【もうメディアに欺されない!】嘘を見抜く「眼」を養う入門書×3冊

日々のニュースで容疑者、つまり「犯罪者かも知れない人」が
顔と名前をしっかりとさらされ、
「この人が犯人です」とでもいわんばかりに報道されます。
 
私たちの世代であれば、松本サリン事件で、
第一通報者であり、最初の被害者であるご家族が
完全に犯人であるという決めつけのもとに、
しばらく報道され続けたことを憶えているでしょう。
 
そして、そういう「容疑者=クロ」という方向での
報道に、私たちは完全にならされてしまっています。
 
 
私の記憶に強く残っているのは、
遠隔操作ウィルス事件で逮捕された片山被告の報道。
 
逮捕当時、まったく状況証拠しか出ていない段階から、
メディア各社は、容疑者の私生活をあばき、
猫カフェに通っていたオタクというようなレッテルを貼って
印象操作を繰り返しました。
 
産経新聞のコラムでは、女性精神科医さんが
「非モテの代表」として採り上げ、侮蔑的にコキ下ろした記事を
平気で掲載していました。

これは名誉毀損で訴えていいレベルです。
 
しかし、残念ながら私たちも、似た思考にとらわれており、
場合によってはSNSで発信してしまっているかも知れません。

あなたは決めつけてない?

今回は別にメディアのことを批判したいわけではありません。
 
もし、私たちが、そんな記事を読んで「確かにねー」と思ってしまったり、
 
あるいは、テレビの報道を真に受けて、
そんな「容疑者」を犯人と決めつけてしまっているなら、
私たちもマスコミと同レベルの思考をしていることになるよね、
それって怖いことだよね、マズイよね、というお話。

メディア報道は「色」を付けて煽ってくる!

松本サリン事件の第一通報者家族もそうでしたが、
警察だけでなく、マスコミも、恐らく私たちの多くも「こいつが犯人だよね」と
決めつけてしまっていた悲しい事件は少なくありません。
 
これは、私たちのメディアリテラシー情報リテラシーに関わる
非常に重要な問題です。
 
ちょいと古い事件(#)で恐縮ですが、以下の資料ご覧下さい。

#何しろ私が予備校で小論文指導をしていた時に作った資料を引っ張り出してきたシロモノでして…

■テレビでレポーターが神妙な面持ちで、煽っている情景をイメージしてください。
近畿地方で、一人の女性が殺されました。
容疑者として逮捕されたのは、彼女の夫と、その愛人の2人。
殺された女性には多額の保険金がかけられており、なんと夫がそのお金を受け取っていたのです。
警察の調べに対して、愛人女性は「男性に指示された」と供述していますが、
今のところ男性の関与を示す証拠などは見つかっていません。

テレビや新聞の報道であれば、こういうレポートに続いて、
近所の奥様方の声や、被害者、加害者の生い立ち、人間関係などが
事細かに報道されます。
 
ただし、一定の「色」を帯びた状態で。
 
これに煽られてしまうと、物的証拠がないのに、
脳内で状況証拠を勝手に作り上げてしまいます。
 
現行犯でない限り、容疑者はあくまで「疑いがある」だけの存在です。
 
証拠がないのに決めつけてかかってはいけません。

この事件の例でいうと「多額の保険金」、「夫が受け取って」ということばで、自動的に「愛人と共謀した保険金殺人?」という思考が働いてなかったか、ですね。
夫婦がそれぞれ生命保険に加入して、相手を受取人にすることは実に自然なことです。そして「多額っていくら?」ということも書いていません。1000~3000万円ぐらいの保険金なら、それなりにあることですが。

実際に、どのくらい判断が狂ってしまうのか?

この殺人事件の話、1986年に起こった実話です。
 
これに関する新聞記事、事件の陳述書を読んで、人の判断が
どのくらい変わるかを、朝日新聞が調査し報道していますので、
そちらのデータをご覧下さい。(1993年11月19日朝刊より)

【調査】計502人を4グループに分け、下に挙げる事件について、それぞれ
次のような情報を見せて、犯人と思うかどうかについて質問
  • 1.新聞記事
    男性の逮捕を伝える朝刊と続報の詳細な記事計7本。「夫を共犯で逮捕。愛人自供『指示された』」(朝日新聞)、「妻に2000万の保険金 妻殺し、夫が受取人」(毎日新聞)など。男性は実名、写真付き。容疑者の話なし。
  • 2.陳述書
    無罪確定後、男性が弁護士会のヒアリングで話した内容。B4判2枚半。逮捕され、取調中に暴行を受け自白を強要された。また、自分が殺人を指図したとの供述を、捜査員が女性にさせた、など。
  • 3.上記の新聞記事と陳述書の両方
  • 4.短行記事
    女性と男性の逮捕事実の記事2本各約10行。弁護士がモデル的に作成。実名でかかれ、容疑者の話なし。

その結果がこちら。

 
当たり前と言えば当たり前なのですが、
「犯人と思う」「思わない」のパーセンテージが大きく変わってしまっています。
 
直接的な物的証拠がなくても、
外堀がどんどん埋められていきます。
 
そうすると、「自白の証拠能力」とか「推定無罪」とかいう
公正な判断はどこかへ消えていってしまう、というわけです。
 
ちなみに、この裁判、男性と女性の「共犯」として裁判が行われていましたが、
第一審は「証拠不十分で、男性は無罪」
 
検察は控訴しますが、途中で女性が「自分の単独犯」と主張を変え、
結局、控訴を断念し、無罪が確定しています。(女性は懲役8年の実刑判決)
 
新聞記事がどう煽ってこようと、
 
「でも、物的証拠も、本人の供述もないんでしょ?── だったら無罪だよね」
 
と、クールに判断できなければならないのです。

煽られない思考力、ロジカルな「眼」を養おう!

私たちは半ば自動的に結論を出す癖を持っています。
 
それはあたかも、方位磁針の針が、なんとなくゆらゆらしつつも、
一定の方角を指すのに似ています。
 
その時、十分な論拠、証拠がなくても、過去の自分の体験などが地磁気として働き、
一定の方向を指してしまうのです。
 
さらに残念なことに、メディアの情報に簡単に煽られて向きを変えてしまいます。
 
今回の遠隔操作の事件でも、状況証拠や容疑者の風貌から、
「あ、こいつならやりそうかも」と、少しでも思ってしまうと、
それがどんどん確信に変わっていってしまいます。
 
悲しいことですが、理性的に考えれば「まだ分からないよね」と思っていても、
想像力と感情のレベルで受け入れてしまうと、
私たちはそちらに引っ張られてしまうものなのです。
 
では、どうしたらそれを克服できるのか?
 
メディアの嘘を見抜き、欺されない、煽られない、頼れる自分を作るための
3冊の入門書から、その方法をご紹介します。

クールでロジカルな思考力を手に入れるための3冊

1.横山雅彦著『高校生のための論理思考トレーニング』

元小論文講師として一番お勧めしたいのが本書。
 
ビジネスは常に論理思考、ディベート思考で情報を精査し、
時代と問題を読み解いていかなければなりません。
 
いわゆる「ロジカルシンキング」ですが、その基本を学ぶことができます。

  • そもそも、証拠はあるのか?
  • その証拠は事実か?信頼に値するのか?
  • その証拠となったソースは信頼できるのか?
  • その事実でもって、その意見は支えられるのか?


  
実は、こういう「証拠(事実)」や「説明(ワラント)」にツッコミを
入れられるかどうかというのは「技術」の問題です。
 
ちゃんと学んで、日々のニュースを視聴しつつツッコミを入れる練習を
していくことで、欺されない、煽られない情報摂取ができるようになるものなのです。
 
横山雅彦著『高校生のための論理思考トレーニング』
『高校生のための論理思考トレーニング』

2.吉岡友治著『だまされない〈議論力〉』

ロジカルに考える場合、「事実」をベースにして考えていきます。
 
その時に「それは本当に真実か?」と問い直す眼を養えるのが本書。
 
言葉の定義を曖昧にしないことや、数値・グラフの真実を見抜くこと、
あるいは抽象的に見えるテーマや対立しているかに見える概念のとらえ方など、
章ごとに、ダメなものの見方、考え方と、その解決のテクニックを解説してくれています。
 
例えば、よくあるデータの歪曲として、
「戦後日本の犯罪率の増加」グラフを採り上げています。
 
こちらのグラフを見る限り、貧しかった時代から高度成長期にかけて
減り続けてきた犯罪率が、高度成長の終焉とともに激増しているように見えます。

   
しかし、これを「グラフの軸を適正化する」ことと
「同時期のアメリカの犯罪率の変化と比較する」ことで、
その嘘を暴いて見せます。(同様に、日本の「安全神話崩壊」についても)

  
このあたりは「初歩の初歩」というところですが、
様々な視点で、「うそ」を暴くテクニックを伝授してくれています。
 
吉岡友治著『だまされない〈議論力〉』
『だまされない〈議論力〉』

3.小笠原喜康著『議論のウソ』

上の本にテイストとしては似ていますが、また違った視点を提供してくれる良書。

  • グラフ、統計(数値)といった、一見、ツッコミを入れがたく感じるデータの「裏」や「あざとい見せ方」の見破り方
  • 「優先席付近では、携帯電話をお切り下さい」に見られるような「昔は真実だったかも知れないけど、時代が変わったんだよね」という落とし穴の避け方
  • 科学的に見せかけた手法や、その人の肩書きによって相手の目を曇らせるあざといテクニックに欺されない方法
  • ゆとり教育批判、学力低下論争のような、社会全体を覆うムードと、目の前に見える小さな断片で「やっぱりそうだよね」と結論してしまう短絡思考を抜け出す方法

といったような、これまた「ものごとを正しく見る」のに必要なテクニックを、
非常に分かりやすい筆致で教えてくれます。 
 
小笠原喜康著『議論のウソ』
『議論のウソ』

本を読んだだけではダメ。フィルターとして活用を!

こういったロジカルな思考法、ものの見方は、
社会人として必ず学ぶべき教養です。
 
それは、あなたをカモとしてしか見ていない人たちから
身を守るための自衛手段だから。
 
そして、大切なことは、学んだ技術と知識でもって、
日々のニュースを分析すること。
 
これは「なんとなく聞く、読む」だけではダメ。
 
紙に書き出して論点やロジックを整理したり、
他者の主張・ロジックと比較して点検したりしなければ
磨かれませんからね。
 
ぜひ、上記3冊をテキストとして、
丁寧なトレーニングを実践してください!

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