速読術関連コラム

[05]意識の高速化?

 速読を修得するのに「脳の理解・処理能力を高める必要があるか?」というと、基本的には「ない」と考えていいでしょう。もちろん、やるに越したことはありません。しかし、基本的に脳が抱える「速読を阻害する要因」を取り除いてやればいい、と考えてください。まぁ、脳が働きやすい環境作りといえばいいでしょうか。

 速読術というのは「速い読書」です。
 
 この「速さ」を実現するために、脳の処理能力を高めなければいけないのではないか?というご質問をよく受けます。
 
 しかし私の経験では、読書経験が極端に少ない人でない限り、速読を修得するために脳を鍛えるということは必要ないと考えられます。理解を上げるために必要なのは、脳のトレーニングではなく、意識改革なんですね。
 
※読書経験が極端に少ない人、そもそも学校で習う国語が苦手だ(だった)という人はトレーニングに取り組むのと並行して、日々の読書や速耳トレーニングを通じて、活字情報を理解する力をつけていかなければなりません。
 
 当たり前なのですが、読書というのは「意識」の作用です。もちろん、中心的には意識が担当していますが、それを支える無意識(意識下)というものが非常に大きく関係しています。ですが、やっぱり読書は意識でおこないます。
 
 時々「右脳で読む速読」なるものを耳にしますが、右脳では読めません。というか、読書は両方の脳を使います。ですから「右脳速読」というのは言葉のアヤでして、本当は「潜在意識速読」なんです。まぁ「右脳」という言葉はもはや妙な権威(?)をもっていますから、業者としてはこの言葉を使いたがるわけです。(これが「マイナスイオン」というのと同じくらいうさんくさいものであることは、知っておいてくださいね。)
 
 それはともかく、潜在意識というのは非常に情報処理が速いらしいのです。しかも大量に入力可能らしいです。ただしあくまで「らしい」のです。というのは、意識でとらえられないから潜在意識というわけですよね。ということは、たとえ潜在意識にインプットされたとしても、私たちはそのインプットされた情報を活用することは非常に困難なのです。
 
 その潜在意識にインプットされた情報を活用する方法としてポール・R・シーリィ氏の「Photo Reading」という手法(※)があるわけですが、まぁ通常の読書とまったく違うものであることは、著書を御覧になったことのある方はお分かりでしょう。
※Photo Readingおよびフォトリーディングは、米国ラーニングストラテジーズ社の登録商標です。
 
 ですから、私たちが読書を行うのは「意識」の働きだととらえておいていいでしょう。そして、速読というものを考える際には、その「意識作用」を高速化することを考えなければいけないのです。
 
 ですが、がんばって速く読もうとしても理解度が下がるばかりで速くは読めません。これが難しいところなんですね。何か理解度を上げるトレーニングはないものか?という相談もよくあるのですが、残念ながら「ない」というのが正直なところです。
 
 脳を活性化させ、集中力をアップさせることが理解度を上げることに間接的につながるということで、「速耳トレーニング」をお薦めしていますが、「文脈を理解する力を付ける」のはやはり読書経験を積むしか方法がないでしょう。
 
 話を「意識の高速化」というところに戻します。
 
 「本をがんばって速く読む」状態は、「速耳で高速な音声を聴く」のと似ています。「がんばって読む」時、私たちの視野はドンドン狭くなっていきますよね。情報処理を小さなスポットに「集中」し、精度を高めようとするわけです。しかし、視野が非常に狭くなってくると、意識・意識下でとらえる情報がどんどん少なくなっていきます。音声はもともと1文字ずつしか入ってこないので、この集中して読むのと非常によく似ているというわけです。(厳密に言うと違うのですが…、まぁ端折って言うと、ということで。)
 
 もしみなさんが、速く読もうとする時に、速耳の音声のように高速に心の中で音読して(内声化といいます)いるとしたら、まさにその状態です。
 
 この状態の何が問題かというと、「今処理しようとしている情報」に意識がかかりっきりになると、その前後の情報と結びつきにくくなってしまい、全体として理解が悪くなるということなのです。
 
 通常、意識で理解する文字数は数文字と言われています。そして、視野の周辺部で「意識下」によってとらえられている文字数が、その2~3倍と言われています。この意識下でとらえられた情報が、「今、理解している内容」を支えているのです。
 
 ということは、視野を狭めてしまうということは、この意識下でとらえているはずの情報をカットしていることになるわけです。というか、それをカットしてまで、「今の情報」にかかりっきりになろうとしていると考えられます。
 
 事実、難しい単語、漢字が使われている文章や、覚えたての外国語の文章を読む際、私たちの視野は驚くほど狭くなっているのです。
 
 さて、ここまで解説したら「速く読んでも理解度を落とさないようにするためにはどうしたらいいのか」ということが見えてきましたね?
 
 そうなんですよ。速く読もうとすればするほど、意図的にリラックス状態を作って、視野を広げてやるようにしないといけないのです。
 
 「もっと理解を」と考えると、私たちは「集中」するように習慣づけられています。ゆっくり読めばよく理解できると思いこんでいるようにも見えます。いや、むしろ「もっと理解を」とストレスを抱えれば抱えるほど視野が狭くなり「必然的にスピードを落とさざるを得ない」ようになっているだけかもしれません。
 
 そのような習慣を捨てること、つまり難しいなと考えても、あえてリラックスを決め込み、視野を広く保って、楽に読み進めること。このことが「速く読んで、理解を落とさない」ことの第一歩なのです。
 
 時々「1日○分間で手軽に修得」というようなことを書いている業者さんがいます。あるいは「高速道路から降りた時の意識の高速化」から「誰でも」と主張するところもあります。いずれにせよ、そのような手軽さをうたうことは商品を売る立場としては「たくさんのお客さんをつかまえる」上で重要です。
 
 しかし、私たちの読書の長~い経験・習慣を変えていくということを考えるとそれが簡単なことではないことは容易に想像が付きますよね。
 
 そういうわけで、「長らく速読トレーニングをやっているけど、なかなか1000文字を越えられない」という方は、まず「1200文字ペース」がどのくらいか計算し、そのペースを維持して読み進めながら、リラックスして視野を広げてみたり、少し理解を上げようとがんばってみたり、「リラックスと集中のバランスをつかむ」工夫をしてみて下さい。
 
 今のままの状態、つまりがんばって読む読み方では、2倍のスピードでも無理があります。逆説的なようですが、気楽になることが理解度を上げる重要なポイントになると考えてください。最初は覚悟がいるかも知れません。ですが、この感覚をつかむことができれば、読書が非常に楽になりますよ。
 
 ちなみに、リラックスして視野が広がったからといって、難しい本が理解できるようになるわけではありません。当たり前ですが。ただ、前後の結びつきが得やすい分だけ「読みやすく」なり、結果として「理解が落ちない、あるいは理解が高くなる」だけです。(妙に小難しく書かれている学者さんの本などは、細部を気にしない方が全体の論をよく理解できることも十分にありますし。)
 
 また、これまで視野を狭くしてしまうことで理解の質を落としていたものを「本来、あなたがもっている脳力を十分に引き出す」ことができると、それだけでスピードアップ&理解度アップは可能だと考えられます。そして、そのスピードは1200文字前後、上限は1700±300文字程度と考えていいようです。(これまた、その人の経験などもろもろの条件によってまったく変わりますから、非常にざっくりした数字です。)
 
 ということで、今回のポイントです。
 
○速く読んだら理解が落ちる、という人は、「がんばって速く読もう」としている可能性があります。「がんばる=視野を狭くする」という状態になっており、意識の理解を助ける意識下からの情報を遮断しているわけです。
 
○まずは、開き直って「速さ」に慣れてください。およそ1分で3ページ程度を読み進めるスピードで読みながら、リラックスしたり、集中したりしながら、内容がスムーズに入ってくる「視野の広さ=リラックス度」を探りましょう。これは実験&トレーニングですから、「しっかり読む」を前提にしないようにしましょうね。なお、このトレーニングは、ステップ2の「目標を超える(2)」で紹介している文字追いかけトレーニングでおこなうようにするといいでしょう。
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投稿者 てら : 2006年06月14日 15:27 

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