ビジネス速読術講座

[13]速読を科学する #5/5

 いよいよ「速読を科学する」の最終回です。では、具体的にどのようなトレーニングが必要なの?というお話です。

☆速読術修得の可能性を探る

 第4回目の話で、速読術修得を妨げる4つの要因を挙げてみました。1.ストレス、2.集中力の欠如、3.必要以上の音声化・逐字(語)読み、4.経験から来る心地よさ、という4つでした。

 ただし、これらの要素を取り除いたら速読術が修得出来るかというと、そんなに簡単なことではありません。速読術修得に「脳のトレーニングは不要」と書きましたが、少なくとも脳の持つ力を引き出す(環境を整える)トレーニングは必要です。

 確かに、私の経験から考えても、脳の持つ可能性は底が知れません。しかしそれは非常に上手に環境が整えられた状態でのみ発揮出来るもののようです。そして、その「整えられた環境」を作ることが速読術トレーニングなのです。

1.リラックスによって視野を広げる

 マイナス要因の1「ストレスによる視野狭窄」を排除するということは非常に重要です。しかし、ただ広げればいいという問題ではありません。

 まず、ただ単に視野を広げようとしても、それは意識でとらえられない光覚視野で「見てるだけ」になる可能性が高いのです。読書があくまで「意識」の作用である以上は、「ちゃんと見る視野」である可識視野でとらえる必要があるのです。

 さらに、視野を広げることによって情報が同時多発的に入ってくると、たいていの場合、意識は混乱します。「見た瞬間に理解する(ひらめく)」という経験は誰にでもあるかもしれません。しかし、これは無意識(潜在意識)のレベルでの作用であり、意識(顕在意識)でそれを受け止めるのは、非常に限定された状況でのみ可能と考えられます。受け止めようとする情報に対して受け入れ態勢が十分にできているような場合です。

 ですから、視野を広げるといっても、「(表層)意識」のレベルでとらえられる視野を保っていることと、情報の秩序(つまり文・文章の流れ)が乱されないようにコントロールしてやることが重要になります。

 また、通常、行末と行頭とで分断された言葉の切れ端同士をつなぎあわせる作業は脳にとって非常に負担になる(※)のですが、視野を広く保ち、視野の移動(流れ)をコントロールすることで、行末と行頭がスムーズにつながっていき、理解がスムーズに行くようになります。
※通常の視点の停留時間は0.3秒程度ですが、行末と行頭で分断されているところでは、それぞれ0.4秒ずつ停留するという実験結果があります。

2.集中力を維持する

 目(視覚)は、広い範囲の情報を受け止められるが故に気を散らしやすいと考えられます。ですから、集中力を維持するという意味でも視野(の広さと流れ)のコントロールは重要になります。
 ここで求められるのは、視野の広さを損なわず、それでいて理解しようとする対象に対してまっすぐに向かっていく集中力です。このような状態を弛緩集中状態と呼びます。

 また、「目を動かす」とか「視野を広げる」という意識(気持ち)それ自体も雑念になってしまいます。それらが自動化するぐらいに目を効率的に使うトレーニングが必要だということにもなります。

3.文字を受動的に受け止める意識

 頭の中での内声化は排除すると充実感を得られませんが、過度の音声化はなくしてしまってもまったく問題ありません。「理解する」ことと「音声化する(いわゆる「読み上げる」)」ことは別物であると理解してください。むしろ音声化するために使っていた脳の回路を開放することができますので、理解はスムーズになります(脳科学の世界でも、内容を理解するという点では音読はマイナスであるとする意見があります)。
 活字に向かう際には「内容を受け止める」という意識で望む必要があります。これによって視野を上手にコントロールしながら、過度に「読み上げる」作業に陥ることを防ぐことができます。

 ・・・これらの環境整備をすることが重要なのです。

 そして、これらを損なわない、あるいはこれらの質を高められるような状態で、脳に文字情報を流し込んでいくことで速読術が可能になるのです。もちろん、その「流し込むスピード」を上げることが重要になりますが、前に述べたことから、目の動きをいたずらに速くしたり、移動の幅を広げたりするだけではダメだということはご理解いただけることでしょう。もちろん、単に視野を広げるだけでもダメであることは上述の通りです。

 簡単にいうなら、

1.集中力を維持しながら、目を高速に移動させるトレーニングをおこなう。

 もちろん、跳躍運動による跳躍時抑制を増幅させるだけの眼球運動はマイナスになります。無駄のない滑らかな移動を作り上げる必要があります。そしてその動作が無意識レベルでおこなわれるぐらいまで徹底しておこなわなければなりません。

2.意識でぎりぎりとらえられる広い視野を実現するトレーニングをおこなう。

 最終的にはギリギリ意識でとらえられる視野(可識視野)で行全体(~前後の行まで含めて数行)を包み込む可識視野で活字に触れるというような状態を作ります。

という2種類のトレーニングが必要ということになります。

 あとは、どのような状況においても適度なリラックス状態(弛緩集中状態)を作り出せる意識をコントロールするトレーニングでしょうか。

 ここまで解説してしまうと、別に「科学」を持ち出すまでもないようにも思えますね。実際、本当に科学的なことというのは、小難しい解説をする必要のないぐらいシンプルなものなのかも知れません。
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投稿者 てら : 2006年06月14日 17:11 

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