るメリットです。
当たり前ですが、少しずつ何度にも分けて読み進めた本よりも、一気に読み終えた本の方が、理解は確かです。

速読のメリット5:ちょっとした時間が充実した読書タイムになる。

たとえば電車の待ち時間と乗っている時間で合計15分取れたとします。
本にもよりますが、速読をマスターした人にとって、15分というのは十分な読書タイムです。
これまで「何もしようがないからスマホ」だったすき間時間が、「よし、○分あれば△ページ読めるな」という具合に、見積もりの取れる読書タイムになるのです。
 
 
速読技術をマスターすることによって、熟読のレベルが上がるだけでなく、そもそも本を読むこと自体の敷居が下がりますし、限られた時間の中での学習をマネジメントできるようになるわけです。
 
これが、「速読こそ学習のメタスキル」であるという由縁なのです。
 
実際、昨年度の例で言いますと、夏休み中に速読技術を身につけさせましたので、後期、課題図書の理解が劇的に上がりました。これは6年ほど続けている社会人の読書会の参加者でも同じ傾向があります。当然、速読をマスターしている人の方が、何度も、フォーカスを変えて読み重ねられるので理解が深い。
 
また、学生さんの例に戻ると、それまでは年間10冊程度しか読まなかったのに、年間200冊以上読むようになったという学生もいます。そうなると、「経験値」もとてつもなく大きくなります。

ただし、「読書の経験値」は速読しようとすると困難を覚えるような、難易度の高い本を読んで初めて上がるものです。くだんの学生も、新書を中心に難易度の高い本を中心に200冊読んだとのこと。「読める自信」が生まれたおかげですね。

ただし、速読はあくまで道具に過ぎない!

とはいえ、速読技術というのは、読書の価値を高めてくれるのに有効なオプションに過ぎません。
 
速読を身につけたら自動的に天才になるというわけではありませんし、速読で大量に本を読んだからといって知性のレベルが上がるわけではありません。
 
あくまで学習としての読書は4つの技術の総体であり、速読を上手に活用することで、読書の価値を高めることにこそ意味があるのです。
 
だから、速読の修得を目的化したり、そのために時間を無駄に費やすのは反対です。(お金の部分は「投資に見合うと思う範囲でどうぞ」ですが。)
 
この記事をお読みのあなたも、もし速読技術を学ぼうと思うなら、何かを学び始める前段階で身につけておくことをお薦めします。
実際、大学の講座でも、速読の指導は夏休み期間中、つまり後期授業の前におこないます。

毎日の価値ある読書で、昨日を0.1%超えていこう!

 
この写真は授業のホワイトボードなのですが、この中に「1.001^365」という数式があります。
これは学生さんにGoogleで計算してもらって、「毎日少しずつ自分を変えていくことの重要性」について話をしたんですね。

毎日、1日の1%の時間=たった15分弱を読書にあてて、
毎日自分を少しずつでも、「昨日の自分」を超えて行けたとしたら、
それが目に見えないレベルで、0.1%程度の変化だったとしても、
365日で1.44025131343倍の成長を手に入れることができる。

その成長のエンジンを手に入れるのが、この読書講座の目的なんだよ、と。
 
1年間の読書力養成講座を終えた頃、彼らの読書力がどう上がっているのか、それによって大学での学びがどう変わっているのか、そしてもっと根本の「学び方」がどう変わり、さらに根本の「生き方」がどう変わっているのか。
 
大げさに聞こえるかも知れませんが、私はそこを一番大事にしたいと思っています。
 
これは、社会人のみなさんを対象とした速読講座も同じですが!

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