ビジネス速読術講座
[50]フォーカスを明確にする
とあるビジネス雑誌で「速読で読書を積み重ねると文章力が上がりますか?」と聞かれました。
それに対して、きっぱりと「上がりません」とお答えしました。
これはある意味で当然のことですよね。本を読んだだけで文章力が上がるなんてことがあれば、それは本当に素晴らしいことなんですが、残念ながらそんな夢のような話はありません。
これは「速読だからダメ」ということではなく、ゆっくり読んだとしても同じです。
なぜかというと、文章が上手になるということは、細かな表現(接続詞・助詞・助動詞などの言葉選びまで含めて)や文章展開に意識を向けて、そこから吸収するということが前提になります。
普通、本を読む時にはそんなことを考えながら読みませんよね?
私は昔、予備校・高校で小論文指導をしていました。
その時に生徒達に言っていたのは「本を読め」ということと同時に、「名文を筆写せよ」ということ。この2つです。
本を読むのは、情報を入手するためであり、視野を広げるためです。
言葉は世の中を見て、分析するためのアンテナになります。私たちって自分の気持ちですら言葉なしでは分析できないんですよね。言葉が貧弱だと自分の気持ちを分析できない。分析できないからもやもやする。もやもやして感情がコントロールできない・・・ということもあります。
芥川龍之介の「羅生門」を読んだことがある方は、主人公が「センチマンタリズム」という言葉を知らなかったが故に、自分の感じているイライラを(イライラの原因も、自分がイライラしていることすらも)理解できず、ただにきびを触りながらもんもんとしていた場面を思い出すことができるのではないでしょうか?
そんなこんなで「言葉を手に入れるために本を読め」というわけです。
しかし、それでは文章は上達しませんから「名文を写せ」ということも必要になります。
ただ、名文を写したら文章が上手になるかっていうと、実はそうではありません。
「文章構造や言葉遣いに意識を向けながら筆写する」と文章技術の向上に役に立つのです。
つまり、行為そのものではなく、その行為のどこに意識を向けるのかが重要なんですね。これを「意識のフォーカスを明確にする」と表現してみました。
全集中力を文章構造・言葉遣いにフォーカスし、それをじっくりと見つめるために、あえて筆写という時間のかかる作業をおこなうんです。
さらさらっと流してしまっていては、「あ、分かる」で通り過ぎてしまいます。
逆に、ある本から何かを学びたい時には、何を学びたいのかという目的意識をを明確にして読むようにします。そうすると、短時間で読めるようになりますし、学ぶべきポイントをしっかりと吸収することができます。
学びのための読書は目的意識を明確にすること。TPOの「Purpose」ですね。「目的にフォーカスした読書」という言い方もできるでしょう。
学びが目的なのに「一字一句」に意識を向けてしまうと、頭の中でばりばり読み上げる読書に終始してしまうことになりかねません。そういう読書は満足感は高いのですが、それは疲労感から来る自己満足です。
成果主義の読書を志向するなら、まずは「言葉」ではなく「文脈」にフォーカスして快適な下読みをおこない、その上で「目的」にフォーカスした重ね読みで記憶にしっかりと残す読書にしなければなりません。
ぜひ読書や学習の前に「フォーカスを明確にする」という作業をおこなって、成果の上がるものにしてください!
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