速読術関連コラム

[12]速読術、事始め(1)

 前回まで2回にわたって書いてきた「速さ考」の内容と、ちょっと前後してしまう感じもしますが、あらためて「速読術」というものについて解説してみます。ただし、これまでに投稿した記事とかなり重複した内容になっています。どうぞご容赦くださいませ。

○速読術ってどんな技術なの?


 速読術というのは「速く読む技術」です。そして、それは「読書」であることに変わりありません。そしてその読書とは、今現在のあなたのおこなっている「読書」と、本質的に変わりないものと思ってください。
 ただし、これはSRRの主張する速読術のことであり、例えば「右脳」を強調する教室や流派の速読や、1ページ3秒を越えるスピードを求める速読術は、まったく異質なものとお考えください。ちなみに、脳科学的な観点からすると「右脳で本を読む」というのは、間違いと考えていいということです。そもそも「右脳」を強調している流派で、しっかりとした科学的な検証をしているところは、本当に少ないものです。そして科学的に検証しているところすら、結果を自分の流派の理論に都合のいいように解釈したり、理論をすり替えたりしているところがほとんどです。


 さて、「読書」であるということがはっきりすると、速読術がどのようなものであるかも考えやすくなります。


 「読書」というのは、ある目的のためにおこなうものですよね。時間をつぶすための読書であれば「時間を浪費する」ことが目的です。そして、その目的を考えると、「速さ」というのは、必ずしも絶対的なものでも、善と呼べるものでもないかも知れません。


 「速さ」は読書という営みの、ほんの1つの要素でしかありません。理解や感動、記憶など、読書という営みを考える上で重要な要素はいくつも考えられますよね。


 ですから「速さ」をいたずらに追い求めることは重要ではありません。目的にあった読み方こそ重要です。また「速さ」を考えるなら、一字一句を読むような読み方だけでなく、とばし読みや拾い読みなどの情報処理型(取捨選択式)の速読技法もあっていいでしょう。


 もちろん、速さを得られると、1冊の本を読み終えるまでの時間が短縮できますので、記憶が新鮮な状態で全体が理解できるようになり、その結果、ゆっくり読むよりも理解が深まるということは、よくあることです。


 とはいえ、往々にして速さは深さ(理解・感動)と反比例関係にあり、目的に応じて、そのバランスをとらなければいけません。


 仕事や学習に使うことを考えると、読書を「意識」の作用と考える必要があります。そして、その意識作用としての読書の限界は、SRRでの実績や佐藤泰正氏(ブルーバックス「速読の科学」の著者)の研究などを考慮すると、だいたい2500文字/分と考えられます。


 およそ1ページ10秒前後のスピードですね。ただし、この数値は「非常に経験豊富な読者が、得意な領域、馴染みのジャンルを読む際のベストエフォート」という意味合いが強いものですので、実際には1ページ12~15秒前後で読むスピード、つまり1500~2000文字ぐらいが仕事や学習に活用可能な現実的なスピードと考えた方がいいでしょう。


 このレベルを超えると、読み方ががらっと変わりますので、「がんばって3000文字/分を目指す…」ということにはならず、いきなり4000~5000文字/分というレベルになります。理解の仕方は、今までのあなたの読書と、それほど大きく質の異なるものではありません。あくまで「読み方」が変わるだけです。(おそらく、顕在意識と潜在意識の両方のアンテナ・チャンネルを、ほどよく活用しながら理解しているのではないかと想像しています。ですから「脳に伝わる感覚」は変わりますね。)


 このレベルは、その人の読書経験などにも非常に大きく左右されますが、仕事や学習では「復習に使う」、「ざっと全体像を把握する」という以上の活用は難しいと考えた方がいいでしょう。
※SRRの受講者の中にも、1ページ3秒程度までなら仕事上、問題なく活用できるとおっしゃる方もおられますので、あくまで「多くの方は」ということで書いていることをご理解ください。
 また、仕事や学習という「記憶」や「緻密さ」を強く意識しない場面であれば、実用的な読書が可能です。


 某教室の受講者の方が「教室に通ったおかげで、10,000文字ぐらいの速読を修得できました。しかし、仕事の書類を読むスピードは、これまでとまったく変わっておらず、このスピードを2倍にできないかと思っています。」というメールをくださったことがあります。


 実はこのような悩みは多いようです。もちろん、新聞や雑誌など、軽く読むものを、サッとこなせるというのは、それはそれで価値のあることです。
 また、そのような軽い読み物で実践的なトレーニングをして、徐々に実力を高めていくという方法は有効です。


 しかし、実は仕事や学習などの場面で活用できる速読力を身につけるためには、それにふさわしいトレーニングをしなければならず、その方のしてきたトレーニングが、まったく生きてこないという可能性もあるのです。


 そういう意味でも、自分が何のために速読術を身につけたいのかということは、よく考えておいた方がいいですね。「速読」というものそれ自体が目的になっている人を見かけますが、そうすると理解度の上がらない雑な読書で満足して「測定上は速くなったけど、実践では使えない」ということが起こってしまいます。


 また、費用対効果ということを考えると、費やした経済的、時間的な投資に見合う成果が返ってくるのかどうかも重要な問題ですよ。特に資格試験を目指す人は、安易に速読術に手を伸ばさない方が身のためです。そのような方は、むしろ「高速学習」の手法を求めた方がいいでしょう。


 ただし、2~3倍の速さでもいいとしても、その速さが本物の技術として使いこなせるレベルになるまでには、かなりのトレーニングが必要になります。


 時々「短期間で2倍」というようなキャッチコピーをうたっているところも見かけますね。実際、2~3倍というのは「気持ち次第で実現できる」ものです。高速道路から一般道に降りたときの「風景がゆったりと流れる感覚」だけでも実現できますし、「速く読もう」という気持ちだけでも実現できるかもしれません。


 しかし、高速道路の効果は10分程度で元に戻りますし、「速く読もう」という気持ちは、仕事や学習など「しっかり読もう」というストレスの前では無力です。


 そういうわけで、2~3倍というレベルであっても、しっかりとしたメソッドでトレーニングをしなければなりません。ですから、2~3倍の速さを手に入れたら、どういうメリットが産まれるのかということをしっかりと考えてくださいね。


 おっと、長くなってきましたので、今回はここらで。
●●

投稿者 てら : 2006年06月14日 18:22 

[11]速読における「速さ」考(2) ビジネス速読術講座トップへ戻るカテゴリ:速読術関連コラムのトップへ[13]速読術、事始め(2)

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.office-srr.com/mt/mt-tb.cgi/274

コメント

コメントしてください




保存しますか?