[14]速読の3ステージ このエントリーを含むはてなブックマーク 

 速読術の習得の過程には3つのステージがあります。それは、今のあなたの普通の読書の延長上にはありませんし、第2段階は第1段階の延長上にはありません。ですから、トレーニングを進めていく過程には、かならず停滞と飛躍があります。それぞれのステージがどのような読み方になるのか、イメージをつかんでおくことは、目指すべき方向を確認し、正しいトレーニングをする上で非常に重要です。

 速読には3つのステージがあると考えてください。そしてそれらは、ただスピードが上がっていくというものではありません。たとえば、2000文字レベルの速読術を習得した人が、そのレベルの目の使い方をどんなに高速化しても4000文字レベルには到達しないのです。今のあなたの読書もそうです。そのまま加速して2000文字レベルに到達することはできません。

 理解の仕方などは、今までの読書と変わりないのですが、意識の持ち方、目の動かし方などには大きな隔たりがあります。

 ですから、目指すべき状態を「なんとなく」イメージしておくことは、かなり重要だと思います。そうでないと、無駄な努力をしてしまうことになりかねません。もし、あなたが速読教室に通っているなら、あるいは体験レッスンなどに行くチャンスがあるなら、そこのいんすとらくたーに『目の動きを見せてください』と言って、見せてもらいましょう。そのインストラクターが本当に速読できる人なら、ちゃんと見せてくれるはずです。(見せてくれない人は、間違いなく「サラリーマンインストラクター」ですよ。だまされる前に帰ってきましょう。)

☆第1ステージ 1200文字レベル

 ふつうの人の2倍程度のスピードです。速読と言っていいかどうかは分かりませんが、もし熟読でこのスピードが維持できれば、それはかなり速いと思います。

 よく「日本人の平均は400~600文字」と言いますが、どのような本を、どのような目的で読んだスピードかを明示せずに、ただ「平均」と言ってしまっても、意味がありません。

 資格試験やミスの許されない仕事では400文字ペースというのは、かなり速いスピードではないかと考えています。

 それはともかく、この第1ステージは、それまでの読書とくらべて、大きく変わるところはない状態です。目の動きや情報処理の方法などの問題ではなく、「必要以上の音声化をしない」ということと、「ややリラックスを心がける」という2点ができれば、すぐにでも達成できます。

 逆に言えば、この2点が失われたとき、すぐに元のスピードに戻る可能性もあるのです。たとえば、試験勉強。あるいは重要な書類。これらは、ついついストレスを感じながら、丁寧に読もうとしてしまいます。難しいと感じたら、音読してしまっているかもしれませんね。

 このスピードは速く読もうという意識があれば達成できなくもないのですが、「速さ」にこだわると、ゆっくり読むべき部分までも機械的に読みとばしてしまうなど、雑な読み方になってしまいます。あくまで「自然に達成できる状態」でないと、実用的ではありません。

☆第2ステージ 2000文字レベル

 私が1冊の本を1回読んだだけでケリをつけようと思って精読・熟読を心がけるとこのレベルになっています。だいたい1700~2500文字の間で読むペースです。ただし2500文字で読む場合、それはよほど読み慣れたジャンルでない限りは雑な読み方になってしまう可能性が高いでしょう。

 このレベルでは、絶対に「速く読む」という意識があったら達成できません。本来、読書というのは「楽しもう」とか「○○について知ろう」というような目的があるはずです。それを度外視して、速さだけを求めて読んでも、記録上は速読になっているかもしれませんが、実践で役に立ちません。「速く読む」という意識は、読書という行為の中では必ず雑念になります。この雑念は確実に読書の質を低下させますし、「速く」という気持ちが『目』だけを動かして『意識(集中力)』とずれてしまう可能性もあります。
 読んでいるときはなんだか読んでいるような気持ちがしても、読み終わったときに、まったく読後感がないという状態になっているかもしれません。

 この読み方では「しっかり読んでいる」という気持ちが必要です。その意味で、これまでの読書と何ら変わりはありません。「音声化を排除」するようなことはまったく不要ですし、そのようなことをしていたら、おそらく理解度が伴わないでしょう。

 このレベルでは、もちろん1200文字のところに書いた2つの条件は必要です。そして実は1200文字と、読み方という点ではほとんど変わりがないと言ってもいいかもしれません。
 ただし、1200文字レベルの人がスピードを上げようと思って、目のトレーニングをしても達成できないのです。目の動きのスピードアップを全面に出す教室のメソッドでトレーニングをおこなっても、まったくスピードがのびない、のびたとしても理解度が伴わないのはそのためです。(欧米式の速読、視点の移動(跳躍)スピードの高速化をうたうメソッドは要注意です。)

 2000文字前後の読書をしている時の目の動きを観察すると、目の動きは速くなるどころか、見た感じではゆったりした状態になります。そして、動きが緩慢で、移動の幅が小さくなっています。

 これは、リラックスした状態で読み進めていくため、視野が広がっており、「読む」という意識に引っ張られて、必要最小限、目が動いているからだと考えられます。

☆第3ステージ 4000文字レベル

 SRRが理想とする、気楽でありながら、ちゃんと内容を楽しめる速読のレベルです。ただし、内容を詳細に語ったり、テストを解いたりすることは、さらに情報の並列処理をトレーニングして鍛えていかなければ難しいかもしれません。

 この状態は、擬似的に1行を視野に納めたような「つもり」で読む状態です。

 「擬似的に」というのは、「1行を視野に納めるということは不可能」だと考えられるからです。なぜ不可能かと言えば「視野の広さは脳が決める」のであり、行末と次の行頭で単語が分断されている場合、行末には意味のない「単語の切れ端」がくっついたような状態になっています。そして、脳は、この単語の切れ端を「意味のない情報」として扱い(無意識にですよ)、視野から排除してしまいます。

 ということは、擬似的に1行を視野に納めるということと、もう1つ、条件が必要になるのです。それは、前後の行とあわせて3行程度が視野に収まっている状態です。別に3行を同時に理解するということではありません。複数行を同時に読むなどというのは、読書ではあり得ません。文章は順番に追っていかなければ理解できないようになっています。

 大事なのは、視野を絞り込まずに「今、確かに意識でとらえている行」を処理しつつ、前の行の行末、次の行の行頭が、意識と無意識の中間あたりで、楽に処理されている状態を作ることです。

 行頭とか行末をしっかり処理したいという気持ちが働くと、視野が狭くなってしまいます。

 ただやはり行末の処理が甘くなってしまいますので、なんとなく視野を上下に波打たせるような感じに動いていくことになります。これは無意識にそうなってしまう、というレベルです。

 まぁ、これは4000文字の最終形であって、理想のカタチです。第1段階は、もっと1行ずつしっかりと意識して処理していくような読み方になります。

 広い視野の中を意識が走る、というイメージで読み進める状態です。目を動かすのではなく、意識が走る状態です。当然、意識が走れば目もつられて動いてしまいます。ですから、本当に微妙に、1行ずつ目が動くことになります。

 次の段階は「1行を広くとらえる」状態です。といってもやっぱり1行全体は視野に収まりませんので、上の方を楽にとらえます。そして、その視野の広さを保ったまま、次の行に移動します。このとき、行の下半分をとらえるつもりで移動させるのです。

 こうすることで、十分にはとらえられていなかった行末の部分を補うことができます。そして、次の行の下の方へ移動しながら、視野の周辺部で行頭部分もとらえてやります。

 何を言っているのかちょっとイメージしにくいかもしれませんね。

 簡単に言ってしまうと、1行ごとに「上半分をとらえる行」と「下半分をとらえる行」を繰り返してジグザグに視野を移動させていくわけです。ただし、視野を広く保っておくことで、視野の上下動は非常に小さなものになりますし、視野を移動させる過程で、ちゃんと1行全体をとらえていくことができます。

 このときも大切なのは「視野を絞り込まないこと」です。ただ、この第1,2段階の読み方は、リラックスという点で弱くなります。どうしても目を動かす、意識を走らせるという「よけいな作業」が必要になりますので、理解度が十分に上がらないだけでなく(実用レベルではありますが)あまり長時間の読書に耐えない可能性もあります。(もちろん、習熟度合いにもよりますが。)

 第1,2段階の「よけいな作業」がなくなると、非常に快適な読書になります。この読書は、ご理解いただけるかと思いますが、2000文字レベルからどんなにがんばってスピードを上げるトレーニングをしても、残念ながら到達できません。

 目のトレーニングをしっかりとおこなって、2000文字レベルをクリアした人が4000文字を習得できる確率は5割です(うちの受講生の場合)。この数字も「延長上にはない」ということを物語っています。意識改革というか、読み方の切り替えが必要になるんですね。目に頼る読み方をしている人は、どうしても第2段階で止まってしまい、実用的な4000文字レベルの読書に到達できないんです。

 以前おこなった東京レッスンに、オンラインレッスンの受講者の方が参加してくれました(プライベート会場で受講中)。その方は、どうしても2500文字の壁が越えられないから、その糸口をつかみたいということだったのですが、最初のガイダンスで「視野の広さ、意識のレベルを切り替えるトレーニング」をしただけで、4000文字を超えてしまいました。おもしろいものですね。でも、そういうことって、よくあることなんですよ。

 2000文字を超えられずに難儀している方は、まずはリラックスして文字を眺めるトレーニングが必要なのかもしれません。
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