勉強をしなくなった高校生が遭遇する未来は何色か?

お手軽に、未来をブラックに染め上げるような選択を、若者が選んでいるらしい ── 僕にはそう見える。
 
あなたも読んだだろうか?
8月12日号の日経新聞の教育欄の記事(寄稿文)だ。

ご存じのとおり、大学入試改革が進んでいる。これは、高校における学習のあり方を根本から変えるべく、いろいろ無理を承知で、トップダウンで大実験に取りかかろうというものだ(と私は理解している)。
 
社会のあり方が変わったから、社会で求められる能力が激変したから、それに順応できる人材を育てなければ ── それこそが教育界に求められ続けてきた最大の命題だ。
 
これは単なる大学入試改革ではない。
社会と大学が、そこで求められる能力をキーファクターとして、どう接続していくのかという【大社接続改革】であり、大学と高校が、そこで育むべき能力・スキルをキーファクターとして、どう矛盾なく接続するのかという【高大接続改革】である。当然、その下には高校と義務教育の接続がある。
 
つまり、教育界としては入試が変わることをきっかけに、日本社会、日本経済がこれからどう盛り返し、発展を続けていくのか、その鍵となる人材の輩出を担うべく挑戦しているわけだ。(大半の学校の先生方にはその気概を感じないけど。)
 
保護者としては、自分の子だけでなく、自分の視野にいる子どもたちが、未来に渡ってその人生を謳歌できるだけのサバイバル能力を、どうしたら身につけさせられるのか? そんなことを気にしながら見守っているところだ。
 
 
前にも書いたことだけど、入試が変わらない限り、その下位にある学校教育は変わらないだろうと僕は確信している。僕は基本的に「教師=公務員(お役所仕事の体現者,あるいはサラリーマンマインドの体現者)」と見ている。だから「職務上やらざるをえない」状況を創らない限り、教育の現場は変わらないと思うのだ。当然、大学入試改革についても、多少の矛盾があったとしても「いけいけ!大賛成だ!」というスタンスだ。
 
入試が変われば、自分の目指すステージに上がるために、高校生も勉強法を変えるだろう。
 
しかし、だ。
 
どうやら、それが甘い希望的観測に過ぎなかったことが、この日経新聞の記事からは見て取れる。
 
いや、勉強法は変えるかも知れないのか?
 
でも、勉強に向かう姿勢とか、未来を創る態度とか、そんなものは生まれないのかも知れない ── そんな悲観的な予感満載だ。
 
日経新聞の記事(寄稿文)曰く、

…中堅進学校生徒の学習時間の少なさが目立つ。定期テスト期を除く「ふだん(平日)」の学習時間(学校外)が30分以下だと答える生徒は7割強に上り、有力進学校生徒(2割)とは対照的だ。
さらに、こうした状況でも中堅進学校生徒は「自分は勉強を頑張っている」と主張する傾向にある。中堅進学校では、学習時間が30分以下でありながら「勉強を頑張っている」と答える生徒は32.5%、3人に1人の割合である。

長くなるがもう少し引用したいと思う。

「受験に合格できそうでも、進学した後に勉強についていけなさそうな学校であれば、進学先として選ばない」という項目に「あてはまる」と答えた生徒の割合は、有力進学校生徒15.5%に対し、中堅進学校生徒は45.7%だった。

中堅進学校と呼ばれる高校から、どういう大学に行くのか不明なのだけど、僕が読書教育、読書ストラテジー教育を通じて変えたいと思っている大学教育の現場には、そういう「別に無理する必要なんてないんじゃない?」という学生さんであふれている可能性があるということかも?
 
ちょっと悲しすぎて苦笑するしかない。
 
僕は常々、大学の授業では、もっとたくさん本を読んで来ないと授業に着いていけない、単位が取れないという状況を創るべきだと考えている。本を読まなくても授業が成立して、単位ももらえて、卒業もできれば、そりゃ大学教育で読書指導は必要ないぞって話。
 
でも、社会では自分の力で学べない人は、退場するしかない。
与えられた仕事で満足するしかない。
 
与えられた仕事しかできなければ、与えられた条件でこなすしかない。そこは、クラウドの向こうに超低料金でも働きたいライバルたちがわんさかいる場所だ。
 
もうね、ブラックなんてものじゃないよ?
あ、大人は誰しも分かっていることか。釈迦に説法だった。失礼。
 
 
親や教師は、今の社会がどういう社会なのか、どういう能力を身につけておかないといけないのか、自分の能力を活かして、主体的に活躍していくために、どういう姿勢が求められるのか・・・
 
ひょっとして伝えてない?
 
彼らにとって勉強とは何なのか。
彼らにとって大学とは何をするところなのか。
彼らにとって社会とはどのような場所なのか。
 
そこが伝わっていなければ、これだけ楽しいことが溢れている社会だもの、平坦なエスカレーターに乗って、スマホをいじりながらゆっくり進んでいった方がいいよね・・・。
 
でも、その平坦に見えるエスカレーターの周囲は、今みたいな日差しの溢れる、明るくて暖かな世界が続く保証はまったくないんだよね・・・。
 
君らが乗っている、そのお気楽なエスカレーターは、平坦に見えて実はじわじわ下っているぞ!
 
誰かが伝えないと。
 
勉強は、何かを手に入れるためのパスポートのようなものでは、決してない。
サバイバル能力の本質的な部分であるべきなんだ。
 
高校の勉強も、大学の勉強も、「大人になって役に立たない」と言われるけど、それは勉強ってものを「知識」なんかの「勉強の結果」だけを見ているから生まれる結論でしかない。
分からないことを発見し、課題を設定して、それを乗り越えて分かるようになるプロセス」であるとか、「具体的なものや現象の背後に潜む原理や理屈を解き明かす、理解する作業」と考えると、これほど未来を創るのに重要な武器はないだろう。
 
だって、世の中の大抵の困難は、本、あるいは誰かから学び、考え抜き、行動し続けさえすれば必ず乗り越えられるものだから。
 
それに気づかず、平坦なエスカレーターに乗っている若者を包む、キレイな黄昏時のオレンジ色の世界は、決して輝く未来の投影なんかではなく、やがて暮れゆき、漆黒の闇に変わるプレリュードなんだ。
 
まずは自分の周りにいる子どもたちに伝えよう。その現実を。
 
そして語ろう。
 
勉強ってさ、君の未来を輝かせるのに、すごく大切な武器なんだぜ。
新しい未来を1つのサバイバルすべき障害ととらえて、そのクリアの仕方を一緒に考えてみようぜって。

関連するエントリー

  1. わずか2分で読書のリターンを最大化する秘密とは?

  2. 速読の出番はない…!

  3. 同じ(に見える)結果が得られるとすると、どっちのルートがお得…

  4. 記憶術より効果的?! 学んだことを頭に残しやすくする3つの工…

  5. 速読で本の読み方がどう変わるか?

  6. 英語力不足の僕が、英語の学術誌を読む時に使っている秘密兵器

コメント

  • コメント (0)

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。

Optionally add an image (JPEG only)