私たちが「本を読んだ」という時、多くの場合「一度、目を通した」に過ぎません。
逆に「読んでない」にしても、まったくその本について知らないわけではありません。
ちょっとは読んだとか、拾い読みしたとか、新聞の書評欄で紹介文を読んだとか、ある程度は本について知っているものです。
これまで読書会や熟読講座、あるいは速読講座をおこなってきて、はっきり言えることは、多くの人の「読んだ」は、「読んでない」というのと大した差がないということです。(笑)
いや、あまり笑い事ではありません。(-_-;
子どもの頃の躾けであれば、「いつ、どういう躾をされたか憶えてないけど、ちゃんと正しく行動できている」ということはありえます。
「憶えてないけど、できてる」── もちろん、大人の読書でもありえます。
内容はまったく憶えてないけど、この本がきっかけで人生が変わった!という本。
そういう本は特別と考えましょう。
もし、あなたが何かできるようになりたいとか、新しいことを知りたいと思って読んだのに、内容を全く憶えていないとしたらそれは残念なことです。
そういう読書(本)は、「読んだ」という自己満足以上の何も残っていませんし、あなたの人生にプラスになっていることはありません。
今、話題にしたいのは、そういう残念な読書。
何か行動できるようになるためには、単純にTo doリストやTo beリストを作るなど「出力につなぐ仕組み」を作るだけで解決します。
しかし「知識・理解を手に入れる」ための読書であれば、それも著者の主張を正しくつかみ、精緻な理解を手に入れたいのであれば、読み方そのものを変える必要があります。
ということで、あなたの読書力を確実に高める「4ステップワーク」をご紹介します!
この記事の目次
1.4ステップワークの概要
この4ステップワークは、例のごとく「Uプロセス学習理論」に基づいて作られています。ざっくりとした流れは図で確認してください。
これを見ていただいたら分かるのですが、読書力というのは「出力」のステージまでをおこなって初めて高めることができます。学生時代の学習で「教科書を読んだ」だけで学習が成立しなかったのと同じですね。
では、詳しく4つのステップを見ていきましょう。
1-1.【下読み】概要フォーカスでの通読
フェーズその1は「下読み」です。
前書きを丁寧に読んで、著者の問題意識や前提となる認識を確認するところから始めましょう。
その上で、細かなことにとらわれず、「概要を確認」のフォーカスで通読します。速読ができるなら、1ページ3〜6秒の理解度Cレベル(理解度60〜70%)の読書がお勧めです。
細かく読み過ぎると全体像が見えなくなりますので、あくまでざっと流す意識でどうぞ。
なお、変な思い込み、決めつけ(=Downloading型読書)を廃して、徹底的に無心に著者の主張を受け止める(=Seeing型読書)ようにしたいところですね。
1-2.【徹底入力】精読+概要把握速読+流れ整理
下読みで概観できたところで、精緻な理解を作るべく重ね読みをしていきます。
ここでの作業の目的は「精緻な理解=ミクロの理解」と「概要の理解=マクロの理解」を統合していくことです。
2回目の読書は、理解度90%のつもりで精読していきます。もし難解な文章があれば、とりあえず付箋を貼っておいて、3読目にあらためて分析・読解作業をしましょう。
そこまで終わったら、あらためて通読します。細かく理解をした上で、再度流れを確認することで、全体の構造を的確に把握するためです。
1-3.【出力確認】章のキーワードを10個ピックアップして整理
最初に、章のタイトルを書き並べて(あるいは目次を使って)、その流れを再確認してみましょう。(サンプル:下のホワイトボード画像の左半分)
もし目次を見直してもちんぷんかんぷんであれば、タイトルと照合しながら、もう1度読んでみる必要があるかも知れませんね!
その上で、章のキーワードと思うものを10個程度ずつピックアップしてみてください。これはあまり深く考えずにやる方がいいですね。次の作業に時間をかけた方が有益ですので。
下の画像の右側のごちゃごちゃしたメモがそれなのですが、下の段にはこんなキーワードが並んでいます。
親分・子分, 序列意識, 大企業, 年功序列, 能力主義,
タテ組織, 能力平等観, 同族意識, 終身雇用
そして、ピックアップしたキーワードをそれぞれ対比しながら、樹形図を作るようなつもりで上下関係を確認します。
画像の中で、キーワードどうしが線で結ばれているのが分かるでしょうか?
樹形図にはしていませんが、関係を整理し、確認作業を丁寧におこなっていきました。
これを終えてから、あらためて全体の構造、章と章のつながり、まとまりなどをタイトル、キーワードの両方を使って矢印などを使って整理、確認しましょう。
1-4.【文章出力】章の要約を60から100文字程度でまとめてみる
最後に、その章を読み直しながら、キーワードを使って章の要約を60から100文字程度の文章にします。
このとき、章のタイトルのキーワードを書き出しに使うとやりやすいでしょう。(下のサンプルの緑色の部分)
例えば、ホワイトボード画像の「2」と「3」のまとめはこんな感じになります。
- 「場」による集団は、ヨソ者と明確と区別する枠を持ち、それとの単一の関係、強い帰属意識を持つ構成員によって成立する。
- 「場」による集団は、場を共有する構成員による単一の関係、強い帰属意識による枠を持ち、他集団の構成員をヨソ者として排除する。
- タテ組織においては能力主義よりも能力平等観に基づく入社年や学歴による序列意識が機能している。それは大企業ほど終身雇用に支えられた強力な年功序列制となって現れる。
- タテ組織においては年功序列制、終身雇用制など、能力主義と相反する序列意識を反映した制度が採用される。それは強い能力平等観に根ざしたモノである。
これをすべての章について終えた後、もう1度、概要フォーカスのつもりでざっと流し読んでおくといいですね。
2.実際のワークの例
こちらは東京でおこなったビジネス読書道場・リアル読書会のホワイトボードです。
(課題図書は『タテ社会の人間関係』)
時間の都合で最後の「文章でまとめる」ところまでできたのは2章まででしたが、参考にしていただければ幸いです。
ということで、精緻な理解・人に概要を語れるレベルの読書理解を手に入れるための、「ちょっとハードな、でも間違いなく読書力が上がる」ワークを紹介してみました。
こういう作業を情報処理力を高めるトレーニングと思ってやっておくと、ポイントを的確につかむ力、要約して人に伝える力など、トータルの情報処理力が身につきますよ。
ぜひ億劫がらずに挑戦してみてください!
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社会人の方のための「読書力(熟読力)アップ講座」をオンラインで開講しています。
毎月提示される課題図書を読み、今回のような(月によって内容は変わります)ワークをおこなっていただきます。
ワークの成果物を提出(アップロード)すればフィードバック(アドバイス)ももらえますよ。d(^^*