ビジネス速読術講座

[49]記憶に残す読書

 まずそもそも、「読む」ことと「記憶する」ことは別問題というのが、SRRの基本的なスタンスです。

 読んで理解したからといって、記憶に残るとは限りません。もし読んだものがすべて記憶に残るようなら、試験勉強なんて要りませんよね!
 
※正確に言うと、記憶の深いところには残っているという説が有力らしいのですが、その記憶が「容易に取り出せるものではない」ということで「記憶に残らない」という言い方をして、間違いではないでしょう。
 
 逆に、記憶を意識しすぎるとストレスを感じてしまって、逆に理解度が落ちた上に、頭にも残っていないということも、よくあります。
 
 そういうわけで、まずは読むことと記憶することは別と理解しておいてください。

 それでもやはり、読後の満足感を高めたり、学びの成果を高めたり、そういう目的のもとでは、記憶に残すような読み方をすることは有意義です。

 ちょっと長くなりますが、「記憶に残す読書」ということで、その具体的な方法・ポイントを書いてみたいと思います。

 私の講座を受講してくださった方はご存知のとおり、私は「実演」ということで、1ページを5~8秒程度で読み、その内容を語ったり、ホワイトボードに書き出したりすることで「ちゃんと読んでますよ」ということ
をお見せしています。
 
 だいたい2分間で16~18ページ程度を読んで、書き出す単語数は60~70語程度(※)です。
 
※時間に制限を設けており、これは数分間で書き出す量です。
 
 これは、別に「すごい」というほどの記憶力ではなく、記憶に残すことを意識した読書をし、書き出すトレーニングを続けていれば誰にでも可能なレベルです。
 
 時々、速読教室が「記憶法」を看板に掲げていますが、そんなたいそうなことを考える必要はありません。もちろん、「右脳に記憶」とか「写真記憶」などというように、絵に描いた餅のような話も必要ありません。
 
※余談ですが、記憶術の強者が都内にある「記憶法」を看板に掲げる2つの速読教室に出向き、講師に「記憶力勝負」をいどんだそうです。が、いろいろ言い訳をして受けてくれなかったそうです。
 彼曰く「記憶法の看板はインチキだ。メソッドもデタラメ、講師も偽物」と…。(同じ事を、別の記憶術指導者の方もおっしゃってました。) 
 ちなみに、速読の実演も見せてくれなかったそうです。野球教室で「素振りを見せてください」って言われて断るコーチはいないと思うんですけどね~。(--;

 では、なぜ「記憶に残す読書」が必要なのか?ということですね。
 
 それは、1つには「読書の満足感を高める」というところにあります。同じ理解度なら、当然のことですが、頭に残っている方が満足度が高い訳です。いや、多少理解が雑になっても頭に残る読み方であれば、かなり満足度が高い読書になります。
 
 そして、もう1つ。本を2回以上読むという前提で考えた時、1回目の読書(下読み)ではスピードを優先します。このとき、細部の記述に目を向けて精度を上げることよりも、全体の流れを意識して記憶に残した方が次の読書の指針として活用しやすいものです。
 
 1回目の読書で、本のインデックスを頭の中に作ってしまう訳ですね。 

 普通、スピードも速く、記憶も確かに、理解度も高くなんて贅沢な望みはかなえられっこありません。そういうことができるのは、十分な読書量をこなした達人・熟達者だけです。
 
 少なくとも、私のような凡人、苦労してやっと速読を身につけたような人間には、そんな高度なことはできません。(レベルが低いと言われればそれまでですが…。^^;)
 
 ということで、目的(purpose)と状況(occasion)を意識して、「記憶」を効果的に活用しようって考えるわけです。
 
 ただし、「記憶」には魔法はありません。ひたすら「記憶」の原理に基づいて効果的な方法を採用し、後は繰り返しトレーニングするしかありません。

 ということは「記憶に残す読書」というのは、普通の読書とは違う取り組みと思った方がいいってことなんです。通常は「味わう」とか「楽しむ」とか「理解する」ということを基本にして読書をおこない、その結果として記憶にこういうものが残っていた、なんて話になります。
 
 ちなみに、これまで出会った読書の達人は、普通に読んだら、ほとんど文章全体が記憶に残っているようでした。書き出しを始めたら終わらないんですよ。(^^; ほとんど全文が出てくるような人もいました。そして、そういう人たちって、レッスンを30分ぐらい受けるだけで、分速5000文字とか1万文字とか到達しちゃうんですね。
 
 これって理解・記憶のベースとなる長期記憶が非常にしっかりとしているから可能なんですね。いわゆるスキーマ(理解の前提となる知識の枠組み)が十分にある状態。
 
 将棋の名人さんが、他人の対局を眺めているだけで棋譜を覚えてしまうようなものだと思っていいでしょう。ちなみに、名人でも素人の対局は覚えられないか、覚えにくいのだそうです。これは記憶のデータベースにない手が続くからです。つまり、将棋名人の記憶力もDNAの問題ではなく、「場面限定」のものであり、かつ「長年の修行の賜」なんですね。
 
 さて、横道にそれてしまいましたが、記憶に残すことを意識した方がいい読書というものもあります。これはTPOに応じて考えなければいけません。
 
 例えば下読みで、頭の中にざっくりとしたインデックスを作りたいような場合、あるいは他の人と、その本について語り合わなければいけないような場合ですね。
 
 では、そういう時、何を意識して読書に取り組めばいいのか。
 
 まず大切なことが1つ。
 
 絶対に「覚えるぞ~」なんていう気合いを入れないこと。
 
 もちろん、「今から読む内容は、しっかり頭に入るぞっ」っていうアファメーション的な気合いは必要です。が、これも読み始める前のお話。
 
 気持ちの面での基本要素としては

1.スタート前:気合い&アファメーション

2.読書中:ひたすら弛緩集中(リラックス)
 
3.終了後:アファメーション「よし覚えた」&内容をさらっと思い返す
 
4.想起作業:リラックスしてぼんやり意識を記憶に向ける
 
という感じになります。
 
 で、次に記憶の要領の説明ですが、その前に、記憶というものの特性について確認しましょう。
 
●重要ポイント1 記憶は、がんばったからといって残るものではない。
 
 これ、すっごく重要です。しかも、私たちがついつい忘れがちになることです。
 
 記憶するぞと思って、一生懸命に読んでも、ストレスで内容の理解がおろそかになるだけで記憶に残りやすくなることはありません。
 
 これは、誰しも学生時代に経験済みではないかと思います。(^^)
 
 そして、もうお分かりかと思いますが、これは上につらつら書いてきたことなんですね。リラックスしていいよってことです。
 
 次です。
 
●重要ポイント2 記憶は関連性の中でのみ残る。
 
 人間の記憶というのは弱いもので、何かを覚えようとすると、それをすでにある記憶に関連させないと残りにくいという性質があります。
 
 ゼロから記憶を構築しようと思ったら、ひたすら何度も何度も繰り返すしかありません。その意味では「記憶は反復によってのみ残る」という側面もあります。
 
 あるジャンルを初めて学習をする場合には、まず一通り流して、記憶のフレーム、骨格のような大枠を作っておいて、そこに細かな用語などを関連させていく必要があります。
 
 「学習は全体から細部へ」ということも重要なポイントです。こうやって、大ざっぱな記憶、大枠の記憶から徐々に細かいことを記憶していくことを精緻化と呼びます。
 
 これに関連して、というか、ここから発展して次のようなことも言えます。
 
●重要ポイント2.5 情報の行間を埋めると記憶に残りやすい。
 
 記憶しにくい代表は単純暗記です。無意味な独立した情報ですね。
 
 例えば本屋に行って、本を探します。その時、同じ棚にある本のタイトルは、一通り確認していきますよね。でも、それらは見て、読んで、確認はするけど覚えていることはほとんどありません。覚えようと思うと大変な作業になります。
 
 本の内容でいえば、文章を覚えるのは楽ですが、箇条書きの部分は大変です。
 
 その関連性の薄い沢山の情報を覚えるために、語呂合わせをしてみたり、体の部位に当てはめていったり、いろいろな「記憶術」のテクニックがあるわけです。

  これらは、関連性のないものに対して、自分の内部のイメージとの関連性を持たせることで覚えやすくしているわけですね。(後は、イメージ化するという要素や、印象づけるという要素が働きます。)
 
 でも、記憶術なんてことをいちいち覚えるのも面倒って方も多いはず。というか、私がそう。イメージ力(いわゆる右脳的能力)のかけらもない私には、記憶術をマスターするということ自体が不可能っぽいです。
 
 まぁ、ですからあまり難しいことは考えない。「行間を埋める」ってのは、そういう記憶術の原理を使いましょうってことです。
 
 例えば「タヌキがイチゴショートケーキを食べています。キツネがチョコレートケーキを食べています。」という文があったとしますね。
 
 タヌキとイチゴショートの組み合わせと、キツネとチョコケーキの組み合わせに意味はありませんから、時間がたつと記憶があいまいになってきます。
 
 そこで「タヌキ」と「イチゴショート」、「キツネ」と「チョコケーキ」の、それぞれの溝を埋めてやります。
 
 例えば「タヌキはぽんぽこお腹を気にしてダイエット中。ケーキを食べる時は、ヘルシー志向でフルーツ系を選択」、「キツネは夏に向けてこんがり小麦色の体を目指しています。体の中にも小麦色色素を貯えようと、チョコレートを選択」ってな感じです。
 
 無茶苦茶強引ですが、これでとりあえず「行間を埋める」作業ができたと思います。2つの情報の間に「関連性が見えた」わけです。
 
 これなら、きっと来週のメルマガで「タヌキはどんなケーキを食べましたか?」って質問されても答えられるはず。(^^)

●重要ポイント3 記憶は無理に残そうとしなくても、そこそこ残る。
 
 人間の脳は見たものをすべて覚えているなんていう説もあります。ただし、これは誰にも確かめることは出来ませんし、詳細な情報(ディテール)は残っていないだろうという学者もいます。
 
 ですが、1つ確かなことは「意識のフィルターをくぐらせた情報は、確実に記憶に残る」ということです。ただ、思い出すチャンネルをなくしてしまうだけなんです。(ただし、復習をしないと1ヶ月程度で消えてなくなるとも言われています。)
 
 だから大切なのは確実に意識のフィルターをくぐらせることです。
 
  (^-^)  (^_^)  (^-^)  (^_^)  (^-^)  (^_^)  (^-^)
 
 さて、ここまで記憶に残す読書を目指す上で、知っておいていただきたいポイントを3つ紹介しました。
 
●重要ポイント1 記憶は、がんばったからといって残るものではない。
●重要ポイント2 記憶は関連性の中でのみ残る。
         ->情報の行間を埋めると記憶に残りやすい。
●重要ポイント3 記憶は無理に残そうとしなくても、そこそこ残る。
 
という3つでした。
 
 結局のところ、記憶に残す読書というのは、これらを踏まえた読書をするってことです。
 
 ポイントの1番目については、前の号で解説したとおりです。急緩急緩のリズムで取り組むってことでした。
 
 ポイントとして挙げると・・・

★実践ポイント1  読んでる時は「緩」のリラックスで♪
 
ということになりますね。
 
 大事なことは、ポイントの3とセットで考えて、「がんばって覚えようとしなくっても、意識のフィルターを通してやりさえすれば、ちゃんと自分の脳は記憶してくれる」って安心感を持って読むことです。
 
 レッスンの時に「がんばらないでくださいね」って言っても、どうしてもがんばってしまう人が多いんです。(^^;
 
 そして、がんばっちゃうから読書スピードも落ちて、理解度も下がって、しかも記憶にも残っていないという最悪の状態になります。
 
 「覚えよう」というストレスが視野を狭めます。そして、無意味に(いわゆる「無駄な努力」ってやつです)気合いを入れながら、一語一語を記憶に残そうしてしまい、前後の結びつき、文脈の流れに意識がいかなくなるので「関連性」が切れてしまうんですね。
 
 確かに「覚えよう」という気持ちを持つよりも、むしろ今読んでいる内容が文脈の中でどういう位置づけになっているか確認するようにするといいですね。
 
 つまり、一字一句を頭の中で数珠のようにつないでいくのではなく、すべての情報を、文脈・テーマ、あるいはその章・単元の見出しとの関連性で読んでいくわけです。
 
 まとめると、こう言えるでしょうか。

★実践ポイント2  すべての情報は文脈との関係性で整理する
 
 これは「読む」というよりも「整理する」「処理する」感覚に近いと思ってください。
 
 そして、具体的な事例や、なじみのある話がでてきたら、流れを損なわない程度に、軽く「自分の過去の体験やスキーマ」に引っかけてやるようにします。「あぁ、あのことね。」と軽く意識的に確認作業をしてやるんです。
 
 実はこの3つ目のポイントこそ、記憶にがっちりと残すポイントにもなります。
 
★実践ポイント3  時々、スキーマにひっかけるつもりで読む
 
 例えば、1冊の本を俯瞰するような読み方をしようと思ったら、まずは「本のテーマ」を強く意識します。
 
 そして「章のタイトル」や「小見出し」はギュッと意識して、本のテーマとの関連性を意識しましょう。
 
 そこからは、「小見出し」と「小見出し」の関係性をつなぎつつ、「本のテーマ」との関係性を思い浮かべながら読みます。読む時は「小見出し」と「本のテーマ」の行間を埋めるつもりで、内容を整理していきましょう。
 
 こういう読み方をすると、いわゆる「本文」が「小見出しどうし、あるいは小見出しとテーマとの行間を埋めるための情報」扱いになります。これなら、多少の読み落としや読み違いが起こったとしても、全体に大きな影響を与えません。かなり雑に読んで、拾えるところだけ拾っていっても十分に全体の流れがつかめるようになります。
 
 もちろん、小見出しはしっかりと意識して読んでくださいね。理解度A~Bのつもりで。その分、本文はD程度で軽やかに流します。軽やかにというのは「がんばって速く読むぞ~」などと力むのではなく、リラックスして情報を受け止めながら、と理解してください。
 
 こういう読み方、処理方法を採用することで、読書の効率が劇的にアップしますよ。
 
 実際、3日間レッスンで2000文字/分ぐらいのスピードで読めるようになった方が、新書1冊を30分程度で処理できるようになります。処理というのは「下読みのための通読」という目的にそった読み方です。
 
 読み進めるに従って、小見出しとテーマとの関係が明確に見えてきますので、大胆に「完全無視」する段落や章が出てくることもありえます。それでも、全体の流れに支障がなければOKってわけです。
 
 読書スピードは2000文字でも、実際には6000文字に匹敵する効率で本を処理できるわけですね。d(^^*
 
 文字情報だけで解説するのは、ちょっと難しいな~、伝わりにくかったかな~と思いますが、以上、記憶に残す読書、下読みの読書の参考にしてみてくださいね。
 
 ここからさらに記憶力をアップさせたいって方は、速読術PM2の「脳力アップトレーニング」のメニューにある「イメージ記憶トレーニング」を毎日1回やってみてください。レベル3を卒業できるようになるころには、きっと記憶力がメキメキっとアップしているはず!
 
 それから上で紹介した読み方で、新聞や新書を読んで、書き出すトレーニングをするのもお薦めです。1~3ヶ月ぐらい継続してやらないと効果を感じないと思いますが、やればやった分だけ力がついてきます。
 
 ちなみに、トレーニングをしていない状態での書き出し語数は、4~10語ぐらいになる方が多いですね。これを継続していくと、だいたい数十語は出てくるようになりますよ。v(^^*
 
 ぜひ、成果のあがる読書を作るためにも、こういう読み方、あるいはトレーニングにも挑戦してください!
●●

投稿者 てら : 2007年04月26日 11:26 

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