ビジネス速読術講座
[12]速読を科学する #4/5
「速読を科学する」の第4弾です。1~3を踏まえて、「じゃぁSRRの速読術はどういう理屈で可能なの?」という内容でお送りします。
☆速読術修得を妨げる要因
ここまで見てきたように、読書スピードを上げるというのは、眼球の跳躍運動のレベルを上げるだけでは実現しそうにありません。読書のメカニズムで解説してきたことを踏まえて、スピードアップをじゃまする要素を取り除くのが先決です。これによって、あなたが本来持っている能力を発揮することができます。「本来持っている能力」が基本になりますし、それは潜在意識(能力)や右脳というような得体の知れないものではありませんから、わざわざ「脳をトレーニングする」というようなプログラムも必要ありません。
そういうトレーニングで読書スピードが上がり、読書のストレスがとれたら、後は読書をどんどん楽しみましょう。速読マニアは速読トレーニングばかりに時間をかけ、読書をおろそかにする場合が多いのですが、トレーニングはあくまで限定された(作られた)条件の下でおこなうものであり、実践とは別物です。練習(トレーニング)で得た技術・能力は実践で使うことによって定着しますし、実践の積み重ね以外には実力をのばす方法はありません。スポーツでもゲームでもそうですよね。「速読は別だ!」なんて言わないでくださいね。(笑)
まずは読書のメカニズムに関する解説から、読書の質とスピードを落とす要因と思われるものをピックアップしていきましょう。
1.ストレス
内容が難しいと感じたときだけでなく、過度に「読むぞ」「理解するぞ」と集中したときにもストレスが生じます。ストレスが生じると視野が狭くなり、文の流れが頭に入ってこなくなります。そのため読んでいるはずなのに頭に残らないという事態に直面し、ますますストレスを感じ、スピードを落としていくという悪循環に陥ります。
またストレスは流れを悪くするだけでなく、記憶への定着も悪くします。学習や記憶の分野でも、適度なリラックスが記憶の回路を開くという話をよく耳にしますよね。
2.集中力の欠如
本を読んでいるときに、気が付いたら目が文字を追っているだけで内容が頭に入ってきていなかったという経験は、かなり多くの方がなさっているのではないでしょうか。視覚は広い範囲から情報を受け取ってしまう分、集中力を見出す要因も多くなるのかも知れません。
ただし1に「過度の集中」は悪者と書きましたよね。「集中」というのは、「その他の要素を排除する」ということです。これが強くなりすぎると「今、読んでいる部分だけ」に意識がいってしまい、文全体の流れがつかみにくくなります。と同時に、この過度の集中がストレスとなり脳の理解のスピードが悪くなって、目から入ってくる情報の量(スピード)に追いつかなくなってしまいます。
集中力が足りないのも問題だし、強すぎるのも問題というわけです。脳というものは本当にやっかいなシロモノですね。
3.必要以上の音声化・逐字(語)読み
子どもの頃は一文字一文字を確かめるようにして、読む力を付けていきます。最初は声に出して読みますが、そのうち黙読という技術を身につけていくものです。しかし、黙読も頭の中で発声していることに変わりありません。このように一文字(あるいは一単語)ずつ確かめるような読み方を「逐字(語)読み」といいます。これはある程度、読書経験を積んでいくことで解消していくものなのですが、読書が苦手な人は、この癖(の一部)が残っていることがあります。
確かに、腑に落ちる読書をするためには「内声化」は必要です。そして、4000文字レベルの速読術では内声化はなくならないし、障害にはならないと考えています(科学的な検証はしていません。あくまで私と受講生の方々の実感を根拠にしています)。
つまり、速読術の本で「諸悪の根元」であるかのように書かれている、この内声化は実はなくす必要はないのです(私と玉城の金の星社刊「超カンタン速読入門」でも、これについては言葉足らずで誤解を招く内容になってしまっています)。なくすべきは頭の中で一字一句を丁寧に読み上げようとする行為です。たとえば「かきくけこ」と読んで、頭の中で舌がもつれや物足りなさを感じたら、おそらく丁寧に読み上げすぎです。
私たちは読む内容を頭の中で発音しようとします。そして実際に発音するときの口やのど、舌の動きを再現しようとするらしいのです。k、p、tなどの破裂音は、頭の中の発音が実感(イメージ)しにくい分、物足りなさや舌のもつれといった感覚になってしまうようです。(これも経験的なものからの推測です。そのほか「あかさたな」は頭の中でも言いやすいけれども、「かきくけこ」は言いづらいようです。一度、試してみてください。)
その極端な例が、本を読むときに小声を出している人です。声に出さないまでも唇やのどが動いている人も同じです。これらの行為は音としての実感を求めているだけであって、内容の理解には必要ありません。
4.経験から来る心地よさ
考えてみれば、小学校入学以来、いや親が読み聞かせをしてくれていた頃から、私たちの読書というものは声に出して読み上げる速さだったのです。4歳頃から始まったと考えると、中高生ですら10年間も慣れ親しんできた習慣なのです。
そういう習慣を打ち破るのですから、それがどれくらい大変なことかお分かりいただけるでしょう。逆に、読書の経験が豊富で、自然と速く読むことを身につけてきた人にとっては「習慣・経験」というものは壁になりません。
もしあなたが黙読、音読によってゆっくりと読み、理解する習慣を続けてきたのであれば、目標とするスピードを習慣にしてやらなければならないわけです。前に高速道路の話を引き合いに出して説明しましたが、速さになれるのには、最初こそ勇気が要りますが、気後れせずにコツコツ続けていけば、かならず慣れてくるものです。
これら4つの要素をトレーニングによって取り除いていくことが速読術修得への道となります。それほど簡単なものではありませんが、かといってそれほど難しいものでもありません。あえて速読術修得の壁(読書や速読の壁ではなくて、修得への道のりをじゃまするものです)を挙げるとすれば、それは「時間の確保と修得への意志の維持」でしょう。
修得期間は、その人の読書経験・習慣によって様々です。これまでの最短記録は、学生さんが15~30分で4000文字を越えるスピードを(数名います)、社会人では2週間で5000文字を超えるスピードを、それぞれ修得したというものです。最長では5ヶ月かけて50代の女性が4000文字を越えるスピードを修得した例があります。2000文字レベルの速読術であれば、大抵の方は3ヶ月かからずに修得してしまいます。ですが、半数以上は1~3ヶ月程度で挫折してしまいますし、どうしても1200文字を越えられずに悩む方もおられます。
もしあなたが速読術の修得を心から願うなら、まず訓練それ自体を楽しむこと、そして訓練期間中も、自分のレベルに応じて読書を楽しんでいくことを忘れないでください。そして、訓練の成果は直線的に伸びていくものではない、つまり必ず停滞が2~3回訪れるということを頭に置いておき、例え成果が目に見えて出てこなくなっても「今はジャンプのための準備期間だ!」とプラス思考で取り組んでいくようにしましょう。ここで否定的な気持ちをもってしまうと、その時点であなたの脳も目も、働いてくれなくなります。
(つづく)
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