ビジネス速読術講座
[25]下読みと目的意識
M.J.アドラー著「本を読む本」は今から60年以上前に刊行された本ですが、読書を行う上での速読の必要性を語っています。氏は、戯曲にせよ教養書にせよ、「木を見て森を見ない愚を犯してはならない」(P.46)と述べ、それには速読やざっくりとした下読みが有効であるとしています。
ただし、速読を薦めると言っても日本の速読教室のような無茶な速さを求める速読ではなく「さまざまな速度の読み方を教えるべき」とし、「読者が本の性質や難易に応じて自分で読みの速さを変える」ことの必 要性を説いています。これはまさにSRRの主張する目的に応じて速さと理解度をコントロールする速読ですね♪v(^^*
読書の際に「下読み」をする人はあまり多くないように思いますが、みなさんはいかがでしょうか?斉藤英治氏やポール・R・シーリィ氏の著書で「プレビュー」を採り入れたシステマチックな読書法が紹介されてからようやくその意義が認知されるようになった気がしますが。
もちろん、無意識にやっていたという方もおられるでしょうね。前書きを読んだり、腰帯を読んだりするのも立派な下読みといっていいでしょう。amazonで購入する人は、読者や出版社のレビューがこれに該当すると思っていいかも知れません。
おそらくその段階で「買うか、買わないか」という選択を行っているはずです。つまり「目的に合わせて読む」ことの第一歩を実行しているんです!(^-^)b
でもそれはあくまで第1段階でしかありません。「この本を読むべきか読まざるべきか」という段階。そこで「読むべし」と決断したら、続いて本当の下読みに取りかかることになります。1冊全体を概観する段階です。なぜ概観する必要があるのかというと、これは「理解」の質を高めるためです。
私たちは学校の授業などを通じて、読解力を付けるために、接続詞や代名詞など品詞レベルの分析を重視した読み方を身につけてしまってはいないでしょうか。1つの文の表現や、文と文のつながりを分析的に読むというスタンスです。私が「ミクロの視点からの理解」という部分です。
確かに作者の主張は、それを凝縮したような1文、1フレーズに表現されていることが多いものです。また、文脈、つまり文章の流れをたどっていく作業が読むという行為であることは間違いありませんから、そのようなミクロの視点からの理解なくしては本は読めません。そういう意味では別に学校で教わった読書が間違いということではありません。
ですが、その一方で大胆に速読し概要をつかむ読書があまりにも軽んじられてきたという気がします。英語には「Rapid Reading」の練習があったのに、国語では「速読」の練習はありませんでしたし。
絵画を楽しむ時に、いきなり絵にぐいと近づいて細部から見る人はあまり見かけません。まず全体を楽しみ(※)その上で細部の色遣いや筆致の繊細さなどを楽しむのではないでしょうか。
※ただし、目の動きは無意識に絵の輪郭をなぞったり、細かな描写の部分に視点が集まったりして、分析的に動いています。
文章も同じように考えるべきではないかと思うわけです。細部の理解と同様に、いやそれ以上に、全体として作者が何を主張しているのかも大事にすべきです。
そのためには、読みにくい箇所など流れを滞らせる部分を徹底的に無視し、例やコラムをすっ飛ばして1冊を通読してしまいましょう。スピーディーに読むことで、記憶の新しいうちに読み通すことができ、前後の結びつきがよくなり、全体の構成、主張などがより鮮明になります。
そうすることでボリュームのある本の前に涙を飲んだり、何日もかかってしまって前後の結びつきが切れてしまったりすることを防ぐこともできますよね。
こうして下読みをした上で、いよいよ本チャンの読書にとりかかりましょう、というわけです。
ひょっとするとこの段階で「もういい」と感じて本棚に置いてしまう本も出てくるかもしれません。それはそれでいいでしょう。その本は「買ったまま積ん読」の本と違い、あなたの中に大まかなインデックスが作られた上での充実した積ん読ですから、いつでも必要になれば取り出せるはずです。
もし読み直そうと思えたら、今度は目的に応じて読むべきところを探し直して読めば非常に効率のいい読書ができますし、全体を通読するにせよ、非常に楽に質の高い読書が可能になるはずです。
効率のいい学習の基本は「全体から細部へ」です。娯楽小説を読んだり雑誌を読んだりするのでなく、手に取った本から何かを学びたいのであれば、ぜひ「全体から細部へ」(マクロからミクロへ、Whole to Detail)という読書を試してみてください。
下読みの段階で、頭の中にある程度の流れやインデックスができていますから、読み進めながら目的に応じて大胆に取捨選択していきましょう。別に「0か100か」という捨て方をしなくても「理解度30(理解度F)~理解度80(理解度A)」という幅を作るということでもいいんですよね。この幅を作るのがSRR流の速読技法なんです。
もちろん、気になる部分は徹底的にスピードを落として吟味し、思考の整理と記憶の保持のために、用意した付箋と3色ボールペンで書いたり貼ったりして、本の情報を自分の知識にしてしまいましょう。
この時もあくまで目的にかなう場所にエネルギーと時間を注ぐことを忘れないようにしましょうね。「あれもこれも」と考え出すと、どんどん線を引きたくなってしまいます。もちろん、時間の制約がなければそれでもいいのですが、時間は有限です。その作者の主張のすべてを吸収しようなどと考えず(それが目的ならば別ですが)、効率良く処理していくようにしましょう。
ちょっと話がそれますが、儒教の「時処位」を「Time Place Occasion」という言葉で表現します。読書では「Time Purpose Occasion」が大切です。今、自分は何のためにこの本を手に取っているのか、時間はどれくらいあるのか、どのようなスタンスで読んでいるのか(下読みか、本ちゃん読みかなど)ということを明確にすることが効率のいい読書の第一歩です。
とはいえこれもある程度経験を積まないと難しいことであるのは確かです。だからこそSRRでは視覚系のトレーニングでとりあえず3倍速を手に入れて「Time」の制約を緩くすることを第1に考えています。ですが、視覚系のトレーニングで得たスピードも、明確な目的意識などに支えられてこそ十分にその効果・価値を発揮できるのです。
視覚系のトレーニングと並行して、読書の目的を明確にすること、そしてその目的に応じて大胆に読み飛ばすことにもなれていきましょう。
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