こんばんは。読書と学習法のナビゲーター、寺田です。
あなたも、そんなふうに感じたこと、ありませんか?
- 1冊10分で読める?
- ばっちり理解しながら?
- 1冊15秒とか本当なの?
今日は、その速読の実態をご紹介します。
この記事の目次
寺田の研究について
フォーカス・リーディングの主催者、寺田は2017年度より九州大学の大学院(人間環境学府・教育システム専攻)にて、読書教育の研究に勤しんでおります。(所属は教授ストラテジー研究室です。)
研究のテーマは、ざっくり言いますと
「学生を対象とした速読技術および読書方略指導の効果について」
というものです。
速読ができるかどうかということではなく、「速読技術を読書技術の一つとして、学生さんに指導したら、学生さんの読書習慣とか変わるんじゃないの?」という感じの研究。
他の速読と、「速読」観はどう違うのか?
速読という場合、他の流派では、「写真のように写し取る」とか、「右脳で処理」とか「1冊○分で読んで、すべて理解・記憶できる」とか「高速道路から降りたときのスピード感の狂いを利用して」とか、得体の知れない魔法のような効果、もっともらしそうなメソッドをうたっています。
しかし、そんなすごいものが簡単にマスターできるなら、日本中、天才だらけです。(笑)
実際のところはどうかと言いますと、学術的な研究では、それらすべて否定されています。
フォーカス・リーディングでは、そもそも「理解の質を損なわず、スピードだけをべらぼうに加速する」などということは主張しません。スピードと理解の質はトレードオフの関係であることを認めた上で、「でも、速く読めた方がいいことってあるよね?」と考え、その活用法を指導しているのです。
4つの読書方略とセットで指導
速く読めば必ず消えるものがあるし、一回しか読まなければ理解が弱かったり、誤解したりする部分が生まれると考えます。
その上で、それを補うような読書戦略を用意しています。
詳しいことは、またいずれってことで、とりあえずその4つとは…
- 重ね読みストラテジー
- TPO設定ストラテジー
- 構造把握ストラテジー
- 意味明瞭化ストラテジー
というもの。
速読を「速く読む技術」としてとらえず「速さというオプションを活用して、目的にふさわしい効果的な読み方を実現する技術」としてとらえている、とご理解くださいませ。
理解の質を保って丁寧に読めば、それほど速く読めるはずがありません。
フォーカス・リーディングの「読書スピード」
まずは、フォーカス・リーディングを身につけると
理解の質を落とさずに読んで、どのくらいスピードがアップするのか?
というお話。
ただし「理解の質を落とさずに」と言っても、熟読とはまったく質的に違うはずですし、感動は消えがちです。あくまで、ビジネス書とか学術書(新書)などを「丁寧に読んでいるという実感」だけを担保して。
自己啓発書の読書スピード
では、まず読みやすい自己啓発書(2007年発行『伝説の社員になれ』土井英司著)を読んだときのスピードの変化。
理解度は「いつもどおり、丁寧に読む」という条件で読んでもらっています。
いかがでしょうか?
このグラフをもう少し違う見せ方にしますと、こんな感じになります。
訓練前の読書スピードでは、左端の2本だけが高くなっていますが、訓練後は分散していますよね。
岩波新書を丁寧に読んだスピードの変化
次に岩波新書(赤版の中でも読みやすいと寺田が感じたものをチョイス)の読書スピードの変化です。
さすがに、新書だと1ページあたりに要する時間が長くなっていますよね。
これは「1ページあたりの文字数が多いから」です。もちろん内容も濃いので、自己啓発書と比べてスピードが落ちた人が多かったようです。
ということで、以上は「いつも通りの丁寧さで読んだペース」です。
だいたい、平均して3.7倍程度にスピードアップしています。
※被験者数が自己啓発書と比べて少ないのは、2回のレッスンで新書を使った測定をおこなわなかったためです。
では、次は読書方略を活かしつつスキミングで読んだ場合のペース。
スキミング(一種の拾い読み)で読んだ場合は?
上のグラフを見ると「修得率98%ってどういうこと?」って感じになると思います。
もちろん、グラフの中に言い訳がましく、注釈を付けておりますし、実際その通りなのですが…。
そこで、フォーカス・リーディングで一番大切にしているスキミングおよび重ね読み(理解読み)による「フォーカスを明確にした速読」のスピードについてご紹介します。
「フォーカスを明確にした速読」というのは、「スピードを上げれば理解度が下がる」ことを前提として、「でも、構造をつかむためとか、流れを追うためとか、フォーカスがはっきりしていれば別に問題ないよね?」という発想があります。
その発想の上に、「概要(構造)にフォーカスして、流れだけをとるスキミング」の成果がこちら。
スキミングの測定についての補足
- 10分間で何ページをスキミングできるか測定し、そのページ数を元に「200ページを読むのに何分かかるか」を計算しています。
- このときの理解度は人によって様々ですが、「速いから理解が悪い」ということはありません。例えば、1冊を8分で読み終わった方がおられましたが、理解度は90%という自己申告。そして「重ね読みの必要なし」として、次の測定はしませんでした。
- 上述のとおり、【速読=スキーマ×心身のコントロール×フォーカス】という式で表されますが、その方はスキーマが非常に強力で、フォーカスを概要にセットしても十分に書籍の内容を理解できたというわけです。
「修得率98%」の真意
このスキミング演習では、「スキミングを断念」という方と、「スキミングなのに1冊50分かかっている(1ページ15秒程度)」がおられます。このお二人は実際、速読習得には至っていない…というところ。(その2人を除くと一番遅い人で1冊32分です。)
もちろん、スキミングができていなくても(コツがつかめないとか、そもそも小説などスキミング不可能なものしか読まないとか)、上に紹介した「丁寧に読んだスピード」が1500文字前後で読めていれば(もとのスピードによりますが)速読習得できていると考えることがあります。
レッスン後におこなう「3週間の読書実践サポート」の中で読書経験を積んでいくことで、だいたいスキミングの技術も上がりますし、「丁寧に読みつつ速読」のスピード・理解度も向上していきます。その段階で「修得!」となる方もおられます。
スキミングの後、さらに丁寧に読み重ねると?
スキミングで下読み(まず全体像をつかむための点検的な読書)を済ませた後、ちゃんと読み直した時に、どれくらいのスピードになるのか?というのが次のグラフです。
先に紹介した「丁寧に読んだ時の速読スピード」と違うのは、「下読みしている」ということ。当然、初見で読むよりスピードが上がります。ですので、このスピードをもって「丁寧に読んでも、こんなに速い」とは言えません。
実際には、1冊にかかる時間はその時間の合算ということになります。大事なことは、「質高く速く読む」ことではなく、速読を活用して、フォーカスを変えつつ読み重ねて、理解の質を高めることだと考えています。
※被験者数がそろっていないのは、「最終日だけ受講しなかった」「体調を崩してぐったりしていた」「たまたまトイレに行っていた」「測定のやり方を間違えた」など、イレギュラーな事態が発生したことがあり、そのデータを割愛したためです。
おまけ:もとの読書経験(量)は読書スピードに影響するのか?
最後に1つだけご紹介。
フォーカス・リーディングでは
速読=スキーマ×心身のコントロール×フォーカス
と考えています。
ということは、読書量が多い方がスキーマが大きくなるはずだから、スピードも速くなるのでは?という仮説が成り立ちます。
そこで分析をしてみたところ・・・
面白いことに、読書量が激烈に多い人が、その前のレンジと比べて読書スピードが下がるんですね。
これは、もともとの読書スタイルを捨てきれなかったためではないか?と考えています。
ま、あくまで仮説ですけど。検証しようがありませんし。
ということで、フォーカス・リーディングの考える速読と読書のイメージがつかめたでしょうか?
まとめ
- フォーカス・リーディングの考える速読は、それほど速くない。(丁寧に読むペースだと、せいぜい3.6倍)
- フォーカスを変えることで、1冊10~20分で読める可能性は高い。
- 丁寧に読み重ねても、合計1時間かからない。
- 理解の質、記憶への保持を視野にいれた読書ストラテジーも指導する。
そのうち、今回省略した読書ストラテジーの部分についても、ちゃんと解説しますね。(^^)
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